表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ちょっとエッチで可愛い妖猫と送る甘い生活  作者: 白田 まろん
第一章 かまくんとりいり
9/59

恋は下に心あり 前編

「ところでさ、俺はなんでこんなにお前に好かれてるんだ? 俺お前に好かれるようなこと何かしたか?」


 俺にまとわりついて離れようとしない梨衣里(りいり)に疑問だったことを尋ねてみた。怪我しているところを助けたくらいで、条件付きながらも体まで許すと言うほど相手を好きになるとは思えなかったからである。


「だってかまくん、ずっと私を抱いて撫でてくれてたじゃないですか。すっごく気持ちよかったし、安心出来たんですよ。今までであんな風に優しくしてもらったのは初めてでしたし、かまくんの手がおっきくて温かかったから」


 梨衣里はそう言って俺の手を自分の頬に当て、気持ちよさそうに目を閉じる。俺は身長だけでなく、体のどこもかしこもデカい。梨衣里の顔の方が俺の(てのひら)より小さいくらいだ。


「あれはお前が動いて傷口が広がらないようにしていただけなんだけどな」


 改めて言われると照れくさかったので、俺は顔を背けてもごもごと言い訳した。


「喉はくすぐったくて仕方なかったですよ?」


 そんな俺の顔を追いかけて、クスクスと笑いながら梨衣里がのぞき込んでくる。コイツあの時、意識があったということか。もっとも傷ついた体で見ず知らずの者が近くにいれば、警戒して息を(ひそ)めるというのは納得できる。


「そ、そうだ、その好きって気持ちはどんな気持ちなんだ?」

「あー、話を()らしましたね」


 何が楽しいのか分からないが、梨衣里はずっと笑っている。こうしているとコイツが妖猫(あやかし)だということを忘れてしまいそうだ。ま、人間だろうが妖猫だろうが今は俺の彼女だってことに変わりはない。


「気にするな」

「そうですね、私の好きは恋の好きですからね、何と説明しましょうか」

「恋か、余計ややこしいな」

「かまくんは愛しいって気持ちなら理解出来ますか?」

「うーん、子供や動物を見て可愛らしいな、微笑ましいなとかいうのなら何となく分かる」

「似たようなものですが、かまくんが私に向ける劣情を抜きにして、逢いたいとかぎゅーっとしたいとか、温もりを感じたいとか匂いを嗅ぎたいとか、そういう気持ちだと思って下さい」


 分かったような分からないような。だいたいコイツの温もりを感じたり匂いを嗅いだりしたら、それだけでヤリたくなるのは思春期男子の(さが)なのだ。それを抜きにしろと言う方に無理がある。


「まあいいや、それで?」

「恋という字は昔は戀と書いたんです。これを分解しますとね、糸しい糸しいと言う心、となるんですよ」


 梨衣里は俺の掌に人差し指で(こい)をいう文字を書いて説明してくれた。糸しいは愛しいに読み替えろということだろう。それにしてもこれは知らなかった。


「ですから私の好きはかまくんに逢いたいとかぎゅーっとされたいとか、いつも(そば)にいて温もりを感じていたいとか、そういう感じなんです」


 なんかこの説明でほんの少し梨衣里の気持ちが分かったような気がする。しかしそれはそれでちょっと悔しい。


「俺が聞いたことがあるのは恋は下に心あり、つまり下心だっていうことだぞ。それと恋心は二心(ふたごころ)とも……」

「はい、私にもかまくんに愛されたいって下心がありますよ。私の二つの心は恋と愛です。ほら、これで二つ」


 きれいに切り返されてしまった。エロ猫のくせに、百年以上生きているのは伊達(だて)じゃないってことか。それはいいとして、さっきから俺の掌に文字を書くコイツの指が可愛らしくて気持ちいい。


 その上指が()う度にゾクゾクするのだが、これも恋というものなのだろうか。


「それは劣情というものです」

「おま、俺の心読みやがったのか?」

「読まなくても分かりますよ。嫌われたくないので無断で心を読んだりはしません」

「そ、そうか」


 怪しい。だが本人がそう言っているのだから、これ以上突くと藪蛇(やぶへび)になりそうだ。しかし読もうと思えば心を読めるのか、コイツ。


「今の説明で少しは理解出来そうですか?」

「まあ、気持ちは別として意味は何となく分かったような気がするよ」

「それはよかったです! かまくんが私の中に白く濁ったドロドロの欲望をぶちまける日も近いということですね」


 今すぐお前の顔にぶちまけてやろうか。


「少し言葉を慎めよ。正直引くぞ」

「そうなんですか? その目はすぐにでも私とまぐわいたいと言っているようにしか見えないのですが」


 どうしてコイツは俺がせっかくまじめに考えているのに水を差すようなことばかり言いやがるんだ。しかしまあ、女子とこんな話をするのも悪くないもんだ。俺はそう考えて梨依里を膝の上に乗せてやった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
本作をお読みいただきありがとうございます。
出来れば1ptだけでも評価を戴けると嬉しいです。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ