異世界は俺だけじゃない
気がつくと俺は白い空間に立っていた。
『やはり、会えましたね』
女神だっけ?
「そうです」
「心を読むな!」
「派手に暴れるところを見てましたよ」
無視された。
「はい、無視しました」
腹立つな!
「もし何もしてなかったら、その世界を救ったことで救済処置も出来たんですがねー」
「なんだと!」
「才能はあるみたいなので聞きますが、異世界での暮らしをもう一度希望しますか」
『一人は、嫌だな…………』
女神がニコニコしてる。
「どうやら、あなたと同行したい人が居るみたいなんですよ」
「じゃあ行ってもいい!」
「条件として左腕を貰いますが、魔道なんたらがあるので大丈夫でしょう」
元に戻っていた左腕が機械的な腕に変わる。
魔力が残っていない俺は一瞬も動かすことができない。
他人の魔力が必要だ。
「このまま転移させます、するべきことは、その世界の救済です」
「女神が救えばいいのに」
「人間同士の争いを肴に酒を飲む神も居るのです」
変な趣味だな。
「悲しむ神あれば笑う神あり、私もめちゃくちゃ笑いながら見てました」
「ええ……」
意外にゲスい人だったのか!
「うるさい! さっさと行きなさい!」
足元が水に変わり吸い込まれていく。
「強引すぎだろ!」
もがいてもダメで、気がついたら見知らぬ場所に立っていた。
来たことがない場所、どっかの街なのは分かった。
空が青いなーって思いながら、周囲を見る。
視界の隅で銀色の髪がキラキラ光った。
「……ッ!」
艶やかな髪に目を奪われていると、振り返った姿と目が合う。
『す、スカー?』
「待ってたよ」
俺は咄嗟に右手で抱き寄せた。
「会いたかった……」
逃げられそうな気がして、離れることができない。
「スカーは、逃げないよ?」
とぼけるスカーの手を握る。
「なんで、会えたんだ」
「スカーもリュウキの一部だから、女神の人に会ったんだよ」
女神とスカーで賭け事をしていたみたいで、特定の言葉を発音するかどうかで競っていたらしい。
スカーの予想が的中して、この世界で一緒になれたと。
「転生者だからって許してくれた!」
「もしミスったらどうなっていたんだ?」
「地獄に送られてた」
スカーが「怖かったよー」って涙ぐむ。
「よしよし……」
「チューして」
久々のキスを交わした。
「魔道アームに魔力を入れて欲しいな」
「スカーが居ないと生きてけないの?」
「当たり前だろ」
もうスカーには死んで欲しくない。
一生、仲良く暮らしたい。
その為には魔力を使い切って生きなきゃいけない。
一番いいのは――
『悪い奴をボコボコにしないか?』
スカーが苦手な戦闘をすること。悲しみを繰り返さないこと。
「有名になれる?」
魔道アームを刀に添えてエスコートの続き。
「そりゃ、スカーは強いからな」
『……有名になったら、スカーがリュウキのお嫁さん!ってみんなに伝わるかな?』
ドキリ高鳴る胸。
「さ、さっさと、伝えに……行くか!」
ちょっぴり恥ずかしくて。
青い刀を抑え直すことで誤魔化した。
ありがとうございました。