秘密〜
「ふぅ。よいしょ。」
草木が生い茂る緑の中に風が一つ吹いた。草は千も揺れた。
草原という言葉の真ん中にこの場所は位置している、そんな感覚さえ覚える。
俺はじゃぁ今きっと草と原の間にいる。草の広がる絨毯にドサッと倒れる。
仰向けの大の字で。雲が風に流され泳いているように動いていく。
目を閉じたい気分だ。さっきまで、ソラという名の友達がいた。
極普通の関係が俺とソラにはあったはず。
俺の大傷を負った腕が流すはずのものを流さず、
変わりに無数の回線が姿を現してしまったせいだろ。
「お前…怖いよ…に人間じゃねぇ」怯え、震え今までに聞いたこともない酷い声だった。
そう言うのも無理はない。 だって人間ではないのだから。
ソラは、全力で精一杯逃げて行った。
その表情はまるで犯人に殺されようとする被害者のようだった。
背中が小さくなる。もう合うこともないだろ。バイバイ。
これで良かったのだ。ソラに、あんな酷い思いをさせた自分が、化け物に思えた。
残像を取り払うように目を開く。
「うん?あ…あれ。」
ふと不思議なことに気付いた。左胸が少し変だ。この違和感を何と言葉にしたらいいのか。
内部を何かで破壊されているようだ。
どうしょうもない、そのもやもやだけが無数の回線を駆け巡っている。
その時だ。
「泣いているの?」
この場所の自然の静けさに逆らう声が背後からした。
起き上がってハッと振り返る。見る、声がした方を。
「泣いてるの?」
驚いた。そこに、声の主がいる。
推定だが年は若そうで気品溢れる雰囲気を漂わせている。
彼女は小さく、透き通るほどのなんとも美しい白色をしている。
更に太陽光が反射し輝いて眩しい。
「な…泣いてなんかない…だって俺、人間じゃないし。」
とっさに答える。少しムキになっていた。
雲は、まだ止まることなく先を進んでいる。
「ふふふ。だって。」
足元に水がポツンと落ちた。自分に落ちてきた水に驚いたのだろうか草が揺れた。
なんだ?雨か?いや、空は晴れすぎている。
「うん?」
また一つまた一つポツンと落ちた。草の葉に当たって弾ける。
それが自分の目から流れ出ていたことに気付くまでそう時間はいらなかった。
気付いた。なんだ俺泣いているのか…と。
止まらないそいつをどうすればいいのか分からなかったが、
「空を見上げていればそのうち止まる。」と教えてくれた。
それが最初の出会いだった。
家に帰って面倒くさい検査をした後で生みの親に今日の出来事を話した。
彼は、不思議そうな顔はせず微笑んでいた。子供の成長を見守る親みたいだ。
「なんだよ。何が可笑しい。」
「先程、故障がないか拝見しましたね。どうやら…」その後、あいつの長い話が続いた。
半分は左耳から抜けていき覚えていない。彼は妙なことを言っていた。
そのことは鮮明に記憶していいる。
「無」なはずの野球ボール程の心の穴に、入るはずのない部品が住み着いている。
内部に違和感があったのは、
そのせいで俺を泣かせたのはそいつのせいなんだと話していた。
やっぱり彼は不思議そうな顔はせず微笑んでいた。
その表情を見るとこの怪異もどうでもよくなってくる。
なにもないはずの場所にどこからともなく置き去りにされたけの荷物も。
「よいしょっと。」
どうもジジ臭い。発した後に悲しくなってきた。
「かっ悲しい!?」昨日の故障のせいだろうか。
新しい言葉、いや新しい何かが俺の中に確かに組み込まれているようだ。
草の海に堂々と座る。
「よいしょっと。」と言う言葉は、生みの親の口癖なのだ。
行くところが特にない俺は、どうやらまたこの場所に来てしまったらしい。無意識に。
草原が好きだからか。はたまた…。
「こんにちは。」
急な声に驚くがその声の主がすぐにに昨日の彼女のものだと気付く。なぜかほっとする。
内部が徐々に暖かくなっていく。左胸の辺りが熱を帯びでいる。
また故障か?ショートしたのか?そんなことどうでもいいや。
「おう。」
短いであろうか。その言葉を差し出した。
太陽の光がやけに優しく、青空は広がり余計に緑が映えてみえた。




