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ちょっとエッチで可愛い妖猫と送る甘い生活  作者: 白田 まろん
第二章 梨依里と過ごす甘い日常
20/59

そこは俺が入れる場所じゃねえよ

 ショッピングモールの最寄り駅に着いた俺と梨依里(りいり)は、まず予定通りバクドナルドで朝飯を食うことにした。俺はハンバーガーのセット、梨依里にはフィッシュバーガーのセットを注文して外のベンチに向かう。店内のテーブルや椅子は俺にとっては窮屈過ぎるからだ。


「寒くないか?」

「平気ですよ」


 そう言いながらも寒そうにしていたので、梨依里をコートの中に入れるような形で細い肩に腕を回した。こうすると彼女は嬉しそうに体を預けてくるのである。


 町の気温は家の方よりほんの少し高かったが、それでも外にいればホットドリンクはすぐに冷めてしまうほどだ。もっとも猫舌の梨依里にしてみれば、ぬるいくらいがちょうどいいらしい。


「フィッシュバーガーうまいか?」

「うーん、微妙ですね。このソースに混ざったピクルスが美味しくないです」


 タルタルソースに混ぜ込まれた細かいピクルスな。


「思ってたのと違ったか」

「かまくんのハンバーガー、一口下さい」

「ちょっと待ってろよ」


 俺はハンバーガーの中枢たる位置にあったピクルスを抜いてから、梨依里に差し出した。


「あ! 私こっちの方が好きかも知れません」

「なら取り替えるか?」

「いいんですか?」


 そんなやり取りがあって、お互い半分くらい食いかけたバーガーを交換した。


「えへへ……」

「なんだ、変な笑い方して」


 食事を終えても開店までまだ少し時間があったので、ベンチに座ったままくつろいでいると、突然梨依里がギュッと抱きついてきた。


「かまくん、優しいです」

「俺はいつだって優しいだろ」

「今日は特別です」


 こんな風に外でイチャついてると、何となくコイツと恋人同士なんだという実感が湧いてくるから不思議だ。周りを見ると俺たちみたいなカップルだらけだし、学校じゃないから他人の目を気にする必要もない。というわけで俺も梨依里を抱く腕に力を入れてみた。


「か、かまくん?」

「痛いか?」

「ううん、平気」


 一瞬驚いた表情を見せた梨依里だが、すぐに少しばかり赤くなった笑顔を向けてくれた。俺はこういう時の梨依里が可愛くて仕方がない。ただこれが愛しいということなのかどうかがはっきりしないのは、そこに劣情もあるからだ。それさえなければ胸を張って梨依里にヤラせろって言えるんだけどな。


「かまくんかまくん」

「どうした?」

「今エッチなこと考えてませんでしたか?」

「か、考えてねえよ」

「そうなんですか? 今日はすごく愛情感じるので、させてあげてもいいかなって思っちゃいました」

「おま、こんなところで何てこと言いやがる!」


 マジか。てことは今夜辺り俺もとうとう童貞卒業ってことか。いや、待て、梨依里のことだから絶対に魂胆があるに違いない。いい気になって期待に股間……もとい、胸を膨らませていては後で手痛いしっぺ返しを食らうに決まっているのだ。今までだってそんなのはしょっちゅうだったし、ここは話し半分くらいに聞いておくのが無難だろう。それに今はまだ朝だ。梨依里の言うことがもし本心だとしても、この後気が変わるということも充分に考えられる。


「そんなことよりそろそろ開店だ。行くぞ」


 俺たちはバクドナルドにトレイを返して、ショッピングモールに向かって歩き出した。




 町とは言ってもさすがは田舎だ。テレビで観るような都会の様子と違って、土曜の朝でも思ったほど混雑はしていない。もっとも午後になれば客が増えてくるのかも知れないけどな。


 ショッピングモールの中は暖房が充分だったので、俺も梨依里もコートを脱いだ。コートを着たままだと汗をかきそうなほどだったからである。


「かまくん、まずはどこに行きますか?」


 二人分のコートは俺の右腕にかけてあり、左腕には梨依里が巻きついている。しかし歩くというよりぴょんぴょん跳ねる感じなので、きっと楽しくて仕方がないんだろうな。


 ところで買い物の順番なんてどうするのが正解なのか俺に分かるはずがない。そもそも梨依里が一緒じゃなければショッピングモールなんて来る機会すらないのだ。まず先に目的の物を買うのが正解なのか、それとも楽しみは最後に取っておく的な方がいいのか。先に目的物を買うと荷物になるが、後回しにすると欲しかったものが売り切れてしまう可能性もある。さらに時間が経つにつれて人も増えてくるだろうし、そうなるとゆっくり見て回るのも難しくなるかも知れない。


「まずはこっちだな」


 結論、先にリスリザに行って梨依里に似合いそうな服を買うことにしよう。というわけで店に着いたのだが……


「可愛い!」


 大はしゃぎで店内に入って行く梨依里を、俺は呆然と見送らざるを得なかった。店がファンシー過ぎて、俺にはとても踏み込む勇気がなかったのである。リスリザは女性用の下着専門店ではない。だが、男の俺には下着店と同等かそれ以上の入り辛さがあった。


「ここは梨依里に好きなモンを選ばせて、会計の時だけレジに行けばいいよな」


 そんな俺の心の声ともいえる呟きを、梨依里はいとも簡単にかき消した。


「かまくん、かまくん!」


 その店の中から大声で呼ぶのだけは頼むからやめてくれ。こんな俺の気持ちなど知るよしもなく、梨依里はさらに俺を呼び続けたのだった。

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