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ちょっとエッチで可愛い妖猫と送る甘い生活  作者: 白田 まろん
第一章 かまくんとりいり
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名づけ親は俺なんだぞ 後編

 騒ぎが収まってホームルームが終わったのは、他のクラスより三十分も後だった。お陰で教室の前には梨衣里を一目見ようと、特に男子が用もないのにうろついてやがる。お前らさも自然に通りかかったように装ってるが、梨衣里を探してきょろきょろしてるから思いっきりバレバレだぞ。当の梨衣里はというと恋愛に興味津々な女子たちに囲まれていて、俺ですら近寄りがたい状況だった。


「梨衣里、そろそろ帰んぞ」


 なかなか(らち)が明かないので、俺は囲みの外から少し大きな声で梨衣里に声をかけた。すると女子の一人が俺を睨みつけてきた。


「あんた、久埜猪だっけ? いりちゃんの彼氏とか言ってるけど、本当はいりちゃんを脅してるんじゃないの?」

「いきなり呼び捨てかよ」


 そして何だよ、脅してるって。言い掛かりにも程があるってもんだ。お前らが呼んでる梨依里の名前だって俺が付けたんだぞ。言えねえけど。


「宮崎さん、誤解ですよ。かまくん、本当はすごく優しいんですから」


 梨衣里がようやく鞄を持って囲みから抜け出してくる。


「さ、帰りましょ、かまくん」

「あ、いりちゃん、私たちも途中まで一緒に」

「だそうですけど、かまくん、いいですか?」

「好きにしろ」


 女子たちの生温かい視線を浴びながら、俺はその後に続いて歩き出した。実は俺と梨依里の仲に批判的なのは宮崎くらいで、後は恋愛そのものに興味がある女子が多いようだ。実際俺の方に寄ってきてもうキスはしたのかだの、どこまで進んでるのかだのと聞いてくる女子もいた。もちろん答えてやる義務など俺にはない。


 それと同様に途中何かと理由をつけて俺に話しかけて、集団に混ざろうとする男子共もいたが、全て無視してやったのは言うまでもないだろう。全く面倒な奴らだ。


「かまくん、もう少し皆と仲良くした方がよくないですか?」


 しばらくしてようやく二人だけになったタイミングで、梨依里がそんなことを言い出した。俺にとっては余計なお世話だ。


「俺は(つる)むのが嫌いなんだよ」


 俺たちは周囲に人気がないのを確認してから、道を逸れて山に向かう。一直線に山を越えるのが家までの一番の近道だからだ。


「ほら、来い」


 俺がしゃがむと、梨依里は脚を揃えて左肩に座った。自分で歩かせてもいいとは思うが、乗せるとコイツは俺の頭につかまるせいで、まず柔らかい胸が当たる。それに肩には尻の感触、さらに甘い香りがするのでいい気分になれるのだ。さして重いわけでもないし、梨依里もそこが気に入っているようなのでお互いギブアンドテイクというわけである。


「でもお友達もいないとつまらなくないですか?」

「男はお前目当てでしか近づいて来ねえし、女は俺を怖がるかつまらねえこと聞くかのどっちかだろ。野々村みてえのが出てきても困るだけだしな」

「思い出しました! あの時のかまくんの顔!」


 梨依里はクスクスと笑い出した。コイツも時々面倒くせえが、クラスメイトよりはずっとマシだ。何より梨依里は多分、俺の陰口なんか言わねえだろうし裏切ることもないだろうからな。


 その時、急に梨依里が笑うのをやめて、体を支えていた俺の腕をポンポンと叩いた。


「かまくん、止まって下さい」

「なんだ、どうした、うんこか?」

「違います!」


 俺の腕をほどいて勢いよく肩から飛び降りる梨依里。その目は夕方の薄暗さにも関わらず、瞳孔(どうこう)が縦に割れて金色の光を放っていた。


「熊です!」

「熊!?」


 梨依里が指差した方を見ると、木々の暗がりから大きな黒い塊が姿を現した。

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