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ちょっとエッチで可愛い妖猫と送る甘い生活  作者: 白田 まろん
第一章 かまくんとりいり
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恋は下に心あり 後編

「あのなあ、たとえ心の中でそう思っていたとしても理想は違うんだよ。俺の理想はもっとこう(つつ)ましやかで恥ずかしがり屋で……」

「なるほど、恥じらえばいいということなのですね?」


 俺の数万字に及ぼうかという理想論を、恥じらえばいいというたった七文字に集約しやがった。


「ま、まあそういうことだな」

「分かりました。かまくんがそう望むならそのようにします。それに本当は恥ずかしいのを我慢してただけですから。私だって隠したかったのをかまくんが喜ぶと思ってがんばってたんですよ」


 そうなのか。面白がってるとしか思えなかったが、コイツはコイツなりに色々考えていたということか。いや、でも梨依里の言葉を鵜呑(うの)みにするのは早計(そうけい)だ。


「それはそうとお前、俺が学校に行ってる間とかはどうするんだ?」


 今は春休みで、それが終われば高校入学だ。俺が通うのはここから一番近い私立の高校で、まっすぐ山を越えれば三十分、普通に自転車で行けば一時間程度の距離にある。


 中学校よりはほんの少し遠くなるが、バスや電車を使うとさらに時間がかかるし、この辺りからならコンビニに行くよりずっと近い。


「もちろん、ご一緒しますよ。私とかまくんはいつも一緒です」

「いや、ちょっと待てって。もう入試なんかとっくに終わってるし、そもそもお前には入学資格とかねえだろ?」

「その辺は問題ありません。ちょいちょい、で終わります」

「ちょいちょいじゃねえよ。お前受験勉強とか入試とか内申とか、そういうの全部すっ飛ばす気なのかよ」


 世の中の受験生に謝れ。


「いいじゃないですか。人の世のあやかしである私が割り込んでも誰も損をすることはありませんから」

「そうなのか?」

「例えば私が試験でトップを取っても、私がいないところでは二位の人がトップになるのですよ」


 よく分からないがそういうことらしい。と言うかトップを取るのが前提かよ。


「納得してくれましたか?」

「まあ、誰にも迷惑がかからないなら仕方ないな」

「よかった。それではまたちょっとあっち向いてて下さいね」


 梨依里はそう言うと、前回と同様に猫力で俺を体ごと反対側を向かせた。


「はい、もういいですよ」

「いいですよじゃねえよ。まずは俺に一言断ってから……って、はあ?」


 そこには女子用の制服やら体操着やら何やら、高校に行くのに必要なもの一式全てが揃えられていた。


「一応私とかまくんはお隣さん同士ってことにしておきました」

「お隣さんって、ここから隣の大下さんの家だって歩いて十分の距離だぞ」

「お隣さんです」


 言いながら梨衣里は俺の膝から降りて隣にちょこんと座った。可愛い仕草にドキッとさせられたが、それより俺が驚いたのはいつの間にかコイツが服を着ていたということだ。


 ピンクのトレーナーにひだの多い白いミニスカート姿で、女子っぽくて逆に裸よりドキドキする。


「お前いつの間に服なんか……」

「裸の方がよかったですか?」

「い、いや、それでいい」

「可愛いですか?」


 おもむろに立ち上がった梨衣里は、俺の目の前でくるっと回転して見せた。そこでまた俺は仰天することになる。


「お、おい、お前パンツは?」


 そう、回転した時にスカートがふわっとなったのだが、梨衣里は下着を着けていなかったのだ。もろに見えちまったよ。尻だったけど。


「パンツ? あれってやっぱりないとダメですか?」

「ダメに決まってるだろう! 俺と一緒に高校行くなら絶対に履け!」

「どんなのがいいですか?」

「何でもいい!」

「白がいいですか? それともピンク?」


 今の梨衣里の格好ならピンクの方が似合う、ってそうじゃねえ。


「俺に見せる前提で考えるな」

「だって他の人には見せませんよ?」

「だから見せるために履くんじゃねえんだよ」


 それから俺はパンツの重要性について語らされる羽目になった。何を語ったかはよく覚えてないが、尻を冷やすなってことくらいは言ったと思う。


「へえ、馬子(まご)にも衣装だな」


 そこへ奥から顔を出した親父が梨衣里を見て(つぶや)いた。親父、それ褒め言葉じゃねえからまた尻もちつかされるぞ。


 そう思った矢先、親父はその日二度目の尻もちをついていた。

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