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シュグムは自分より背の高いシドにおののいた様子を見せたが、気を取り直すと言おうとしていた内容を伝えた。

「神官長が見当たらないのです。先程、祭壇部屋に行ったところ、中央辺りが血まみれで…。ご存知ありませんか?」

「それは本当ですか?いえ、見ておりませんが…」

シドは困ったように答える。そのあまりにも精度の高すぎる演技にルーチェは内心で呆れた。

「さようですか…」

「血を流していたのならそう遠くへは行っていないはずです。一緒に探しましょう」

「いえ」

意外にも、シュグムははっきりと断った。

「これは神殿の問題です。お客様であるあなた方の手を煩わせるわけにはいきません」

シュグムは言外に関わるなと言っている。自分から訪ねてきて何をとシドは呆れたが、わざわざシュグムに言うことでもない。

「わかりました。我々は用事があるのでしばらく神殿を離れます。夜までには戻りますので神官長が見つかったら教えてください」

そう言って戸を締めた。

「シド」

名を呼ばれ振り向くと、いつの間にかルーチェが近くにいた。危うく声を上げそうになる。気が付かなかった。シドにしてみれば普通あり得ないことだ。だが、ルーチェの気配は時々消える。

「……シド?」

訝しげに見上げて来たルーチェから戸惑いを隠すように目を逸らし、ソファーに座った。

「どうした」

「少し…まずい気がする」

ルーチェはシドの不審な様子に気が付かなかったらしい。そこへ、ソルバが寝室から出てきてソファーに座り直した。

「どういうことでしょう、ルーチェ様」

ソルバに様付けされ、ルーチェは微かに顔をしかめたが、諦めたように小さく溜息を漏らした。

「ソルバさんの血です。そのままにしてきちゃったから…」

「綺麗にする方がまずいだろ」

ソルバの血を綺麗に拭き取ってしまえば、ソルバが誰かに助けられたことが相手にバレてしまう。ソルバを殺害しようとした人間は、暗殺の失敗を知り、ソルバだけではなくソルバを助けた人間も殺そうとするはずだ。

そう思ってシドは口を挟んだが、ルーチェは首を横に振った。

「多分、もうバレてるわ」

「どうしてそう思う」

ルーチェはシドを見た。シドもルーチェを見ていて、なぜか面白そうに笑っている。ルーチェは再度溜息を吐き、ソファーに座った。

「血が動いてないの」

「血は動かないだろ」

「違う。あそこで私がソルバさんの傷を治して、シドがここに運んだでしょ。もし、ソルバさんが一人であの場を離れていたら、血が部屋の出口まで続いてるはずだし、廊下にだって続いてるはず。でもそんな跡はないから…」

「見る人間が見れば一発ってことか」

ルーチェはこくりと頷いた。

シドは腕を組み、じっと考える素振りを見せる。

「でもどうするんだ?いつまでもここに神官長を隠してるわけにはいかないぞ」

「なら、どこかソルバさんを安全なところに…」

「しかし、私がいなくては神殿の職務が滞ってしまいます。それは信者の皆様に申し訳ありません」

ソルバも口を出す。事態が自分の生死を中心に動いている事実がようやく飲み込み始めたのだろう。

「職務が…滞る…?」

ソルバの言葉を確かめるようにルーチェが呟いた。

「どうした?」

シドが問い掛けに、ルーチェはすぐに答えることができない。

「どこか…引っ掛かるものが…。何かの物語で…」

眉間にしわを寄せ、懸命に記憶を辿るが、閃くものはない。

「まぁ、大事なことならそのうち思い出すだろ。とりあえず、神官長をここから出そう。何か変化があるかもしれない」

シドは手を叩き、ルーチェの思考を止めさせる。

「当てはあるの?」

ルーチェもひとまず置いておくことにして尋ねると、シドは何とも言えない実に複雑そうな表情をして頷いた。

「本当は会いたくもないし、頼りたくもないんだけどな」

そうシドは困り顔で笑った。

次回新キャラ登場!

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