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だからかまくん大好きです!

「梨依里に妖怪を退治しろって言うのか?」

「出来ればそのお手伝いを頂きたいのです」

「あなたたちを食らう妖怪って、どんな感じなんですか?」

「はい、妖怪としての妖力はあやかし様……梨依里さまの方が上だと思います。しかし純粋なる魂である私たちには、実体を持つ妖怪には太刀打(たちう)ち出来ません」

「何だその純粋なる魂って。要するにお前らはオバケってことだろ?」

「まあひどい! 私たちをその辺の浮遊霊などと一緒にしないで下さい」


 倉持がわりと本気っぽい表情で抗議してきた。それに梨依里まで同意とばかりに首を縦に振っている。


「そうですよ、かまくん。この人たちはそれなりに霊格が高い人たちなので、オバケって言い方は失礼になります」

「霊格とかよく分からんが、オバケが失礼なら純タマでいいか」

「純た……ま、まあオバケよりはマシですね」


 倉持(くらもち)も横で聞いていた壬生(みぶ)も苦笑いしていた。


「それで、どんな妖怪なんだよ。もっと姿形がこうとか具体的に言え」

「はい、本体は頭の部分だけなのですが、胴体を霊力で補うために私たちが狙われているのです。元は熊だったようです」

「熊頭の妖怪か。強そうだな」

「私に勝てますかね」

「ん? お前ちょっと前に熊を簡単にやっつけたじゃねえか」

「あれはただの獣だったからです。妖怪になって霊力まで溜めているとすると、どのくらいの強さか分からないんですよ」

「そういや本体が頭で元は熊って、まさか……」


 春先の学校帰りに梨依里が跳ね飛ばした熊の頭、見つからないって言ってたよな。


「多分あの時の熊ですよ」

「妖怪って、そんなにすぐになれちまうものなのか?」

「んー、分かりませんけど、もしかしたら私が殺したからかも知れません」

「お前が殺すとどうして妖怪になるんだ?」

「それも分かりません。そんな気がするだけですから」


 しかしそうなると壬生や倉持たちを襲う熊の妖怪が現れたのは、梨依里のせいってことになっちまうな。


「その妖怪、私のせいかも知れません。ごめんなさい」


 梨依里も同じ考えに至ったようだ。ところが壬生も倉持も首を横に振って梨依里の責任を否定する。


「あの妖怪は悪霊が昇華(しょうか)したものです。あやかし様のせいではありません」

「そうです。だから不完全体であり、力を得るために私たち純粋なる魂を食らうのです。梨依里様は御霊(みたま)は食らいませんでしょう?」


 確かに、梨依里の主食はツナ缶だ。


「それでも悪霊が取り憑く元を作ったのは私ですから」


 梨依里はすまなそうにしているが、それを言うなら冬眠から覚めて人里近くまで降りてきた熊の方が悪いと思うぞ。アイツが俺たちを襲おうとしなければコイツに殺されることもなかったはずだ。


「お前たち、妖怪を退治してくれというわけじゃなくて手伝えって言ったよな。梨依里にどうしてほしいんだ?」


 これ以上妖怪の出自(しゅつじ)について話していても梨依里が落ち込むだけなので、俺は話題を現実的な方向を変えた。


「それについてなんですが、頭以外は我々で対処出来ます。悪霊ごときは純粋なる魂である僕たちの敵ではありませんので」

「梨依里さまには私たちではどうすることも出来ない、本体の頭の方を倒して頂きたいのです」

「作戦とかあるのか?」

「まず僕たちの方で頭だけを切り離します。頭から離れた胴体は実体を失いますので、仲間と一緒に浄化するだけです。後はあやかし様に本体をやっつけて頂ければと思ってます」


 そんなの作戦でもなんでもねえだろと思ったが、ただの獣が昇華しただけの妖怪なら奇策のようなものは必要もないのかも知れない。頭悪そうだもんな。


「梨依里、俺に何か出来ることはあるか?」


 よく考えなくても妖怪や幽霊の類の戦いに生身の人間である俺が何か出来るとは思えないが、一応数珠(じゅず)やらの仏具なら用意可能だ。そういう後方支援的な意味で言ったのだが、梨依里は何か勘違いしたように瞳をキラキラと輝かせていた。


「ありますよ」

「え? あ、あるの?」


 何となく嫌な予感しかしないぞ。


「はい!」

「一応聞こうか」

「かまくんは、私の応援をお願いします!」

「何だよそれ」


 やっぱりだ。俺に応援団の団長役でもやらせようってハラか。なら赤鉢巻(はちま)きに(たすき)でも用意しておくか。


「違いますよ、そんな意味ではありません」


 またコイツ、俺の心を読みやがった。


「かまくんは傍にいてくれるだけでいいんです。そうすれば私も頑張れますから」

「え? そうなの?」

「はい!」


 なかなか可愛いことを言うじゃねえか。いや、ちょっと待てよ。それってつまり危険でも何でも俺に付いてこいってことだよな。そう思って梨依里の方を見ると、にっこりと微笑んだ後にてへぺろ顔を見せられた。


「仕方ねえ、一緒に行ってやるよ」


 ため息をつきながら言う俺の頬に、梨依里が軽く口づけをしてきた。


「だからかまくん大好きです!」


 正面からジト目で視線を送ってくる壬生と倉持には気づかないフリをすることにした。

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