ダメだって言わないよね?
「写真ですか?」
観覧車に乗った後、約束通り宮崎一行は俺たちから離れていったので、梨依里に青山のスマホで撮った写真について聞いてみた。
「えへへ、気になります?」
「青山があんなに隠そうとするから気になっただけだ」
「あれ、かまくんと青山さんのツーショットなんですよ」
「は?」
「青山さん、かまくんのことが好きみたいですからね」
「ちょ、ちょっと待て、それで何でお前が俺と青山のツーショット写真なんか撮ったりするんだよ」
「写真くらいならいいかなって。それに変にガードするより協力してあげた方が、かまくんにも私にも裏切るような行動は取らないんじゃないかと思いますし」
「理屈は分かるが、もしそれで青山が思い切った行動に出たらどうする気なんだ?」
「それが分からない私だと思いますか? それにそんなことをするような子なら、最初からかまくんに近寄らせたりしませんから」
なるほど、無理に青山を避けて想いを募らせるより、オープンにしてガス抜きをしてやろうということか。言われてみると野々村の時はしっかりガードされていたような気がする。
「青山さんの場合はかまくんのことを何となくいいなって思ってる程度ですし、そのうち新しい恋に目覚めてくれると思います。そうすれば私たちともいい関係になれるんじゃないかと思うんですよ」
その言葉に俺は梨依里の意外な一面を見た気がした。俺以外の人間には興味ないはずだが、周囲との関係は良好にしておこうという意図を感じる。確かに宮崎は別として、青山をはじめとするバレー部の女子三人には俺も悪印象を持っていない。
「妖猫のお前の眼鏡に適ったというなら間違いはないんだろうな」
「そうですよ。人を見る目は人以上ですから」
コイツなかなかうまいことを言いやがる。
「でもかまくん、青山さん可愛いですしスタイルもいいので、あんまり見とれないで下さいね。勘違いされますよ」
「あはは、気をつけるよ」
まさか俺がさっき青山にドキッとしたことはバレてねえよな。
「そろそろお昼にしましょうか」
それから俺たちは適当なベンチで、梨依里が早起きして作ってくれた弁当を食べることにした。弁当は学校でもほぼ毎日食っているが、やはり梨依里の料理は美味い。親父も死んだお袋の料理より美味いと言っていた。
メシを食った後は一通りの乗り物に乗り、最後にもう一度、今度は梨依里と二人だけで観覧車に乗った。ただ一つ残念だったのは、お化け屋敷で梨依里が怖がる演技をしてくれなかったことである。
「演技しましょうか?」
「バカだなお前、そう言われて頼んじまったらシラけるだけじゃねえか」
「それもそうですね」
ま、わざわざお化け屋敷で抱きつかれなくても、コイツはいつも俺に抱きついているようなものだしな。
「青山さんなら上手に怖がってくれるかも知れませんね」
梨依里があっかんべをしながら俺をからかうが、俺はお前以外にそういうことを期待したりはしねえんだよ。
「そう思うんならお前が見習え」
「お化けとかで怖がるのは難しいかも知れません。どちらかというと笑っちゃいますし」
「お前、雨の音とか雷とかの方が苦手だもんな」
コイツは雨が打ちつける音や雷を異常なくらいに怖がるのだ。特に雷に関しては、遠くで聞こえるだけでも俺のところに飛んできてガタガタ震えているほどである。
「幽霊なら倒せますけど、雷に打たれると大火傷しますから」
「打たれたことあるのか?」
「ありませんけど、雷は痛そうです」
雷に打たれても痛そうで済むお前が、直撃なら死んでしまう俺に頼るか。てか普通に幽霊なら倒せるとか言うなよ。今まで見たことはないが、もし本物の幽霊に出くわしたら俺だって怖がると思うぞ。
「あれ? いりちゃんたちもそろそろ帰り?」
話しながらゲートに向かっていた俺たちを見つけた宮崎が声をかけてきた。時間的にはまだ夕方だったが、冬が近いので陽が落ちるのも早い。辺りはうっすらと陰り始めている。
「陽ちゃんたちも帰るんですか?」
「うん、一緒に帰ろ! 久埜猪、ダメだって言わないよね?」
「帰るだけだしな。方向が同じなんだから構わねえよ」
ここでダメだなんて言ったら、どちらかが次の電車が来るまで三十分以上待つことになる。梨依里が嫌がらない限り、俺はそこまで鬼畜な考えを持っているわけではない。それに心なしか俺たちに会って嬉しそうな青山をガッカリさせる必要もないだろう。梨依里も傷つけるなって言ってたしな。
そうして六人の集団は、わりと和気あいあいとしながらUSGを後にした。ちなみに帰りの電車で梨依里はすぐに寝てしまったため、不満げな宮崎と俺にもたれかかる梨依里を羨ましそうに見ている青山が印象的だった。
すまん青山、俺はお前の気持ちには応えてやれない。早く新しい恋を見つけて幸せになってくれよ。
――第五章に続く――




