かまくん、そこらめぇ
「かまくん、可愛いですか?」
学校から帰って食事を終えると、梨依里はさっさと風呂に入った後、すでに恒例となりつつある梨依里ちゃんファッションショーを始めた。水着にリスリザ、それと普段着もかなり増えたので、本人は楽しくて仕方ないようだ。
「よく似合ってると思うぞ」
こういう時に興味ない素振りをして見せたり、憎まれ口をたたく男はバカだと思う。梨依里を見ていて分かったのだが、女子が自分を見せたがる時というのは興が乗っている時なのだ。つまり、今なら普段は見せないような大胆な表情やポーズも比較的簡単に見せてくれるということである。
「梨依里、もう少しスカートめくってみ」
「こうですか?」
うまくすればこれでパンツが見えたりする。もっとも梨依里の場合は、俺限定ではあるが下着を見られることに抵抗がないようだ。それでもただ見せられるのと、こうして自分からスカートをまくり上げて見せられるのではエロさの度合いが段違いなのである。今は下に白基調の水着を着ているので、パンツにしか見えないところもポイントが高い。
「梨依里、すっげえ可愛いぞ」
そしてこの殺し文句。一見何の変哲もない言葉のようでも、こうして褒めてやることによりさらにノリノリになるというわけだ。これでひとしきり満足させた後に梨依里を呼ぶと嬉しそうに抱きついてくるのだが、そんな時は多少胸とかを触っても怒られないのである。
「もう! かまくんのエッチ!」
言いながらも手を振り払おうとはしないし、雰囲気はとろけるんじゃないかってくらいに甘々だ。全身触りまくったり、脇腹をくすぐったりやりたい放題である。梨依里はきゃっきゃと身をよじらせて一応は逃げようとする素振りを見せるが、体を離すようなことはない。当然猫耳も飛び出している。
「かまくん、また明日もお出かけしたいです」
「うん? どこか行きたいところでもあるのか?」
梨依里はもふもふの猫耳を撫でられてくすぐったそうにしながらも引っ込めることなく、上気した顔で俺を見上げていた。さんざん俺に弄ばれて息が荒くなっているが、瞳は潤んだままなので梨依里を触る手を休めずに話を聞いてみる。
「この前陽ちゃんが話してたんですけど……きゃっ! もう! 近くに……あっ! ゆーえすじぇーって遊園地が出来たとか……あふん……」
「あん? USJって関西だぞ。近くに出来たのはUSGな」
「ゆーえす……じーですか? か、かまくん、そこらめぇ……きゃっ!」
「そうだ。うさやんさるやんジンギスカン、ウサギとサルとヒツジの楽園らしいぞ」
どうしてヒツジだけ焼かれちまったのかはこの際ツッコまないでおこう。
「な、何か怪しげですね……あはん! もう! かまくん、触りすぎで……いやん」
梨依里は甘ったるい声を出しているが、俺が触っているのは耳と胸以外では背中と脇腹、それに喉だけである。ただ喉をこちょこちょとされるのは本当に弱いようで、そこを重点的に攻めるとコイツはくたっと骨抜きになってしまうのだ。
ところで梨依里は怪しげなんて言っているが、怪しさの骨頂とも言える妖猫が言っても説得力は皆無である。まあ田舎の遊園地なんてそんなもんだろうし、大仰に三文字のアルファベットなんか使ってるが、おそらく遊具のある公園に毛が生えた程度のものだろう。
しかしこの辺りで遊ぶとなると、確かにその怪しげな楽園しかないのも事実である。それに梨依里が出かけたいというのは、新しい服を着てデートしたいということだと思う。それならどこに行くかはさほど問題ではないはずだ。
「まあ一度くらい遊びに行ってみるのもいいかも知れねえな。明日も晴れるみたいだし、行ってみるか?」
「ホントですか? やったぁ!」
ひとしきり梨依里を触りまくって満足した俺は、猫耳と髪を優しく撫でながらその細い体を抱きしめる。梨依里も余韻に浸りながら俺の頬や首筋にキスしてくるので、相当機嫌がいい証拠だ。
ちなみにその楽園のウェブサイトをスマホで見てみると、モザイク処理されたキャラクターのせいで怪しさ倍増だった。しかも全部見たけりゃ来園して会いに来てね的なキャッチもある。ネットでは見せられないやましいことがあるに違いない。
「それはいいが梨依里、お前この前みたいに早く起きるなよ」
「だってぇ、目が覚めちゃったんですよぉ」
「そんで帰りはずっと俺の背中で寝てたじゃねえか」
最初に二人でショッピングモールに買い物に行った時も、先日のスパリゾートの時もである。移動中の電車の中だけではなく、帰りはずっとコイツは寝ていやがった。梨依里を背負ったまま、買い物した物や土産袋を全部持って帰るのはさすがに骨が折れたぞ。宅配にしてもらえばよかったと後悔したくらいだ。
「それならいい考えがある」
「何ですか? エッチなことするとか言いませんよね?」
ジト目で先回りされてしまった。いやいや、違うって。
「言わねえよ。お前、明日は弁当作れ」
「え? お弁当ですか?」
「そうだ。ああいうところで飯食うと高いし、お世辞にも美味いとは言えねえってのが世の常だ。使い捨て出来る紙の弁当箱使えば帰りに荷物になることもないしな」
弁当を作るとなれば少なくとも俺はその間寝ていられる。
「学校でも食べてるのに、せっかくのお出かけで私の作ったお弁当なんかでいいんですか?」
「なんかってことはねえよ。お前の作ったメシはサイコーだ」
「うわっ! それ、すっごく嬉しいです!」
再び梨依里が俺にじゃれついてくる。ホント、分かりやすいヤツだなお前。
「作ってくれるか?」
「分かりました!」
「それじゃ弁当が出来た頃に俺を起こしてくれ」
「はい!」
妙に素直だと感心しながら梨依里の頭を撫でてやる。すると彼女は満面の笑みをこちらに向けてこう言い放った。
「ツナ缶も食べちゃえば空き缶ですもんね」
おいおい、弁当がツナ缶ってのはナシだぞ。コイツ絶対四個パック五つは持って行く気だ。あれ、地味に重いんだよな。頼むから俺には普通の弁当作ってくれよ。そう願わずにはいられない、夜のひとときだった。




