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帰還

「さて、これどうするかな。」


ハイトロルの死体はゲームのように消えることはなかった。

死体が消えて素材だけが残るのを少し期待していたけど、残念なことに死体はそのままだ。


仕方ないので放置していくことにする。

ハイトロルの死体は重い。引きずる位はできそうだが、持ち上げるのは無理そうだ。

あと臭い。超臭い。だから放置も仕方ないと思う。


俺はハイトロルを裏路地まで引きずって邪魔にならないところに放置したあとアプリを開いた。

ゴブリンだけならともかくトロルまでここら辺を徘徊しているならこのままのステータスじゃ命が危ない。だからステータスを上げておこうと思ったからだ。


うーん、短剣技能のスキルも取ったし、【力】【速】を中心に上げていくべきかな?

でもゲームと違って死んだら終わりっぽいし、防御力も欲しい。バランス型で

しばらく様子を見た方がいいかもしれない。

特化型の方が最終的に強くなるかもしれないが、ゲームならともかく現実でそれは自殺行為だろう。俺は別に最強になりたいわけじゃないし、死にたくないだけだからな。


・・・


黒部 総司 

職 一般人 レベル6


魔 3

力 20 →36

技 20 →35

防 20 →35

速 17 →36


ステータスポイント


スキル


短剣技能2 気配察知2 危機察知3


スキルポイント3


・・・


スキルポイントは念の為に少しだけ取っておく事にした。

突然どんなスキルが必要になるか分からないからだ。スキルが必要になった時にポイントが足りなくて慌てたくない。


ステータスはバランス型といっても殆どが2倍に成長している。

もう何でも出来そうな気がしてきた。だって最初の能力値から考えると7倍の能力値だ。もう身体能力だけなら超人といってもいいだろう。


このステータスなら大抵のモンスターを倒せるだろう。

ダンジョンモンスターが外を徘徊しているってなると、勝てないモンスターも多くなるが、流石にダンジョンのモンスターが外に出てくる事はないと思いたい。


俺はモンスターが周辺にいないか確認した後、充電器を拾って学校に戻ることにした。

ハイトロルと戦う為に結構な距離を移動している。急がないと日が暮れてしまうかもしれない。


街は驚く程に静かだ。時折モンスターの奇声が何処からか聴こえてくるがそれ以外の音は何もない。

俺は何時もの日常が壊れていくのを感じて少し悲しくなった。


・・・


俺は学校に戻るまでに上昇した身体能力を少しだけ試してみることにした。

慣らし運転は必要だろう。ちょっと力を入れたつもりで殴ったら人が死にましたとかになったら洒落にならないからな。

まぁ、技のステータスは上昇させているので力のコントロールは出来るみたいだけど。


電柱を思いっきり握ってみるとコンクリートで出来ているはずのそれは豆腐のような感触で削り取ることができた。


これは異常だ。俺、人間のカテゴリから外れたかもしれん。

だって電柱が豆腐みたいなやわらかさだったもの。ちょっと力入れただけだもの。


電柱がゆっくりと倒れていく。それを見ながらできるだけ全力を出すのは止めようと心に決めた。


学校に戻ると直ぐに体育倉庫に向かう。

随分と時間がかかってしまった。彼らはモンスターに襲われていたりしないだろうか?

少し心配だ。


「おーい、皆生きてるかー。」


体育倉庫の扉をノックするとゆっくりと扉が開く。

まだ全員無事みたいだ。ホッとする。帰ったら死体が転がっていたとかになったらトラウマになりそうだからな。

床には保存食の容器が落ちている。どうやら晩飯中だったようだ。


「黒部さん、遅かったですね。大丈夫でしたか?」


「うーん、大丈夫だったけどハイトロルに襲われたよ。」


俊が心配したように聞いてきたのでそう答えると、全員が絶句したような顔をする。


「そ、そのトロルはどうしたの!?まさか追いかけられてきてないでしょうね!?」


凛がすごい剣幕で詰め寄ってくる。美少女に詰め寄られるとか初体験だ。

女性耐性があまりないので何て言っていいのか分からなくなる。


「えっと、苦戦したけど倒したよ。あの、ハイトロルの返り血で汚れてるから離れたほうが……」


俺がそう言うと、安心したのか凛はその場にヨロヨロとヘタリ込んでしまった。

周りを見渡すと皆も安心したのかホッとした顔をしている。


「まぁ、問題は沢山あるけど、とりあえずはみんなのコネクトをアップデートをしよう。ゴブリンだけじゃなくトロルまで街を徘徊してるとなると身体能力を上げないといざというときに困るから。」


俺は皆に充電器を渡す。

これから先、一緒に行動するにしても別行動を取るにしても、コネクトのアップロードは必須条件だ。自分の身は自分で守れるようになってもらわないと心配で仕方ない。



俊たちのコネクトでのレベルは25~43のいわゆる中級者プレイヤーだ。

レベルカンストの俺よりは貰えるボーナスポイントも少ないが、ポイントを全部使えばトロルとだって戦えるようになるだろう。


ダウンロードには少し時間が掛かるようなので俺は外の見回りをしてくることにした。

街の現状をもっと詳しく知っておきたい気持ちもあるが、モンスターを倒して経験値を稼いでおきたいという欲もある。いや、むしろそっちの方が強いか。

とはいっても、俊達のいる学校からそんなに離れることはできないので学校周辺をブラブラする事くらいしかできないけれど。


両手に持った包丁をジャグリングしながら歩く姿は下手したら警察を呼ばれるレベルだと我ながら思う。


スキルレベルを上げたおかげで包丁の扱いもかなり様になってきていると思う。

ブラブラし始めてから20分程経ってゴブリンも5匹程倒していた。

例えゴブリンでも殺すのはやはり慣れないが、あっちが襲って来るんだから仕方ない。

包丁にはゴブリンの緑色の血がこびり付いてしまい、切れ味が悪くなってしまっている。これは何とかしないといけないだろう。


「金物屋の近くだし、包丁補充しとくか。」


気が付いたらハイトロルの時にお世話になった金物屋の近くまで来ていたので包丁を補充していくことにする。

隣の雑貨屋から大きなリュックを拝借して包丁を詰められるだけ詰めていく。

ゴブリン達が知恵をつけて包丁を使い出しても厄介なので全部持っていくことにしよう。


頑張った結果、2つのリュックが包丁でパンパンになった。この状態で職質受けたら間違いなく逮捕だな。まぁ、警察は今、それどころじゃないだろうけど。


次はダメもとでスーパーに来てみた。食べ物はもうないと思っていたが、意外とそうでもない。特に缶詰系が多く残っている。

ゴブリンのようなモンスターは生肉等の中身が見える食べ物は持っていくが、缶詰のような食べ物に見えない物は持っていかないみたいだ。

他にも納豆やキムチみたいな匂いの強い物も持っていかないようでたくさん残っている。


住民は早々に避難したようで、スーパーの缶詰系の商品は殆ど手付かずの状態で残っていた。

リュックは包丁で詰まっていたのでレジ袋に缶詰を詰め込んでいく。ステータスが強化された俺は自分でも驚く程の量の缶詰が入った袋を軽々と持ち上げることができた。


(これで食糧問題はしばらく大丈夫そうだな。)


いざとなったらモンスターの肉を食べる覚悟もしていたが、しばらくはそんな事をしなくてもよさそうだ。

ここら辺のモンスターの知能はそんなに高くないのかもしれない。

他のモンスター……例えばドラゴンや巨人は高い知能を持っていてもおかしくはないが、ゴブリンに知恵を求めるのも変な話か。


ロウソクやライターの様な雑貨も残っていたので少し持っていくことにした。

流石に荷物が多くなってきたのでスーパーに置いてあった台車に荷物を載せて行くことにする。


建物や街灯の灯りがないと夜は本当に暗くなる。

太陽が沈んで手元が良く見えなくなってきたので学校に帰ることにした。

モンスターも夜は眠るのか、辺は俺が押す台車の音しかしない。


今は何時位なんだろうか?スマホを見てみると22時を表示していた。

少し探索に夢中になりすぎていたみたいだ。早く帰るとしよう。



・・・


コネクトがゲームだった頃の話になるが、朝と夜で出現するモンスターが変化することがたまにあった。

勿論それは特定の場所だけだったし、変化するモンスターも少数だったけど。


たしか夜の時間帯は精霊系やアンデット系のモンスターが出現するようになる。

空気中の魔素が強くなる夜の時間帯は精霊やアンデットが活性化して具現化するっていう設定だったはずだ。因みに精霊はダンジョンの影響で凶暴になってモンスター化しているらしい。


精霊は倒すと正常な状態に戻るため、専用のアイテムを使えばペットにできた。様々な能力を持つ精霊は戦闘や生産でかなり役に立つので見つけたら何とかして捕獲したいな。


そんな事を考えていたら学校に着いていた。

時刻は11時を少し回ったところだ。モンスターに襲われなかったので思ったより早く着いた。


荷物が乗った台車を体育館まで持っていく。俊達がどこにいるのかは分からないが、多分寝ているので探すのは明日でいいだろう。

俺も今日は色々あって疲れているし、寝るとするか。

俺は体育館の隅に座って目を閉じた。



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