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一緒に行くのは却下だ

「かまくん、起きて下さい」


 翌朝、梨依里は寝ていた俺にキスをして、耳元で囁いてから息を吹きかけてきた。朝っぱらから刺激が強すぎるって。


「い、今何時だ?」

「七時ですよ」

「ひゃぅっ!」


 急に耳に舌を入れるな。変な声出しちまったじゃねえか。この朝の甘ったるい起こし方は嫌いではないが、男子特有の朝テントが張り裂けそうなくらいに盛り上がるので、出来ればもう少しソフトにしてほしいものだ。俺はイタズラっぽい笑みで股間を見つめる梨依里を捕まえようとしたが、まだ完全に体が起きていないのでスルッと逃げられてしまった。


「かまくん、朝ご飯食べちゃって下さいね。それとも私を食べますか?」


 布団の上からでも分かるくらいにこんもりした俺の股間を指さしながら、梨依里は片方の手で自分のスカートをつまんで見せた。


「起きる、起きるから!」


 今朝は朝飯食ってから出るつもりだったのか。やはりバクドナルドは思ったより美味くなかったってことだな。ジャンクフードはたまのストレス解消にはいいかも知れないが、常食となると健康にもよくなさそうだ。それに俺は常日頃から梨依里には極力あまり変な物を食わせたくないと思っている。これでも買い置きしてあるツナ缶だってちゃんと無添加の物を選んでいるんだぜ。


 そうして俺が朝飯を食い、支度を済ませて家を出る頃には八時近くになっていた。これならUSGに着くのは開園時刻に近いはずなので、寒空の下で震えながら待つということもないだろう。


 今日の梨依里はリスリザのライトブラウンを基調としたチェックのサスペンダー付きミニスカに、上から首元が大きく開いたモコモコの白いニットを着ている。肩口の辺りからわずかにスカートのサスペンダーが見え隠れするという感じだ。それに白のニーハイを合わせていて、思わず赤面しそうになるくらい可愛らしい。


「梨依里、パンツ見えそうだから下にスパッツ履いておけよ」

「履いてますよ、ほら」


 見せてくれるのはいいが、スカートまくり上げられるとドキッとするからやめてくれ。


「わ、分かったから見せなくていい」


 梨依里はスパッツをスカートの裾からはみ出ないように履いていた。それだと黒いパンツにしか見えないが、履いているならいいだろう。まあせっかくの可愛い衣装だし、スカートからスパッツが出ていたら台無しだからな。男目線だとそんなもんだ。


 それから駅までの道のりでは、珍しく梨依里は自分で歩いていた。俺の小指を小さな手で握り、楽しそうにしている。梨依里によると小指が一番握りやすいのだとか。たまに変な方向に曲げられるとめちゃくちゃ痛いのだが、最近はそれも慣れてきてしまった。人間の適応能力というのは素晴らしい。


「あれ? いりちゃん?」


 駅についてペットボトルの飲み物でも買おうとしていたところで、後ろから聞き覚えのある声が聞こえた。学校以外ではあまり聞きたくない声だ。


「あ、(よう)ちゃん! おはようございます」


 宮崎は先日カラオケを一緒に楽しんだバレー部員、青山、妹尾(せお)、田村と一緒だった。


「いりちゃん私服可愛すぎ! どこ行くの? って、何で久埜猪(くのい)がいるのよ」


 梨依里はいつも俺と一緒なんだよ。そう言ってやりたかったが、挨拶もしない奴に応えてやる義務はない。先日のカラオケ同行でちょっとはマシになるかと思ったが、あれ以降は学校でも俺に対する宮崎の態度は元のままだった。そんな奴に気を遣ってやる必要性など微塵も感じない。


「梨依里、行くぞ」

「ちょ、ちょっと! 何で無視するのよ!」

「何でかまってやんなきゃなんねえんだよ」


 俺は梨依里の肩を抱いてさっさとその場を離れようとしたが、宮崎がその前に立ちふさがった。


「ちょっと! いりちゃんをどこへ連れていく気?」

「私たち、これからUSGに行くところなんですよ」


 バカ猫、宮崎に行き先なんか教えてんじゃねえよ。絶対ついてくるって言うぞ。


「そうなの? 私たちもこれから行くところだったの。いりちゃん、一緒に行こっ!」


 そらきた。元々行き先が同じだったかどうかは知れないが、この流れで宮崎が梨依里を誘わないわけがないのだ。実は梨依里にもスマホを持たせてはいるが、持ってないことにして宮崎には連絡先を教えさせていないくらいである。教えたらしょっちゅう連絡をよこすに決まっているからだ。


「かまくん、いいですか?」

「久埜猪は帰ってもいいわよ」


 友好的に接しようとしないこの単なるクラスメイトに、梨依里とのデートを邪魔させるほど俺は寛大ではないし酔狂でもない。宮崎と一緒にいる三人はこのやり取りを興味深そうに眺めているだけだが、宮崎も彼女らを見習って俺たちに干渉するなと言いたい。


「だそうだ、梨依里。一緒に行くのは却下だ」

「そうですか、残念ですね。陽ちゃん、また学校で」


 日頃から宮崎に(まと)わりつかれて迷惑に感じているのか、梨依里もあっさりしたものだった。他の三人は宮崎に分からないように俺たちに軽く会釈きたので、きっとアイツらも宮崎の性癖を理解しているのだろう。


「え? ちょ、ちょっと!」

「宮崎、お前がどこに行こうと勝手だが俺と梨依里はデート中だ。向こうで会っても近寄ってくるなよ。分かったらさっさと失せろ!」


 俺はそう吐き捨てると、梨依里を連れて駅の改札に向かった。

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