かまくんには私がいるじゃないですか!
本当なら宮崎たちを帰してやりたかったが、そう思って振り向いた先には、たった今俺たちが来た道はなくなっていた。そして彼らの後にはちゃんと道が出来ているのである。
それにしても俺の後ろに続く宮崎以下四名は、まるでダンゴムシのようだ。今の様子をスマホで撮影しておいて、次に何かくだらないことを言い出したらこれをネタに脅かしてやるとしよう。
そんなことを考えながら進んでいると、思っていたよりずっと早く光の許に辿り着いた。そこには噂に聞いた通り豪華な白亜の校舎が建っており、建物は色とりどりの照明に照らされている。校庭ではキャンプファイヤーが焚かれていて、多くの生徒たちが楽しそうに踊っていた。
「さあ、皆さんも躍りませんか?」
俺たちをここに連れてきた二人も、そう言いながらダンスの輪に消えていく。火の暖かさも光の煌めきもおそらくはまやかしだろうと思う。しかしそこに敵意や悪意が感じられない以上、これは彼らのもてなしと考えてもいいのではないだろうか。ところでコイツらはいつまで俺の後ろに連なってるんだよ。これじゃジェンカしか踊れねえじゃねえか。
「お前らいい加減離れろ、うざってえ!」
「だ、だってえ」
「宮崎、てめえこれから俺になめた口きくんじゃねえぞ」
「な、なによ、そんなの私の勝手じゃない!」
「そうか、ならとにかく離れろ。てめえはここに置いて行く!」
「や、やだ! 置いてかないでよ!」
普段の強気はどうした。それはいいとして、梨依里のやつが見当たらないがどこへ行きやがったんだ。まあ、この魚が焼ける匂いで大方の察しはついているが。
「かまくん、かまくん、ほら、見て下さい!」
ホント、コイツの行動は期待を裏切らない。梨依里は無駄に高級そうな皿に乗せられた秋刀魚の香ばしい匂いと共に戻ってきた。てか何で山中にある高校の文化祭で焼いた秋刀魚出してるんだよ。その上何万円もしそうな皿で、ご丁寧に大根おろしまで。しかし理屈はどうあれうまそうだな。俺も食ってみたい気がする。
「なあ梨依里、ここで出されてるモンて食っても平気なのか?」
「え? どうしてですか?」
有名なアニメで料理食ったら、いつの間にか自分が食材になってたってのを見た記憶があるからな。しかしそれを言って梨依里に笑われでもしたら癪だから黙っておこう。
「いや、何となく……」
「大丈夫ですよ。全部本物ですから」
梨依里が言うなら大丈夫なんだろう。美味そうに秋刀魚を口に運ぶ梨依里を見て安心したのか、宮崎たちもようやく俺から離れてくれた。横尾などはきれいな女子生徒とコロブチカを踊ってにやけている。お前はその女子生徒と末永く仲良くして、梨依里を追いかけるのはもうやめろ。それにしても本当に美男美女しかいねえな。俺も女子生徒と仲良く手をつないで踊ってくるか。
「かまくん、どこ行くんですか!」
俺がふらふらと女子生徒を目指して歩き出したところで、袖口を梨依里に掴まれた。またコイツはどさくさに紛れて俺の袖で手を拭いてやがる。醤油のシミはなかなか落ちねえんだからやめろっての。
「いや、俺もちょいとダンスなんかをしてこようかと思ってな」
「誰とですか! かまくんには私がいるじゃないですか!」
「いや、お前ちいせ……何でもない」
「今小さいって言いませんでしたか? 言いましたよね?」
「い、言ってねえよ。言うわけねえだろ」
仕方ねえ、梨依里相手に華麗なステップ決めてくるか。
それから俺たちは時間が経つのも忘れて、死人高校の文化祭を心ゆくまで楽しんだ。




