私のおっぱいとかお尻とか好きなだけ触っていいですよ
その日は朝から梨依里が熱を出して体調を崩していた。これは年に数回はあるという、人の姿をとる梨依里特有のものらしい。俺も梨依里と出会ってから何度か経験しているので、明日には元に戻ってケロッとしていることも知っている。だからそれほど心配はしていないのだ。
「かまくん、抱っこして下さい」
「よしよし」
起きるにはまだ少し早い時間だったので、俺は布団の中でやたら甘えてくる梨依里を抱きしめてやった。毎日のこととはいえ、この柔らかくて甘い香りのする梨依里を抱きしめるとどうしても鼓動が早くなってしまう。体調を崩している相手に不謹慎だとは思うが、こればっかりは仕方がないだろう。
「えへへ、かまくん、固くなってますよ」
「あ、こら、触るな!」
ところが梨依里はこういう時に限って俺の童貞を弄ぼうとする。そんなことされたら我慢出来なくなっちまうじゃねえか。前回もそうだったが、コイツは体調が悪くなると見境がなくなってやたらと俺を挑発してくるのだ。本人曰く、本能的に子孫を残そうとするからではないかなどと言っていたが、俺はまだこの歳でパパになる気はねえぞ。
「そんなことばっかしやがると起きて学校行っちまうぞ」
「やですぅ、ずっといて下さい〜」
ずっといたら確実にパパになっちまうだろうが。それにしても今日はやけに甘えてきやがるな。
「お前、今日はどうした? いつもならこんなに甘えねえだろ」
「えっとですね、今日はいつもよりちょっとだけ楽なんです」
言われて梨依里のおでこに手を当ててみると、確かに熱はあるようだがそれほど熱いというわけでもなかった。
「しかし熱があるのには変わらねえんだから大人しく寝てろ」
「でもかまくんが学校行っちゃったら一人になっちゃうんですよ。一人は寂しいんです」
一人は寂しいか。確かにコイツはうちに来てからというもの、ほとんど俺から離れることはなかった。トイレと風呂は何とか別にしているとはいえ、同じ家の中にはいるのである。ちょっとした買い物や散歩に出る時は必ず付いてくるし、勉強している時やテレビを観ている時は隣か膝の上に来るのだ。
ま、たまにはいいか。
「なあ梨依里、一つだけ約束するなら今日は学校休んでお前の看病してやる」
「え? 本当ですか?」
「お前、そこは彼女なら普通ちゃんと学校に行けって言うところだぞ」
予想していた反応だったが、俺は思わず苦笑いしてしまった。
「そうなんですか? でも学校って私はそんなに重要だと思えないので」
あやかしである梨依里にしてみれば確かにそうなのかも知れない。
「しかしな、学校は行っておかないと人間社会ではこの先苦労するんだって。うちは山を貸している収入があるが、それだっていつまで続くか分からないからな。俺も一度は就職しようと思ってるし」
「なら私も一緒に就職します。大丈夫ですよ、私の猫力でちょいちょいとやれば……」
「梨依里、ズルはよくない。それにテストの順位と違って就職にお前の力を使えば、そのせいで落ちる人もいるだろ?」
「う、それは確かにそうなります」
「だからな……」
「分かりました。でも今日は一緒にいてほしいです。何を約束すればいいんですか? 私とまぐわいたいってことですか?」
「違う! その逆だ! 俺を誘惑しないこと。お触り禁止!」
普通は女子が言うことだぞ、コレ。
「もう、仕方ないですね。でもかまくん」
「なんだ?」
「今日は私のおっぱいとかお尻とか好きなだけ触っていいですよ」
「なっ! さ、触んねえよ!」
今日一日、俺は欲望を抑えきれるのだろうか。一抹の不安を抱えつつ、俺は水池先生に梨依里と二人で欠席する旨のメールを送った。




