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もぐらとアスパラガス

作者: 低反発

 目の前に寄せてくる細波さざなみのように、霧散するのを待つべき思念と向き合っていた。思考とは不思議なもので、万物を生かす時間を上品に振り払ってしまう。だからこの部屋に閉じ込められてからどれくらいの時間がたったのかも、もはや僕にはわからないようになっていた。


 そして、目の前で偉そうに座る思念を見下ろしながら、僕は昼に食べたはずの、アスパラガスとズッキーニのパスタのことを考えていた。パスタをフォークに巻き付けてから、アスパラガスを刺す。あの感触が耳元をくすぐるようだった。こんなことは、この思念には思いもよらないことだろう。僕はいくらか勝ち誇ったように、白日夢のようなパスタを思い続けた。


 すると僕と思念の間を、一匹のもぐらが、忙しそうに横切った。どこから入ってきたのかは知れないが、彼は土を探し求めているようだった。だけど、この部屋に土などあるわけがない。この部屋はむしろ言葉でできているのであって、ひどく不完全な空間だから、土のようにしっかりしたものはこの空間では生きられなかったんだと思う。


 仕方がないから、僕は白日夢からアスパラガスの尖端の辺りを一つ取り出すと、それをもぐらに渡してあげた。



 もぐらは僕に丁寧にお礼を言うと、思念に見せびらかすように、アスパラガスをかじり始めた。



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