かまくんと一緒に遊びたかったのに
「うさぎやんの方に行ってみましょう!」
放し飼いにされているうさぎは二十匹くらいいるんじゃないかと思う。その団体が俺と梨依里が持っている人参スティックを見つけて、警戒しながらもぴょこぴょこと跳ねながら近寄ってくる。ソイツらに人参を小さく千切りながら、なるべくすべてのうさぎに行きわたるように与えてやるのだ。うさぎは一欠片を受け取るとすぐにその場で食べ始めて、それがなくなるまで次の欠片を要求してこないから、エサやりは意外に楽だったしじっくり観察も出来た。しかしエサをもらったのだから少しは懐いてくれるかと思って抱っこしようとしたら、見事にうさキックを食らってしまった。あの体のわりに大きな後ろ足で手加減なしにキックされるとけっこう痛い。
「かまくん、大丈夫ですか?」
口ではこう言っているが、梨依里は笑いながら下手くそ、という目を向けてきている。なんか悔しいぞ。
立札にはうさぎの抱っこのコツみたいなものも書かれていたが、嫌がるものを無理やりというのも性分ではないので俺は抱っこを諦めた。しかし梨依里はさすがにその辺りの加減がうまいようで、一匹のうさぎを抱っこして撫でまわしている。
「おい梨依里、捕食するなよ」
「た、食べませんよ! いたっ」
急に大きな声を出したせいで、梨依里が抱っこしていたうさぎが驚いて逃げ出した。その時に梨依里もうさキックを食らったようである。これでおあいこだ。
「もう! かまくんが変なこと言うから!」
「あはは、わりいわりい」
しばらくうさぎと戯れたあと、俺たちは適当なところにベンチがあったので一息つくことにした。園内はとにかく広く、ジンギス山から一番近いアトラクションまででもけっこうな距離を歩かなければならない。
一応パークトレインという園内を周回する乗り物が走っているのだが、本格的に運行が始まるのはもう少し時間が経ってからのようだ。目の前にある停留所の時刻表を見ても、最初のトレインが来るのは約一時間後だった。
「あっちに見えるのは観覧車ですよね。乗り物は他に何があるんですか?」
パンフを広げた俺の手元を梨依里がのぞき込んできた。すると微かな風に揺れた髪からふわっと甘い香りが漂い鼻腔をくすぐる。この香りはいつ嗅いでも心地いい。
「かまくん!」
「な、なんだ?」
「ぼうっとしてどうしたんですか? 疲れちゃいました?」
「あ、いや、すまん。大丈夫だ」
心配そうに俺を見上げる梨依里の頭を軽く抱き寄せる。いかんいかん、ちょっとエロい気分になってしまっていた。
「観覧車の方に進めば、途中にいろいろあるみたいだから、とりあえずそっちに向かうか?」
「そうですね、そうしましょう」
しばらく歩くとアスレチックコーナーがあった。ロープで作られた網の目を渡ったり、ちょっと長い滑り台などもある。
「あ! トランポリンみたいなのもありますよ!」
「面白そうだが対象年齢が十歳までみたいだな」
トランポリンンの注意書きには確かにそう書いてあるのだから仕方がない。それに全年齢でも俺が飛び跳ねるのは多分無理だと思う。
「うー、残念です。かまくんと一緒に遊びたかったのに……」
俺たちはアスレチックを横目で見ながら観覧車の方にある、マンハッタンランドと名付けられたアトラクションが集まる場所を目指した。




