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ちょっとエッチで可愛い妖猫と送る甘い生活  作者: 白田 まろん
第六章 美男美女の転校生
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梨依里の加護って何だ?

「今日は皆さんに転校生を二人紹介します」


 朝のホームルームで水池(みずいけ)先生が教壇に立つなりそう言った。この時期に転校生、しかも二人とは珍しいこともあるものだ。もっとも他のクラスは三十五人の定員が埋まってしまっているので、二人だろうが三人だろうが転入先はここしかないというわけか。


壬生(みぶ)君、倉持(くらもち)さん、入って」

「失礼いたします」


 おいおいちょっと待てよ。壬生に倉持って、まさかアイツらじゃねえよな。俺は一瞬そう思ったが、ここはむしろアイツらじゃない方が不自然である。そして案の定教室に入ってきたのは、先日共に妖怪と戦ったあの二人だった。


「初めまして、壬生公紀(きみのり)と申します。これからよろしくお願いいたします」


 こうして明るいところで改めて見ると、壬生はスタイルがよく身長もやや高い。ほっそりしているが肩幅が広いため、おそらく細マッチョ系じゃないかと思う。すでに数人の女子が色めき立っていた。


「み、壬生さま!」


 西園寺(さいおんじ)も気づいたようだ。立ち上がって思わぬ再会に瞳を潤ませている。おいおい、相手はただの(オバケ)だぞ。ところで西園寺って百合じゃなかったのか?

「やあ西園寺さん、ごきげんよう」


 壬生は西園寺との再会に驚きもせず、軽く手を挙げてにこやかに応える。その流れるような仕草に西園寺はうっとりし、他の女子たちも羨望の目で見つめていた。


「初めまして、倉持(しおり)です。皆さん仲良くして下さいね」


 続いて倉持が挨拶する。当然だが倉持も壬生同様スタイルがよく、身長は女子としては標準的のようだがやたら胸が大きい。魂と知らなければ一度は味わってみたいと思えるほどたわゆんとしている。


「倉持さん、僕です! 横尾健太です!」


 倉持の方は壬生の西園寺に対する扱いと異なり、横尾に軽く目を向けて会釈しただけですぐにそっぽを向いてしまった。横尾、お前は魂にすら見向きされないのな。可哀想だとは思わないし、むしろざまあと思うぞ。そしてクラスメイトの皆もそんな横尾にしらけた視線を送っていた。


「それじゃっと、倉持さんは久埜猪(くのい)君、一番後ろの彼ね、の隣で壬生くんはその隣の席についてくれるかしら」


 お、水池先生、全員に自己紹介させるとか教師生活にピリオド打てよと言いたくなりそうな愚行は犯さないのな。


「久埜猪さん、よろしくね」


 席についた倉持がさっそくにこやかに挨拶してくれたが、今さら愛想よくされても嬉しくねえよ。っかしでけえ胸だな。


「私の胸に興味がおありなのかしら?」


 やべ、じっと見すぎてた。向こうで梨依里の耳がピクッと動いた気がしたが、気のせいだよな。うん、気のせいということにしておこう。


「わ、わりぃ、そういう意味じゃねえんだ」


 俺は慌てて目を逸らしたが、どういう意味なのかと問い詰められたら答えられる自信がない。もっとも幸い倉持がそれ以上ツッコんでくることはなかった。


「それで、お前らの目的は何だ? まさかこの世の学校に興味を持っただけとか言わねえよな」

「それもありますけど、久埜猪さんと梨依里さまにはお世話になりましたので、ご恩返しが出来ればと思ってやってきたのですよ」

「嘘つけ。本当は生け(にえ)か何かを探しにきたんじゃねえのか?」

「そんなことないよ。僕たち二人は皆さんに危害を加えるつもりは全くないから安心して仲良くしてほしい」


 困ったような表情を向ける倉持に代わって、壬生が続きを引き取った。


「まあいいや、何か余計なことしやがったら梨依里に言いつけてお前ら八つ裂き、じゃなかった、四つ裂きにさせるからな」

「そんなことしないって。それに僕たちがこうして皆さんの前に来られたのもあやかし様のお陰なんだ。本当に悪いことはしないからどうか信じてほしいな」


 壬生の表情には曇りがないから、本当に悪さするつもりはないのかも知れない。としても、だ。


「梨依里のお陰? あのバカ猫がまた何かやらかしたのか?」


 コイツらが彼岸(ひがん)から此岸(しがん)に渡ってきた原因が梨依里にあるなら、後でしこたま説教してやらなければならない。


「違う違う、あやかし様の妖力(おちから)のおこぼれを勝手に頂いているだけなんだ。あの方の妖力ならあと百人はこちらに来られるんだけど、さすがにご迷惑だろうと僕たち二人が来たってわけ。じゃんけんで勝ったからね」

「じゃ、じゃんけん?」

「壬生君、じゃんけんだけじゃなくてあっち向いてホイまでやったではありませんか。それも三連ホイの方」


 あっち向いてホイ、ホイホイホイってあれか。お前ら見た目はいいがアホだろ。


「それで久埜猪さん、一つお願いがあるのですけど」


 倉持がぐいっと身を乗り出してきた。よせ、また胸を見ちまうじゃねえか。


「な、何だよ、お願いって」

「私たちが純粋なるたまし……純タマであることを皆には黙っていてほしいのです」


 そこは別に言い直す必要はないんだが、やっぱりコイツらはアホ確定だな。


「俺が黙っているのは構わねえが、西園寺や横尾はどうするんだよ。アイツらだってお前たちのことに気付いてただろ?」


 それに完全には気付いていないようだが、宮崎や野々村だっていたのだ。俺と梨依里は別にしても、他の四人に口止めするのは難しいんじゃないか。特に宮崎は凶悪、もとい、強敵だぞ。


「久埜猪さんには梨依里さまの加護があるので効きませんでしたが、他の四人は大丈夫です」

「大丈夫って何でだよ?」

「文化祭の記憶は消しておきますので」


 倉持は涼しい顔で言ったが、そんなことも出来るのか。記憶を消されたらさすがの宮崎もどうしようもないだろう。


「ん? ちょっと待て、さっき言った梨依里の加護って何だ? そんなこと聞いてねえし授けられた覚えもねえぞ」

「あら、ご自覚がないのですね、もったいない。でもお聞きになっていないということは、梨依里さまも無意識だったのかも知れませんね」

「どういうことだよ!」


 梨依里が無意識のうちに俺に加護を授けただと? てか無意識の加護って何だよ。神様でもあるまいし。


「久埜猪さん、本当に覚えがないんですか?」

「ねえよ!」


 梨依里は今までそんなこと一言も口にしたことがない。そして俺自身が加護に与っているなどという自覚もない。ところがそんな俺の様子をあざ笑うかのように、壬生が身を乗り出してきた。


「久埜猪君」

「な、何だよ!」


 壬生の顔があまりにも不敵だったため、俺は思わずセリフを噛んでしまった。それよりさっそく君付けかよ。どっちでもいいが、俺はお前らと友達になった覚えはねえからな。

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