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魔眼の使徒  作者: vata
第二章 暗き森の魔女
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失われた記憶~希望~

更新しました!


マトリーシェの薬は順調に売れ、1ヶ月で既に5万レギオンを稼いでいた。

100億円の道のりはまだまだだがそれでも希望が見えてきた。


 森の置くの家の隣にはカミュに手伝って貰い作業用の部屋を増築した。

当然カミュも時間を見つけては手伝ってくれた。

以外に彼は飲み込みが早く教えた事を砂が水を吸収するように覚えていった。

お陰で今週納品する予定が既に準備できていたのだった。


「…ありがとうカミュ…凄く助かったわ…あしたミネバ達が来るけど…仕事がなくなっちゃった」

「いえ…でも…すみません…今からでも僕の事は白紙に戻しても…マリーには感謝してもしきれません…既に支払ったお金は一生かかってでもお返しします」


 その言葉を聴いたマトリーシェは飲みかけのカップを置くとおもむろにカミュの両頬を摘み上げた。


「?!…いひゃいでふ…」

「カミュ…もしも次にそんなこと言ったらただじゃ済まさないわよ…私は自分の意思で貴方を解放したいと思っているの…だから貴方が気に病むことではないの…わかる?」

「…ひゃい…」

「ん…よろしい」


 頷くカミュを見て満足そうにマトリーシェは彼の頬を開放した。


「…酷いです…マリー…頬が千切れるかと思いました」

「…カミュが変な事言うからよ」


 再びマトリーシェはテーブルに着くとカップを口元に当てた…

しかしながらその莫大な金額を考えればカミュの思いは最もであった。

……何も無い自分がマトリーシェにしてあげられる事は何も無い……

カミュはそれを口癖のようにそれ送り返したが…かといって彼が奴隷から開放されたとしてもその開放に費やした金額は一般の生活者が一生かかっても払える額ではない事はお互いに理解していた……


「……だったら……」


ずっとようかどうしようか考えていた……カップを奥と彼を見据えた。


「…カミュがもし…自由になって…」


もし言ってしまえばこの関係が崩れてしまいそうで……足が震えているのが判った。


「前に語ってくれた夢のように……」


彼に拒絶されることが怖くて……思わず彼から視線を外した……


「世界を旅して周ると言うなら……」


でもこの想いは止められなくて……だから勇気を振り絞った。


「……その時は…その時は私も……」


再び真っ直ぐに彼を見つめた……彼も私を見つめていた。


「…その時は…マリー貴女は僕に着いて来てくれますか?」










「それで『はい』って言っちゃったの…」

「…そうですか……」


 薬草を届けにやって来たミネルバとベオウルフはかれこれ1時間近く彼女のノロケ話を聞かされていた。

恐ろしいほどの実力を持ってはいるがその中身は年相応の乙女であった……


(…当然と言えば当然か…)


ミネバは目の前で頬を赤く染め幸せに満ち足りた笑顔の妹分を見やった……

今までの環境が普通ではなかったのだから…だから彼女が幸せになるのなら……


「確かに彼は好青年だけど……本当に信用できるのかしら?」


だからこそミネルヴァは言わずにはおれなかった。


「どういう事?」


その一言でマリーの表情に変化があった事を見逃さなかった…


「そんなに凄まないでよ…彼には何も無くても周囲がそうだとは言い切れないでしょう?例えばその商人とか黒騎士の人とか…」


元々彼らが何故、何度もネアトに近づいたのかその理由が不明確であった…確かに彼女の作る薬品はその効果は申し分ない……しかし狙いはそれだけだろうか?その背後には「魔剣王」の側近の影が見え隠れする……

それにモウカリーノはミネルヴァ達の村とも取り引きがある名の通った大商人である……だからこそもう一つの通り名が気になるのだ


『死の武器商人』


魔界全体が戦争状態にあるんんその裏で暗躍しているのが彼であると言われている。


「そんなことないもん」


マリーはすっかりへそを曲げてしまったようだ……


「勘違いしないでマリー……あなた達はお似合いだし…とっても素敵な事だと思ってる…だからこそ変な連中の思惑や陰謀なんかに巻き込まれて欲しくないの…考え過ぎかもしれないけど…今こんな時代だし…もちろん私達はいつだってあなたの味方よ…そうよね?ベオ」

「え?ああ…そうだぞ」


最近すっかり尻に敷かれ気味のベオウルフが頷いた……


「うん…ありがとうミネヴァ…そうよね…私すっかり舞い上がっちゃって…一応周囲には注意しておくわ…」

 

そう言ったマリーに対して安堵の溜息を着いたが恐らく明日にはまた忘れて舞い上がるのだろうなと思い少し自分でも探りを入れてみようかと考えるミネルヴァだった。


「…ところで…この前頼んでいたアレ…どうなった?」

「ん…ああ…一枚だけだが…どうするんだ?こんなもの」


ベオが懐から布を取り出しマリーに手渡した…彼女がそれを開くと白と黒の鱗が入っていた…ミネルヴァとベオウルフのものだった。


「どうするの?そんなもの…」

「えへへ…ちょっとね…次に来た時に見せてあげるね」


そういって無邪気な笑みを見せるのだった。








「……どうだ…アレは…」


 暗い部屋に一人の男が椅子に深く座っていた…その目の前には淡く輝く水晶があった。

 ガノッサであった…そしてその水晶にはレイヴンの姿が映し出されていた。


『はい…標的との取り引きは順調です…』

「…そうではない…アレは…あの娘なのか?」

『…間違いないでしょう…亡き奥方様に良く似ておいでです…』

「……くそう…何故今になって…どうすればいいレイヴン?!」

『ご主人様…落ち着いてください…アレは我々の事には気づいておりません…ですから逆にアレの力を利用するのです』

「?!出来るのか?」

『はい…既に餌に食いついております……』

「…カミュか……」

『はい…』


しばらくガノッサは考え込むと立ち上がり水晶に背を向けたまま呟いた。


「どうすればいい?」

『あと半年もすれば…25万…いや30万レギオン稼ぐでしょう…』

「そんなにか?!」

『ええ…彼女の作る薬は最上のモノです…戦場では大人気ですよ…』

「それで…?」

『カミュを戦場に出兵させてください』








「……居るんだろ?出て来いよ…ネアトリーシェ」


主と話し終わったレイヴンは剣の柄に手をかけると背後にそう言い放った。


「……気付いておったか…」


 空気が蠢きネアトが姿を現した。


「…ふむ…『不可視ステルス秘衣ヴェール』には自信があったのだがな…」


そう言って杖に手を添える…互いに臨戦状態であった。


「…貴様等…マトリーシェで何を企んでいる……」

「…ふふ…さあ?何の事でしょう?」


レイヴンが剣を抜いたのと同時にネアトの魔法が炸裂した。


炎精霊サラマンデル突槍ジャベリン


地面が裂け弱熱の炎の鎖を纏った槍が何本もレイヴンに殺到した。


「おお…この数は驚異的だな!」


楽しげな声でレイヴンが宙に逃げる…


「甘いわ!」


 ネアトの指の動きに合わせ炎がうねりレイヴンを追尾した。


「!流石は稀代の大魔道師!かつての西の大国を破滅に導いたのは伊達ではないな!」

「?!貴様何故それを…?!・・・貴様は何者だ!」


レイヴンは空中で有り得ない動きで体勢を整え着地した…


「目覚めろ!『ダークイーターらう者』!!」


レイヴンの刀身が一瞬輝き『闇』が溢れた……闇に覆われた空間に『炎精霊サラマンデル突槍ジャベリン』が殺到したが何も起きなかった…

それどころか何もかもが無くなっていた。


「?!これは……お前は…まさか…」

「ふふふ…再会できて嬉しいけど…お別れだよネアトリーシェ…もう僕は君には用は無い」


闇がネアトリーシェに殺到した……


『…まさか…こんな奴が……マリー!』


 闇が引いた後そこには何も残っていなかった………


「さあて…邪魔者は居なくなったし…次は君の番だよ?マトリーシェ」


レイヴンは剣を鞘に戻すと部屋を出て行った……

この日を境にネアトリーシェは忽然と姿を消したのだった。












回想の癖に長いです……

次回は月内に出来る……のか?!

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