大きな猫は小さな少女でした 2
「妖猫か、まあただの猫にしてはデカすぎだったもんな」
「デカすぎ……この私が大きいということですか?」
「あ? ああ、まあな」
なんだコイツ、急に元気になりやがったぞ。というか嬉しそうに笑った顔もまたやけに可愛いな。
ところで俺が妖猫というのを容易く信じたのは、元々この地域に妖怪やら幽霊やらの話が多かったからだ。俺自身はお目にかかったことはないが、座敷わらしなんかは普通に目撃されているみたいだし、世間話をした相手が幽霊だったなんて話は小さい頃からよく聞かされていた。母親は俺がまだ五つか六つの頃に他界したが、親父は時々母ちゃんとしゃべったなんて言っている。
「そう言えばお前、年齢ってあるのか? 出来れば人間換算で」
「人間換算……あなたはお幾つなのですか?」
「俺か? 俺は十五、今年の秋で十六になる」
「では私もそれで」
「待て待て待て、お前その小ささで俺と同い年はないわ! ってかではって何だ、ではって!」
「ちいさ……先ほど大きいと言われたではありませんか!」
「年齢によるよ、俺と同い年なら小さい方だ」
「ぐぬぅ……」
どうでもいいけど、たとえ幼女だったとしてもコイツの体はエロ過ぎる。俺はこれでも健全な思春期男子だから、こんなもの見てたら股間が疼いて仕方がない。しかし何か着せたいが、色々な事情で今は立ち上がることが出来ないのだ。
そんなわけでコイツには手近にあったシーツを被せた。ところが中途半端に胸やら腹やら太ももやらが出たままだから、余計にエロくなってしまった。どうしよう。
「ま、まあいいや、それで名前は? 俺は久埜猪カマラだ」
「くまのこなのら?」
「違う! クノイカマラ!」
「くまのおなら?」
「くまから離れやがれ! ってか屁じゃねえっての! お前わざと言ってないか?」
「んー、かまくら?」
女の子座りで両手を膝の間につき、小首を傾げて上目遣いで俺の顔を覗き込んでくるもんだから動悸が止まらない。その上両腕で胸を挟んでいるので深い谷間が強調され、色々見えてたり見えなかったりするからエロさ大爆発である。わざとやってるなら犯すぞエロ猫め。
「かまくらはちょっと惜しいな。名前はカマラだ」
「ん-、んー、かまくん!」
「ら、をどこに置いて来やがった!」
「かまくん!」
「ま、いいや。それでお前の名前は?」
もう疲れた。
「吾輩は猫である」
「漱石先生かよ!」
「よ、よく分かりましたね! 驚きです!」
中学の教科書に載ってたからな。
「まさか知り合いとか言い出さねえよな?」
「そこは大人の事情でノーコンソメです」
「そりゃただのお湯だぞ。いいから名前!」
そろそろ飽きてきた。
「ですからぁ、名前はありません! かまくんが付けて下さい!」
「はあ?」
「かまくんが付けてくーだーさーいー!」
面倒くせえ。しかしまあ、昨日はあんなに弱ってたのが元気になったんだし、名前くらい付けてやってもいいか。そんなわけで色々候補を挙げて、ついに妖猫が気に入ったのが十六夜梨依里という名前だったということだ。
ちなみに十六夜はいいとして梨依里って漢字は俺のセンスだが、我ながらなかなかいいと思う。もっともこれ決めるのに一時間以上かかったけどな。