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Therianthrope  作者: 緋絽
4/5

記憶の命ずるままに

どうも、緋絽と申します。

なかなか展開が進みまなくてすみません!




「はいよ、日替わり定食お待ち!」

響く威勢のいい声にカプラはビクリとその身を竦ませた。

宿の食堂には多くの人間が集まっていた。外套を被っているのはカプラとアギラだけである。

アギラは頼んだ日替わり定食のおかずを見て顔をしかめ、舌打ちした。

「ちっ。鶏肉かよ。まぁ食うけど」

しかしカプラはそれに怯えずに、むしろその内容に噛みついた。

「食べんの!? 鳥だろ!?」

「何。食うよ? だって、俺肉食だからさ。今日の飯がそれしかないならそれを頼むって」

当然と言わんばかりの返答にカプラは口をつぐんだ。

自分とアギラは違う。カプラは草食動物だ。だからそう滅多に飢えることはないが、アギラは飢えるのだ。

「あぁもちろん、ヤギも食うよ?」

アギラは微笑みを浮かべてカプラにその金の瞳を向けた。

カプラは背筋を悪寒が走った気がした。

「さっ、さっさと出ようぜ、こんなところ!」

「シィー。声が大きいぞヤギ君。こんなところはないだろう」

アギラがのんびりとした口調で言う。実にまったく焦っていないのがひしひしと伝わる。

「わ、悪い……。あの、……アギラ、あんたこれからどうするんだ?」

「俺? そうだなぁ、とりあえず傷が癒えるまでどっかに隠れる。宿を出たら君は好きなとこ行けよ」

カプラは唇を引き結んだ。知らず顔が俯く。

「あ、わかった……」

「…………………君さぁ。ほんとは───」



「はいよ! 6種の野菜の彩りサラダお待ち!」



すぐ側で響いた大きな声に、ビクリとカプラが体を震わせる。その拍子にカップが倒れてカプラの外套にかかった。

「あぁ、すまないね。驚かせちゃったかい。どれ、その外套干してくるよ。脱いで───」

店員が手を伸ばして外套に手を掛けた瞬間、カプラは勢いよくその手を払った。

「さ、触るな……っ!」

店中に静寂が沈殿する。

カプラの荒い息だけが響いた。

「あーあー」

アギラが少し焦ったように小さく漏らす。

体を抱き込んで震えるカプラを一人が指差した。外套がずれ落ちた、その頭を。

「おい、あれ、角じゃないか……」

「え、……じゃあ、獣人?」

空気が変わったのがすぐにわかった。

男が近くのものを武器の代わりに握り、女が冷ややかな目をカプラ達に向ける。

カプラは肩を抱いたまま床に膝をついた。

今この瞬間を、向けられる目を、対峙する者が持つ武器を、カプラは心から恐れた。

過去の記憶の波に呑まれ、恐怖に竦み、立ち上がることすら忘れた。

「セリアンだ! 殺せ!」

振り降ろされる刃物を、それを握る腕を。

カプラは見ずに・・・把握・・していた。

そして自分の体が、ひとりでに【身体強化】を使い始めるのを、カプラは知っている。そう、躾られたゆえに。

「───カプラ。君ってやつは、どこまで死にたがりなんだよ」

鷹を思わせる羽が舞う。

刃物を振りおろした人間を蹴り飛ばし、アギラがカプラを見下ろす。

「苛々すんだよな、君みたいなやつ」

解除されていく【身体強化】に、カプラは心から安堵した。もし発動されていたら、カプラにはもう止められなかった。

未だ震えているカプラに片眉を跳ねさせ、アギラは大きく溜め息を吐いた。

「なんなんだよ。…………ほら、手を出して」

アギラの言う通りに手を出すと、アギラはそれを掴んで引っ張った。

震える足のせいでよろけたカプラの腰に手を回し、カプラをしっかり抱き込む。

「鷹のセリアン……、もしかして、例の!?」

人間の言葉にちらとも興味を見せず、アギラは翼を広げた。美しい羽だった。

こうなれば無銭飲食だ。

「さよなら人間共。ただ飯くれてありがとな」

重々しい空気に相応しくないほど清々しい笑みを浮かべ、アギラはカプラを抱えたまま、扉から文字通り飛び出した。




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