ばんばんばーん!
黒い空の元に俺達は立っていた。
この辺は砂漠らしい。歩いてみると、たまに足が砂に持ってかれる。
そんな事より、スカーが敵側に回っている可能性が高い。
『ま、頑張ろうぜ』
俺の心配を知りもしないガロードは能天気だ。
他の仲間は作戦を固めているのか、片方の建造タワーに俺たちを残して向かっていた。
大体三十人の教室でやったから十五人で対決している状態。
俺達以外ということは、十人以上が向こうに行ってしまっている。
「金髪ちゃんはどうする?」
「え」
ガロードが「こいつも連れていくのか」と言う。
「顔見知りと行動したいだろ」
「いいの? 来ても……」
金髪ちゃんはまだ過去を引きずっているらしい。
『一回ぐらいミスしても気にしないよ』
金髪ちゃんに手を差し伸べると応えてくれた。
「ガロードは許してくれる?」
「……俺様に指示は求めるなよ」
この間にタワー状の建物が青い閃光を放つ。
咄嗟に顔を覆う。
「な、なんだ?」
「仲間の魔力が溜まって相手に届いたんだよ」
物知りな金髪ちゃん!
そしてもう一つのタワーから赤い光が発せられる。
空気を切り裂いた光が遠くに居る仲間に降り注がれた。
「これは敵チームだから潰さないとダメ」
「……潰しに行くか」
その前にする事がある。
「金髪ちゃんに頼みがある」
「金髪って私のこと?」
「ああ。俺の武器に魔力を吹き込んでくれ」
「してみるね」
腰に着けている三本の剣と背負った剣に触れてもらう。
微かに武器が重くなったような気がした。
「できたよ」
「助かる」
じっと見ていたガロードが口を開く。
「……お前はそのスタイルで行くのか」
「魔力ないからな」
「学園で貰える剣って観賞用がほとんどだぞ」
「現実的じゃないのは知ってる」
何回振れるのかも分からない魔力でもあるだけマシだろ。
まずは練習も兼ねて相手のタワーを偵察しに行く。
『さっさと敵のタワーを潰しに行こう』
「了解」
「分かった」
次の魔力がタワーにチャージされてしまう前に俺達は走って向かった。
向かっている途中で青い光が空に炸裂する。
稲妻のように地面に刺さる。
「眩しいな」
盛り上がった砂を駆け上がり、タワーの近くを目視してみる。
……六人居る。
三人はタワーに手を添えていて、残りが周囲を見ながら土の壁で要塞を建築していた。
「どうするの?」
人数不利なら、不意打ち一択。
「金髪ちゃんの爆発魔法で吹き飛ばそう」
「そうする!」
綺麗な金髪が不思議な力に揺れ始める。モヤモヤとしたオーラが周囲に舞う。
「ガロードって魔法使えねえの」
「使えるほどの魔力がない、剣数本のクリエイトが限界でよ」
「あるだけマシ」
「俺様もそう思った」
「俺を見ながら言うな」
しばらく待っていると金髪ちゃんが「使えるよー」って言ってきた。
「もっと貯めてみてくれ」
「うおー」
その間に赤い光がタワーから伸びる。それは青いタワーの足元まで伸びていった。
「ありゃ誰か死んだろうな」
「早く貯めろ金髪」
「金髪ちゃんは優しいから相手に一時の慈悲を与えてるんだ」
「仲間には無慈悲だって聞いてるが?」
溜まったオーラが金髪ちゃんの周りで黄色くバチバチする。
「もういい?」
「あの土の塊にやっちまえ!」
俺が目標に指を差すと金髪ちゃんが両手を対象に向けた。
『ばんばんばーん!』
なにそれかわいい。
その瞬間、タワーの周辺が強烈な光に包まれる。
あまりの眩しさに俺達は咄嗟に目を守った。
距離があるせいか熱さはない。
しばらくして光が収まった。そこに人影も土の要塞もなくなり、タワーだけが存在する。
『俺様はアレを食らったのか……』
ガロードが驚きを漏らした。
「頑張れたかな?」
「さすが金髪ちゃん!」
「ハイタッチしてもいい?」
しよう!
「いえーい」
そう言って俺達は手を重ねてパチッと鳴らす。
「ガロードもー」
「ああ? あぁ」
パチッ。
流れに押されて、ガロードも金髪ちゃんと手を合わせた。
「爆発魔法って強いな」
「あれって爆発か?」
ガロードの言う通り、爆発は一瞬で周囲を吹き飛ばすイメージ。
金髪ちゃんの魔法はとんでもない燃焼が広がってる感じだった。
「爆裂じゃね」
「聞いたことはあるな」
カロンが言っていた爆裂魔法だという事にして、とりあえずタワーの近くに行く。
「これから金髪ちゃんには魔力を注いでもらうんだけど」
「うん?」
「多分バレると思うんだ、絶対誰か来る」
俺達が青とか赤の光で敵だって分かるんだからな。
相手も分かるはずだ。
「たしかに」
「警戒はするから早めにな」
金髪ちゃんが魔力を注ぎ始め、タワーの赤い光が薄くなる。
この間に遠くの青いタワーが赤く染まる。
「げ、ほかの奴らは何してんだ」
「サボってんのかもな」
そう思っているとタワーの方から人影が続々現れる。
青い服を来た仲間が数人、全力疾走でタワーの元に駆け寄ってきた。
風の魔法を使っているのかグングン近づいてくる。
『た、たすけてくれ!』
「なにがあった?」
「め、めちゃくちゃな女共が一瞬で仲間を……」
なんとか逃げてきたらしい。
待てよ? 俺たちは三人で来たから残りの十二人くらいは向こうに向かったはず。
俺の目には五人しか映ってないんだが。
「お、追ってきてるから! こっちは魔力入れるから頼む! やっつけて!」
五人は焚き火に手をかざすようにタワーへ魔力を供給し始める。
素早く溜まった青い光が何者かへ打ち出された。
赤い光は何故か溜まってない。
周りを見ていると俺達の前に何人もの赤いチームメンバーが現れる。
その中に見覚えのある人物はいない。
「おいおい……」
それぞれが俺たちを認めるとオーラを纏って『排除する』と言ってきた。
「タワーに籠ってないで援護してくれ!」
「相殺くらいならできる」
サボろうとする仲間に声を掛け、白兵戦が有利になるように周囲に土の障害物を置いてもらう。
「金髪ちゃんも!」
「がんばる!」
ガロードに強そうな剣をおねだりする。
「ああ? お前は土使え」
「ちっ、そっちは火かよ」
地面からニョキニョキ生える土の剣。
しょうがなく手に取った。
「じゃ、どっちが沢山倒せるか勝負な」
「ははは! いいなそれ」
負けることはまだ考えない。
負けそうな時に考えたらいい。
『魔力なしで相手にしてやるよ』