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ちょっとエッチで可愛い妖猫と送る甘い生活  作者: 白田 まろん
第一章 かまくんとりいり
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食って知る愛情もあるということだ 後編

「おい梨依里、そういや熊って勝手に殺しちゃいけねえんだった」


 何とかって法律で決まってるようだが、そうは言ってもこっちは食われそうだったのだ。この場合は正当防衛的な何かになるのかな。もっともあの後、梨依里が猫力(ねこぢから)とやらで熊の死体を地中に埋めてしまったので、人の目に触れることもないだろう。頭が見つからないとか言ってたがそんなに大きいわけでもねえし、野犬にでも食われればめでたしめでたしだ。


「仕方なかったのではないですか? 何もしなければかまくん食べられちゃってたんですから」


 つまりお前は捕食対象じゃなかったって言いたいわけだな。


「ほら、こっち来い」


 俺は湯を沸かして水で適温に冷ましてから、梨依里の手を洗ってやった。コイツ色々器用にこなすのに、石鹸で手を洗うとかがめちゃくちゃ下手くそなのだ。もしかしたら俺に甘えて出来ないふりをしているだけなのかも知れないが、自分の手を洗うついでなので特に気にするほどでもなかった。


「きれいになりました! ありがとうございます」

「さて、晩飯はどうするか。何か食いたいもんあるか?」

「新鮮なお魚!」

「買ってきてねえ」


 そんなに食いたきゃ川で釣ってこい。


「じゃあツナ缶!」

「昨日全部食っちまったじゃねえか。しっかしお前あれ好きだよな」


 猫が好きそうだということで最初にツナ缶を食わせてからというもの、うちのツナ缶消費量が飛躍的に増えてしまったのだ。梨依里はあの缶詰を一食で十個くらいペロッと平らげる。そんなんだから一度だけミカンの皮を絞っておいてやったらえらい怒られたっけ。匂いで分かったから口にしなかったが、あれは猫にとっては毒になるらしい。ただし梨依里は妖猫(あやかし)なので口にしても害はないとは言っていた。


「ええ、それも買ってきてくれてないんですか?」

「昨日から今までのことだ、よく思い出せよ。お前が俺の傍にいなかった時間は?」

「うーん、お手洗いとお風呂の時だけでした。きゃは!」

「きゃは! じゃねえよ。その風呂だって入ってこようとしやがって」


 コイツはとにかく家にいる時も俺から離れたがらない。トイレにもついてこようとしたので、トイレと風呂だけは一人にしてくれと頼んだくらいだ。


「かまくん、鍵かけて入れてくれなかったじゃないですか!」

「ったりめえだ! 入ってきたら問答無用で犯すぞ!」

「どうぞ!」

「どうぞじゃねえっての、ったく。恥じらえって言ったの忘れたのか?」

「あっ! いやーん、かまくんのえっち!」

「おせえよ!」


 普通は逆だろうがよ。お前が覗かれる立場だぞ。覗かねえけど。


「そうだ梨依里、お前料理くらい作れるようになれ。うまいもん作れるようになったら、俺が愛ってのを理解出来るかも知れねえぞ」


 何てったって家事の一つから解放されるからな、俺が。


「どうしてお料理作ると愛が分かるんですか?」

「いいか、料理ってのは愛情も入れられるんだ。お前が愛情をこめて作った料理を俺が食うってことは、その愛情も一緒に食うことになるんだぞ。愛情を食えば愛情の味が分かる。つまり愛が分かるってことだ」

「なるほど!」


 よし、かかった。ちょろいもんだ。


「ツナ缶に愛情を込めれば……」


 ツナ缶作ってるメーカーさんがすでに充分に愛情込めてくれてるから、残念だがお前の愛情が入る余地はねえよ。それに開けた缶詰に愛情込めても蒸発するだけだぞ。


「料理って言ったろ。ほら、ここに料理本があるから、これで勉強しろ」


 梨依里は色々バカなことを言ったりやったりするが、本人が最初に言っていた通り知識も豊富だし頭の回転も速い。普段はそれを外に出さないようにして、余計な警戒心を抱かせないようにしているのだろう。だから料理本を渡しておけば、そのうちちゃんとした料理を作るようになるんじゃないかと思う。


「かまくんは私が作ったら食べてくれるんですか?」


 これでも俺の彼女なんだし、その彼女の手料理を食えるというのは素直に嬉しいものだ。


「そんなの食うに決まってるだろ。だから美味いもん作ってくれよな」

「分かりました、がんばります!」


 それからほどなくして思った通り、梨依里は美味い手料理を食わせてくれるようになった。梨依里本人の主食がツナ缶なのは変わらないが、とりあえず学校では手作り弁当を一緒に食っている。


 しかし俺は知ってるぞ。お前の方のライスの下にはたっぷりのツナが敷き詰められていることを。


 ――第二章に続く――

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