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魔眼の使徒  作者: vata
第二章 暗き森の魔女
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失われた記憶~発覚~

 遅くなりました。

既に別な話じゃんとか言わないで・・・

この魔界には当時4つの魔王が支配する地域で構成されていた。

北の『魔竜王ヴリドラ』南の『魔皇帝ベルゼーヴ』東の『呪魔女ベラドンナ』そして西の『魔剣王ヴァルヴィナス』…それぞれの国がそれぞれを牽制しあう非常に危険な…そして重要な時代であった。

その『魔竜王』の収める北のドラゴニアン領の大都市から南下し途中で立ち寄ったキャリック村で奇跡の光景を目撃しそのまま祭りの期間中滞在してしまった…

今は予定通り国境を越え彼等の住み慣れた王都ラグナレスに無事に到着したのだった。

『魔竜王』と『魔剣王』は比較的争う事は無く戦乱の時代ではあったが国交も未だに正常であった為この様な商人同士の取引は未だに盛んであった。

 馬車の一行が城門をくぐり街の中をゆっくりと進んでいた。

その中央に位置する漆黒の馬車には二人の男が乗っていた。


「……しかし白竜様の覚醒に立ち会えるとは幸運でしたな……」


 坊主頭の中年の男はこの馬車の一行とともに同行していたこの町の商人「モウカリーノ」であった。


「えぇ…そうですね モウカリーノ殿…私は始めて『竜化』というものを見ましたよ…」


もう一人は鎧に身を包んだ威厳のある黒騎士……その手の紋章を見れば彼がこの国の『四騎士』の『剣』の一族と解る剣の紋章があった。

この国には『魔剣王』を守る4人の騎士一族がいた。

『剣』『盾』『魔』『影』の四魔貴族である。

彼はその剣の一族の有する『魔剣騎士団』の団長カエサルであった。


「しかしカエサル殿に護衛していただけるとは…このモウカリーノ鼻が高いですわい」

「いつも貴公の店には世話になっているし…魔竜王殿にも謁見できこちらも有意義な旅となりましたよ…」


 カエサルの言葉に偽りは無かった…始めは護衛などに出向くつもりは無かったのだが、このモウカリーノという男なかなかのやり手で

いくつもの有権者とのパイプを持っておりそのいくつかのおかげで『魔竜王』じきじきに繋がるパイプを築きあげたのだった。

騎士団長でありながら魔竜王と会話出来る機会を得てカエサルは満足していた。


「…それにあの者達も…」


 帰りの村で見かけた二人の魔術師…あの若さであのレベルの魔法を扱うとは……この国の『魔』の一族でもそうそうは居ないであろう。


(……一応、御館様に報告しておくか……)











「……愛こそ全て……」

「………変なスイッチが入っちまった……」


 草原に寝転がり小さな花を愛でるマトリーシェの姿を見てネアトリーシェは眩暈を覚えた。

他者の痛みを知らぬマトリーシェをミネルヴァとベオ一味ごと草原の一軒家に監禁し軍隊式に共同生活を行った。

最初こそ反発や衝突は起こったが共同で作業する事で奇妙な連帯感と一体感が子供達に出来上がった。

次第に助け合い共同作業を行い苦難を乗り越えた。

ベオウルフ達もミネルヴァを中心に連帯が生まれ彼女を敬愛するベオを中心に統率が取れ始めていた。

勿論その中にマトリーシェも居たのだが自分よりも弱い彼らとの共同生活によって保護欲から慈愛に満ちた存在になっていた。


「……悪くは無い…悪くは無いんだけど……あんたのキャラに合ってない気がする…」

「いきなり失礼ですねネアト…でもいいわ、愛情たっぷりな私は許してあげます」

「……熱でもあるのか?」

「…ホントに失礼ですね…可愛い娘が慈愛に目覚めたというのに……」


 その言葉どおりにここ数日の彼女は他人の痛みが理解できるようになっていた。


(ならばもう私の教える事など無いのかもしれない……)


世界の知識を教え、人の世の常識を教え、そして今、人としての心の在り方を学んだ。

それは全てマトリーシェがあの暗い森を出て人々の生活の中に帰る為のものであった。


(世捨て人の魔女なんざ…私一人で十分だよ……)


だから最後に教えなければいけない……魔女としての有り方を……





「『魔女』とは何だ?」

「……魔法が使える人?」

「それじゃあ「魔法使い」も「魔術師」も全部じゃないか」

「……ほうきに乗ってる?」

「…何故疑問系なんだよ…私もあんたも乗ってないだろう…」


 数日経過してそれぞれの家に帰り再びネアトリーシェは授業を再開した……

内容は今までとは異なり『魔女』についての内容が多かった。

『魔』を操りそれを人々の暮らしの『糧』とする……それがネアトの言う『魔女』であった。


「攻撃魔法でドンパチやらかすのは愚か者のする事だ……魔法の力は創世神により与えられた奇跡の力……古代人はその力に溺れ滅びの道を歩んだ……」

「…そして使徒が遣わされた……でしょ?」


 魔法学を学んだ時に呼んだ『魔法創生』の章にある古代の伝承だった。

今もこの世界の何処かに居る使徒が人々を正しい道に導いているのだという……


「ネアトが使徒だったら良かったのに……ネアトはみんなの為に薬や魔法を使っている私の憧れだよ……」

「何を急に…」


 ネアトは顔を赤くし背けた……しかしその横顔は何処か寂しそうにも見えた。


「…私にはそんな価値はないんだよ…」


その呟きはマトリーシェには届かなかった。










城の中庭に二人の男が歩いていた…一人は白い鎧に身を包んだ往年の魔剣士……『剣』の一族の当主マクガイアであった。

もう一人は同じ四魔貴族の『魔』の一族の当主、ガノッサであった。


「…そういえば先日、部下が面白い話をしていたよ…」

「ほう…どのような?」

「北のキャリックの村で親子のような魔女が居たらしいのだ…」

「そのような親子はどこにでも居るだろう?」

「まあまて…面白いのはこれからだ…その娘は竜人族の…黒竜の少年と喧嘩していたらしいのだ…それも竜化した少年と」

「…普通は死ぬだろう…」

「ところがこの少女は無詠唱で上級魔法を操りこの少年が全く手出しできないと言うのだ…」


 この話にガノッサは眉をしかめた……少年といえども竜人…しかも竜化しているとなればそれはもうドラゴンである。

その強靭な体にはなかなか魔法は通用しない…それは上級魔法とて同じ事である。


「ではその少女は『特級魔女』ということになるな……」


特級魔女とは体内魔力が著しく高く魔法の効果にもその影響が謙虚に現われる……同じ魔法を使っても特級魔女の魔法はその数倍の効果を発揮する。


「それだけじゃあ面白くもなんとも無い話だろ……その娘その竜人を殺そうとして『禁呪』を使おうとしたらしい」

「?!禁呪だと?…馬鹿な…我が一族以外にこの国にはそんな者は……」

「だろ?…これは在野に埋もれた原石かも知れないだろう?……その育ての親は何と『暗き森の魔女』らしいのだ…」

「!!」


 ガノッサは息が止まる思いだった…『暗き森』…彼の中で忘れ去られていた過去の記憶がゆっくりと浮かび上がってきた……


(まさか…まさか…そんなはずは……)


「それほどの力を持った者ならば我が王に力を貸して貰おうと思うのだが……」

「……よかろう…私が使者を送ろう」

「お前ならそう言うと思ったよ…ではこの件は貴殿に任せるとしよう」


そういってマクガイアは馬車に乗り込んでいった……

同じくガノッサは馬車に乗り込み頭を抱えた。


「…落ち着け…落ち着け…まだあの赤子であると決まった訳ではない…」


 ガノッサは深呼吸をするとドアを2度叩いた。


「…お呼びですか?」


 馬車のそばには黒づくめの男が控えていた…


「影よ…今の話は本当か?!」

「…はい…二人の魔女…竜人の娘…確認しております…」


 その言葉にガノッサは拳をドアに叩きつけた。


「…如何いたしましょう?…その魔女を始末いたしますか?」

「…いや…しばらく様子を見よう……まずはその商人に接触するとしよう」


 ガノッサの瞳に邪悪な光が再び宿った。














 仕事が多忙を極めています。

次回も遅めですが頑張ります。

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