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心に吹く風  作者: イレ
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出発点

そして、また11月12日がやってきた。


3度目のライの誕生日。それはまた、9回目のライの命日がやってきた事を知らせる。


昨年と同じようにプレゼントに何が欲しいのかと尋ねた。


そして返っててきたライの答えは唐突で、また意外なものだった。


「家族が欲しい。あんたの呼び方、名前、分からないし…お父さんって呼んでもいいか?」


ライの欲しいものは毎回私を驚かせる。


ライは、恥ずかしそうな表情を見せたが、それがすぐに満面の笑みに変わった。


その目の前で私は目を丸くし、それがすぐにライとは真逆な表情に変わっていた。


私は全くその気はないのだがそいつは、蓋を押し上げ当たり前の様に姿を現しやがた。


静かに流れ落ちる涙に訳なんて聞かなくても分かっていた。


私のありのままの感情を心に住んでいる住人達がただ示し姿を見せただけなのだから。


それらをまめるかのように、一滴だけが静かに流れ頬を伝った。


もう聞けないと思っていた"お父さん"と呼ぶ声が懐かしくて優しく胸を締め付ける。


もうすっかりライはロボットから人間へ変わていた。ただ人間と少し違うのは、


データを消去出来ることと、ON、OFFがあることだけ。ただそれだけ。






「はい…。私でよければ家族にでもなりますよ。」






ライはただ一言"良かった"と言った。


その表情、その言葉を一生忘れたくないと思わせた。


そして、ライにも忘れて欲しくないと思った。


この日をきっかけに私はきっと、ライのメモリー、


モニターを見る事も消去する事も出来なくなっているだろう。


今まで邪魔で、よそに行って欲しいと思っていたこの中の心も居ても悪くないと思った。






そして、いつもの日々が始まる。私は庭へ行くことにしよう。


今日は、雲がなく快晴の空が広がっている。


手にした錆たジョウロが太陽の光で反射して眩しい。


そろそろ新しいジョウロに買えかえよう。



今日は、夕ご飯時にライに、私の息子の話をしてやろうと思った。



ここまでたどり着くことが出来て良かったです。

ありがとうございました。

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