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第二話 靄の正体とスキルオ―ブ

 その後、他のものに対しても【鑑定眼Ⅰ】を使ってみたが、結局わかるのは名前だけだといことが判明した。

 【鑑定眼Ⅰ】スペック低すぎ……。

 いや、いずれは【鑑定眼Ⅱ】に進化してくれると僕は信じている。 


 それに、一つ収穫があった。


‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐

名称:魔力

‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐


 これがあの謎の靄を鑑定した時の結果だ。

 

 つまり、今まで僕が見ていたのは魔力だったということになる。

 もちろん僕が元いた世界には魔法なんて存在しない。

 例えもっと早く魔力だとわかっていても使い道はなかっただろう。


 でも、今僕がいるのは極めてゲームに近い異世界だ。

 魔法だってきっと存在する。

 それなら魔力を視認できることは大きなアドバンテージになる可能性が高い。


 それにあの靄の正体がわかったお陰で他のスキルについても理解できた。

 近くに落ちていた木の枝を拾い、靄――魔力で包む。


――【魔力付与】――


 脳内でシステムメッセージが流れる。

 やっぱりこれが【魔力付与】か。


 なら、次は【魔力操作Ⅰ】だ。

 木の枝をその辺に投げ捨て、空いた手に魔力を集中させる。

 

――【魔力操作Ⅰ】――


 再び流れるシステムメッセージ。

 こっちも予想通りだ。 


 ……それにしても【魔力操作Ⅰ】か。

 

 納得がいかない。

 Ⅰってつまり一番下ってことだよね?

 

 僕には物心ついた頃から靄が見えていた。

 幼いころから息を吸うように靄を操り、その扱いについて研鑽を積んできた。

 当然、靄の扱いに関しては一家言ある。

 今の僕に靄で再現できないものはない。

 アリンコからドラゴンまで自由自在だ。


 特に、暇潰し……いや、永い修行の末に編み出した『秘儀・魔龍ウロボロス』は細部のデティールにもこだわった最高傑作だ。

 僕以外が見られないことが本当に残念で仕方なかった。

 というか、我慢できずに神谷さんの前で披露したけどやっぱり見えなかった。

 神谷さんの困ったような笑いが忘れられない……。


 だというのに【魔力操作Ⅰ】だと?

 到底認めることなんてできない!


 魔力を右手へと集める。

 

 普段、人間の周りに見えている魔力は身体の中から溢れ出したものだ。

 『秘儀・魔龍ウロボロス』を発動するためには普段漏れている魔力だけでは足りない。

 

 だから、身体の中の魔力も全部合わせて、右手だけに集中させる。

 サッカーボールほどの大きさの灰色の靄が右手を包む。

 

 ……あれ?

 なぜかいつもより靄が少ない。

 普段の十分の一くらいだ。


 いったいどうして!?

 これじゃあウロボロスさんが作れないじゃないか!


 いや、まだだ!


 この量の靄でも作れるものはある!

 僕の意志に従い、球状の靄がグニャグニャと蠢く。 

 一か所に靄が集中することで灰色が一層濃くなり、靄というより粘土をこねているようにも見える。


 数秒後、それは完成した。

 

 凛凛しくそびえ立つ三角の両耳。

 見る者を魅了する二つの大きな瞳。

 何かを招くかのように、小さく掲げられた手。

 もう片方の手には楕円形の物体が抱えられ、そこには確かに読み取れる「千万両」の文字が!


 ――――――これこそが『秘儀・招き猫』!


 ………………………………。

 

 ………虚しい。


 異世界に来てまで、一体僕は何をやっているんだろうか。

 完成したばかりの招き猫をかき消す。

 灰色の靄が自分の中へ戻って来るのをただ見つめる。


 ああ、何故かウロボロスを見せた時の神谷さんの顔が浮かんでくる……。


――スキル【魔力操作Ⅰ】が【魔力操作Ⅱ】に成長しました――


 お?

 

――スキル【魔力操作Ⅱ】が【魔力操作Ⅲ】に成長しました――


 おお!


 や、やった!


 こんな僕でも見てくれる人はいたんだね!

 ありがとう、システムメッセージさん!

 僕、頑張るよ。

 いつか必ずウロボロスを見せてあげるからね!






 少しはしゃぎすぎてしまった。

 なんだか異世界に来てからテンションが高すぎる気がする。

 僕はどちらかというとクール系のキャラだった筈だ。

 このままではイルミナの小説内で熱血主人公になってしまうかもしれない。

 ……それはないか。


 とりあえずステータスを確認しておこう。

 

‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐

名前:ナルミ・ユウ

種族:人間

状態:正常

ギフト:【魔眼】

ランク:S

レベル:2

HP:11/11

MP:9/11

スキル:【魔力操作Ⅲ】【魔力付与】【鑑定眼Ⅰ】

‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐


 さっきのメッセージ通り、【魔力操作Ⅰ】が【魔力操作Ⅲ】に変わっていた。

 能力自体に特に変化はなかったけど。

 単に僕の魔力を操作する技術が【魔力操作Ⅰ】より【魔力操作Ⅲ】の方がふさわしいと認められたということだと思う。

 いや、照れるね。

 ウロボロスさんを見せればもっと上がるかもしれない。


 HPは最大値に戻っている。 

 どうやら時間経過で回復するらしい。

 これは朗報だ。


 ここまではいい。

 問題はMPだ。

 いつの間にか減っている。

 MPはたぶん魔力のことだと思うけど。

 もしかして招き猫を作ったから?


 でも、あの招き猫は靄の形を変えただけで終わった後は靄を身体に戻したし……。

 あ、【魔力付与】の方か。

 

 地面を探すとあの木の枝がまだ靄に包まれた状態で落ちていた。

 それを拾い、靄を戻そうとしてみると木の枝から離れて身体の中に入っていった。

 よし。


 もう一度ステータスを確認すると、MPが最大値に戻っていた。

 うん、MPも時間経過で回復するらしい。


 そういえば、向こうにいた時よりも出せる靄が少なくなっていたのはなぜだろう?

 靄=魔力=MPだとすると、こちらに来る際にMPの最大値が減ったということだろうか?

 謎だ。


 




 次はアイテムボックスを確認しておこう。

 とりあえずアイテムボックスを触りながら中身を取り出したいと念じてみた。


 すると、アイテムボックスの中身一覧が目の前に目の前に現れた。

 入っているのはスキルオ―ブ、干し肉×99、パン×99、水×99、寝袋だ。


 おお、食糧メッチャ入ってる……。


 すぐに飽きそうだけど、僕はそういうの平気だし。

 昔、一ヶ月間カレーのみで過ごしたこともあるけど余裕だった。

 食糧についてはひとまず心配はなさそうだ。


 一番気になるスキルオ―ブはイルミナが言っていたやつだ。

 名前的にスキルが習得できるアイテムっぽい。

 邪神様がくれるスキル。

 すごい楽しみだ。


 スキルオ―ブを取り出したいと念じると、すぐに拳大の黒い玉が表れた。

 ……ただし空中に。


 ガシャン!


 スキルオ―ブはそのまま地面へと落下し、粉々に砕け散った。


「え?」


 スキルオ―ブの残骸を茫然と見つめる。

 もしかしてやらかした?


 いや、でも別に大したスキルじゃなかった可能性もある。

 うん、いかにもおまけっぽい感じだったし。

 あ、【鑑定眼Ⅰ】で何かわかるかも。


――【鑑定眼Ⅰ】――


‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐

名称:【天啓】のスキルオーブ

‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐


 うあああ、めちゃくちゃ重要アイテムっぽい!


 

 

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