ニートは強い
噂によると変態は死んでも直らないそうです。
一瞬の気の迷いは人生を揺るがしかねない。
それは、恐らく犯罪を起こした人の大半が思う事なのだと思う。
『あの時』、僕は窃盗を思いとどまっていたら。『あの時』、私は感情に流されていなかったら、『あの時』俺はロリコンに目がくらんでいなければ。
誰もが、『あの時』食いとどまれていたらと思うものだと思う。僕だってその一人だからなんとなく理解が出来る気がする。
犯罪を犯した人で、自分はこれっぽっちも悪いことをしていない、と断言できる人はそうそういないと思う。そんな人がいるならそいつを尊敬してやろう。
そんな昔の淡い思い出を思い出しながら僕は洗濯物を干して日常を過ごす。
僕の『あの時』は早朝目が覚めてからだった。
僕は朝目が覚めて朝食を食べながら、いつもと変わらない学校の休日を過ごしていた。
外は僕を解放的な気分にさせようとさせんばかりに太陽が照り付けていて真夏日よりだ。時刻はすでにすずめはどっかで餌を求めてちゅんちゅんとも鳴かなくなる時間帯の正午。
外の風景と共に僕の心は開放的な気分で実に気分がいい。こんなに気分がいいのは、ガチャガチャで欲しいものが一発で手に入った時以来ではないだろうか。
「う~ん、朝のブレックファーストはほんに気持ちがいいなぁ。ついつい、妹の布団にでも潜って『おはようお兄ちゃん』の逆バージョンを再現したくなってしまうな」
すでに、お昼を回っていることすらもう僕の脳みそには無かったらしい。このマンションの7階から見える風景はいつ見てもマンションの向かい側に見える家に干してある色気のある下着が見えるだけだから時間間隔なんてものは狂いに狂わされているんだ。
「さて、今日もいっちょ妹を起こすかな」
準備万端今日も僕の性欲は妹にベクトルが向くわけだ。
なんたって、妹は可愛い。この感情を愛と呼ぶのだろう。我ながら妹に対する持て余す性欲が、いつか爆発して犯罪を犯すときが来てしまうのではないかと、たまに怖くなる。
「臆するな安達 想樹。ここで臆したらただの変態にすぎんではないか。それを越えた先にこそ境地はある。そう、秘境の地があるのだ」
一人で無駄な演説ご苦労様だ。
演説しながらも、僕は迫り来る性犯罪者のような立ち居振る舞いで妹の部屋に立ちはだかる。
「入るぞー」
返事がない。
もしかしたら、中で妹が倒れてるかも!これは大変だ!お兄ちゃんが助けてあげなきゃ!
「これは正当な理由があっての進入だ。僕が許可する」
ガチャン
開けてしまった。
当然、妹が部屋の中にいないことを僕は知っていた。
なぜなら昨日から妹は、修学旅行でお出かけ中なんだから。いるはずが無いんだ。お兄ちゃん寂しい。孤独死しそう。
「ふむ、本当に有須の部屋は汚いな」
そこには、黒くてテカッてて素早い生物を捕獲するトラップが堂々と設置してあったり、お菓子の食べ零しが散乱してたり、カップメンの容器が空になって放置されていたりで女子の部屋とは思えない部屋が広がっていた。
だが、可愛らしいパンダのぬいぐるみやうさぎさんのぬいぐるみや小さな小物が置いてあったりそこらへんは及第点と言った具合だろうか。うさぎのぬいぐるみの顔の上にカップメンが置かれているのは赤点かもしれないが、それはうさぎさんが食したものだと判断しておこう。うまそうに食うじゃないかうさぎさん。
可愛い妹ながら少しあきれてしまいそうになる。せめて修学旅行前日ぐらいには部屋を掃除して黒光りした生物が湧かない環境を作ってから行くべきだろ。
「だがしかし」
バフン
その部屋の中でも綺麗な点はあった。そこに向けて僕はダイブ。
そこはふかふかとした羽毛が気持ちいい場所だった。布団だ。
「はぁ」
暫く我が妹、有須の布団に包まって女子のにおいと言うのを満喫してみた。
うむ、悪いものではないな。だがそろそろ、少々罪悪感を感じはじめていた。
女子の布団に無断でダイブしたんだ。乙女の気持ちってのもあるだろうしそれを侵害した罪悪感は当然ある。
「そろそろ、満足かな」
今僕は人に見られたら恐らく赤面して、一生その地に戻ってこない自信がある。
なんてったって、妹の部屋でスーハースーハーして満足感を得ていたのだから。
「ほほぅ、もう満足なのかな想樹君?」
一生この地に戻って来れそうに無いと僕は今判断してしまった。
逸るな。
幻聴ということもあり得る。
僕の自己嫌悪が生み出した声という可能性も否めない。
だって、有須は今修学旅行に出かけているではないか。
「ふ、幻聴か」
「誰が幻聴だバカ。親の声も忘れたのかこのバカ息子が」
………………
……
仕方が無いので、僕はこの部屋の間取り的にベッドの後ろにあるクローゼットの方向に振り返ってみた。
「よぅ」
そこには、母親がどこぞの青いネコ型ロボット風にクローゼットの中に仕舞われていた。居心地はよさそうだ。僕が侵入しても微動だにせずそこに居たのだから居心地は満点なんだろう。
茶髪に染めてある長髪は後ろで括ってありポニーテールになっていた。服装は寝起きなのか『ねんねんころりぃ~』と表記されたTシャツと短パンでそこに居座っている。妹の部屋がこのざまであるのは遺伝であるのが沸々と伝わってくる瞬間だ。しかも、高校一年生の僕にとって目に毒なのは親が妙に若々しいことだ。友人が始めて家に上がると揃って皆あのニートを姉だと思い込んでしまう。解せぬ。
というかそもそも、いつからここに居るのかが疑問点だが、それは今の僕にとっての問題点とはまた違った。
「なんだニートか」
「ニートじゃねぇよ!育児放棄してなかったら母親はニートじゃねぇよ!」
「そんなとこで、眠ってて育児放棄してないといわれても文句は言えないだろ」
「誰がお前らの飯作ってやってると思ってんだ?」
「僕だ」
「…………そうか、それもそうだったな」
こいつは、ネコ型ロボットとなんら変わりは無いんではないか?とふと疑問に思ってしまった。
ただ、のうのうと暮らすだけで飯は僕が作りこの親が何か親らしいことをしているところを見かけたことが無い。それはちょっと言い過ぎた気もするけど、この親は赤点であると断言できる。
「藻夏さんよ。暇なら自室で寝ていてもらえないものだろうか」
「子供の監視が親の仕事さ。特に想樹のような奇行を起こす兄から妹の部屋を守るのは主な仕事だと思っている。それによって、このビデオカメラに映っている証拠を元に洗濯物も想樹にやってもらうという交渉材料を得るのも親の…」
「それは親の仕事じゃねぇ」
ちょうど寝そべっていてお腹に物が置けそうになっており、そこにちょこんと乗っけられていたのがハンディーカメラだ。
いつでもどこでも、思い出を残せる文明の利器は僕にとって凶器として牙を剥いた瞬間。
膝を突いて僕は負けを認めたのだった。
プロローグ終了
☆おまけ☆
「もーいーくつねーるーとー、おーしょーおーがーつー?」
「僕に聞くなニート」
「あと364日だよこの変態ロリコンが!」
「うっせぇ!変態でもロリコンでもちゃんと家事全般出来ればニートよりマシだ!」
「ははぁん、この映像を有須に見せてもそんなことがいえるのかな?」
故に、想樹土下座
☆
妹出てきてねぇじゃん、ちょっと作者さんちゃんとしてくださいよ!!
はい、すいません。
ちょっと事情によって妹は旅立ってました、次回妹は帰宅してきます。
妹の部屋から想像するに、妹の性格にご期待あれ。
最後に
全国の主婦の皆様ニートとか言って申し訳ございませんorz