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床争奪戦 決着

「何故だ!なぜなんだああぁぁぁぁー!」

 藻夏さんは口惜しそうに焦げ茶のタイルを踏みしめながら叫んでいた。

「後少し!あと少しなのに全く近づけない!いや!そもそも有須の袴が邪魔で有須より先の地形が読めない!」

 俺は袴の少し置くで洗濯物を片付ける作業を続けてついに最後の一枚を、有須のパンツを畳み始めた。

「どうした藻夏さんよ!!あと有須のパンツ一枚で畳み終わってしまうぞ!はっはははははー!」

「見るな」

 ズシュ!

 有須も藻夏さんと同様白タイルを踏みしめる形で手足が地面についてる。その体勢から右足を俺のわき腹に鋭い蹴りが突いた。近くに居た分、有須からの攻撃は非常に当たりやすい場所に居た。

「グホッ。べ、別に匂いを嗅いだり、神棚に奉ったりしてないからあ、あ安心してくれって」

 昨日はお日柄もよく、太陽に向けてパンツをかざすとよく透けて見えたりして神々しかったけど、ほんとに嗅いだりしてないし。

 そもそも、だったら洗濯物を任せるのはやめていただきたい。

「何?私はいつも有須のパンツの匂いぐらい嗅いでるわよ?」

 現在は有須が邪魔で藻夏さんが見えないが、その声は然も当たり前の事をしているのだと主張する声だった。

「貴様あぁぁ!俺もやりてぇのに!」

 ズシュズシュ!

 別の場所に当てようとすればできるのに、あえて狙い清まして執拗にわき腹の同じポイントに蹴りが飛んでくる。

「ウボッ!てか藻夏さんは洗濯物なんて最近やってねぇじゃねぇか!」

「だから仕舞った後に、タンスから出して匂いを嗅いでるのよ!ここだぁぁ!」

 逆切れされた。

 さらに勢いで藻夏さんはこちらに近づく一手を打ってきた。

 見えないが、気合を帯びた声の最後がいきんだ声で、その体勢が苦しい状態であることは伝わってきた。

 今更だが藻夏さんにも焦りを感じ始めているのだろう。

 そもそも、洗濯物の邪魔をするための焦りと思うと、許容しがたいものだ。

 俺はその体勢を見るためにちらっと有須の体の影から顔をだして藻夏さんの状況を覗き見る。俺の居場所がばれる分除くと不利になるが、邪魔をしようとしている輩の苦しむ姿を見たいがためにリスクも致し方なし。

「……」

 何も言わず。そのまま俺は顔を引き下げた。

「貴様ぁぁ!そこにいたのかあああぁぁぁぁぁぁぁーーー!!」

「ふあああぁっはっはー!俺が有須ともっと離れてると思ったのか?違うわぁ!」

 俺の現在位置は有須の袴のすぐ目の前で、うずくまって綺麗に袴で姿を覆い隠していた。ついでに洗濯物もスタートの時とは別の場所に移して、藻夏さんが今移動した場所からではさらに近づくのは難しい状況になってしまっていた。

 当然普通に近づく分には問題ないだろう。だが俺の周りには焦げちゃが少ないのだ。

「子供なんぞに負けるというのかこの私が!この私がああぁぁぁぁぁ!」

「そろそろ諦めてもいいのよ?ママさん?」

 勝ち誇った顔で有須が藻夏さんに降伏をせまる。

「餓鬼が!図に乗りおって!…………」

 藻夏さんが怒り狂っている中、俺はすっくと堂々と立ち上がった。

 その姿を見て藻夏さんは膝をついて白タイルに足を着いた。

 立ち上がった俺の手には山積みになった洗濯物が綺麗に重ねられている。

「まさか…この私が…子供たった二人に負けるなんて…」

 快くはないが賛辞に近い言葉を聞きながら俺は洗濯物をタンスに片付けるために、リビングを闊歩していく。

 いや、闊歩するつもりだった。

 大きく踏み出した一歩は、床を掴むことができずにそのまま洗濯物と一緒に俺は前へと倒れこんだ。足を滑らせたのだ。

「うおぁ!」

 瞬間、にやりと不敵な笑みを浮かべた藻夏さんが俺の目に入った。

「おっと、さっき掃除したときにそこだけワックスを拭き取りそびれていたかな?」

 バサバサバサ

 全てが計算されていたように洗濯物はカーペットへと不時着していった。

 即ち、洗濯物がビスケットまみれになったということだ。

「はぁ、負けたか」

「ふぅ、勝ったな」

「負けた」

 さらに次の瞬間、誰もが先ほどの気合の入った叫び声などの元気が消えうせた。

「しかし、このテンションも中々保つのは疲れるな」

 転んで体勢を崩したがすぐに立て直して今までのテンションの昂ぶりに疲れて腰をつき一息ついた。

「ワックスとはさすがママ、やるわね」

「最初から勝負なんて私が勝つことが決まっていたのよ。さ、片付けるわよ」

 その言葉を合図に、皆立ち上がる。藻夏さんは悠々と、有須は袴をはたいて、俺は有須のパンツを握り締めて立ち上がる。

 今回死守できたのは最後に握り締めていたこの有須のパンツだけだった…


藻夏「全部洗濯機に放り込んだぁ?」

有須「うん、もう無い」

想樹「(パンツは汚れてないし入れなくていいか)」

藻夏「んじゃ、回すか」

想樹「(そしてそのまま俺のポケットに仕舞って…)」

有須「あ、待って…お兄ちゃんそのパンツさっきから握ってて臭そうだからもっかい洗って」

想樹「なんでばれてるの!!!」

有須のパンツには、人を狂わせる薬物のような香りがするとかしないとか。

いや、男にとってパンツはマロンだろ!

ロマンだよ!見えないからこそ見たい!だから薬物のような中毒性が(ry

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