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採取

早朝、俺は薬草を採りに行く為に街を出た。


申し訳程度の護身用として包丁を腰に2本ぶら下げているが、これを使うことにならないように祈るばかりだ。


遺跡都市アウラの周辺は、街を囲むように建てられた防壁の中にある魔封石の影響でモンスターが近寄りづらい場所になっている。

薬草を採りに行く山は魔封石の効果範囲外になるが、山の周辺に魔封石を設置することによりモンスターが入り込まないようにしているので山の中ではモンスターが出る事はないそうだ。


山に入るまではモンスターに襲われる可能性もあるらしいけど出てもゴブリン位な物らしい。むしろ盗賊みたいな犯罪者の方がここでは厄介みたいだ。


薬草採取に使われる山の周辺はFランク狙いの冒険者崩れが時々出没するらしい。

まぁ、街の兵隊さん達が定期的に見回っているので深刻に考えなくても良いらしいが、気を付けておくことに越したことはないだろう。


今歩いている辺は一面が水田の稲作地帯だ。勿論世界がこうなる前からここら辺は畑だったが、今もここは変わらず作物を育てているみたいだ。

育てている物は大きさも形も規格外な物に変わってしまっていたけれど。


田園地帯を抜けてしばらく歩くと森が見えてくる。小学生の時に遠足に来たこともある山だったが、思い出とはかけ離れた感じになってしまっていた。


(こうなる前はここに森なんてなかったんだけどな。)


地面に魔封石らしき物が埋まっているのが見える事から察するにどうやらここが山の入口みたいだ。


森に入って薬草を採取しながらしばらく進んでいくと、木々が少なくなって森の終わりが見えてくる。

どうやらここからは本格的な山道になるみたいだ。

受付のお姉さんの話だと山の上の方には坑道があり、鉄鉱石なんかが良く採れるらしい。

希少な鉱石は採れないがここはモンスターが出ないので駆け出しの鍛冶屋が時々掘りにくるそうだ。


まぁ、今は鉱石よりも薬草なので上の方には行かなくてもいいだろう。

重い荷物は邪魔だし、ここの鉱石の質は良くないそうなので行く必要を感じられない。

俺は森に戻って薬草採取を再開することにした。

目標はクエスト50回分である薬草5000gだ。5kgと考えるとそこそこな量なのが分かる。


採取対象に薬草の茎の部分は含まれていない。葉の部分だけが対象だ。

それを大体ゴミ袋一杯分位集めないといけないと言えば大変さが分かるだろうか?

採取スキルのおかげで結構簡単に見つかる薬草だが、量が量なので日が暮れても目標数は集まらなかった。

見た目や手に持った感じで大体の判断をしているが、目標の5kgがどれくらいの重さなのかイマイチ分からないのも困りものだ。計量計みたいな物を持ってくれば良かった。

量が足りなくて2度手間になるのは嫌なので余分に採って帰ろうとは思っているが、そうなると今日はここで野宿することになりそうだ。


この山にはモンスターは出ないが普通の動物はいるらしい。

魔封石が侵入を防ぐ事ができるのは魔素によって変質したモンスターだけなのでイノシシなんかは普通にいるみたいだ。


まぁ、それでも危険ってほどでは無いだろう。

クマはいないみたいだし、イノシシ位だったら寝ている間に襲われて殺されるって事はなさそうだ。

虫刺されは酷くなりそうだけど我慢すればいいんだし、頑張ってみるか。


・・・


山の夜は想像よりずっと冷える。

野宿するとは考えていなかったので何の用意もしてなかった俺はたき火すら起こせず丸まって寒さを凌いでいた。


たき火ってやつは意外と難しい。小説や漫画だと簡単にやっているイメージがあるが、うろ覚えな知識だけだと絶対に無理だと思う。

魔法を使えたら違っていたかもしれないが、近接特化で魔法を捨てているのにこれの為だけに魔法スキルを取るわけにはいかない。


辺りは暗く、月と星の光が木々の隙間から漏れてくるだけだ。

ぶっちゃけ暗闇から何か出てきそうでかなり怖い。明かりがどれだけ大事なのかを再認識した。

魔法スキルを取らないという決心も早くも揺らいでしまう。

魔力が低くても【火属性魔法】のスキルを何か取ろうかな。焚き火をする位なら魔力低くても充分だろうし、これからクエストの内容によっては野宿することも多いだろうし……


いやいや、ダメだ。

それなら火をつける道具を常備すれば良いだけだ。

ライターは無いにしてもマッチ的な物くらいならあるだろう。

だからガマンだ。ガマンするしかない。

こうして森の夜は更けていった。




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