挑む者達5
マヤの予言で人類滅亡しなかったので更新しました(笑)
「少し休憩にしよう」
そのカイルの一言に一同は救われた気持になった。
つい先程、この50階の守護者を撃破し最上階に続く扉を見つけたが何故か時限式の封印がされていた。
扉の上には数字が揺らめきながら浮かび上がり残り一時間を刻んでいた……
約束の夜明けまではまだ時間が有り、これはマトリーシェの都合によるものだと判断した。
(罠か何かは知らないが……待てと言うなら有効に待たせて貰おう)
そう解釈し先程の戦闘で荒れた室内に適度な場所を確保すると氷壁や氷床を石化させ簡単に休めるスペースを作った。
クリムト一行の荷物の中に回復アイテムや食料も多数所持されておりいくつかを分けて貰った……
魔界ではゲートが閉じ始めた為、十分な休息を取る事が出来無かった……魔素を取り込み回復したカイルを除いて。
そのまま彼は怒涛の勢いで最上階を目指し突き進み、気付けば50階を制覇したのだった。
貰った固形燃料に火を起こしそれを中心に円陣を組む……カイルの隣には誰が座るか女達の間で一悶着あったが
イリュとルミナスがその権利を得たらしい。
やや不満げな顔をしながらも彼の正面に座った伊織がカイルに切り出した。
「あの白竜……良かったのか?」
「ん?あぁ……」
ドラゴンハートを使用した結果……翼竜の存在は消滅し新たな存在に進化した。
「白竜」………あの翼竜と融合したドラゴンハートはその構造を作り替え新たな生命として生まれ変わらせた
しかし先を急ぐ彼らにとってその白龍を連れて行く訳にもいかず頭を悩ませていたところ
1人の隻腕の男性が名乗り出た……彼の名はヘドヴィグといった。
「お前さんがこいつを倒したのか?」
「なんとかな…」
「こいつは強かっただろう?」
「ああ…強かったよ…」
それを聞くと男は白竜に向かい話しかけた………
「良かったな……やっと出会えたのだな……」
安らかな寝息を立てる白竜をしばし見つめながらカイルの話を聞いていたヘドウィグは意を決した様にこう言った。
「こいつはひとまず………俺があずかろう」
「まぁ…悪そうな人じゃないし……あの人もあの翼竜に対して何か思い入れがあったんだろう」
「ふぅーん」
「しかしその魔女はひどいやつっすね動物虐待じゃないんですか…」
鉄平の言葉にキースが同意した……あまり知られては居ないが二人とも動物好きである事はマードックだけが知っていた。
「確かにそうですが……彼女が生きた時代はそれが当たり前だったのです」
「当たり前といっても限度があるだろう…人間の世界でも動物の遺伝子実験はご法度だぜ?」
「それは人間界のお話でしょう?魔界では力なき者は死に強い者が生き延びる……生きる為には何だって利用する…それが魔界なのです……彼女の方法もまたその一つなのです」
ネルの言葉には重みがあった……それが魔界のルールなのだと。
それを聞いたキースと鉄平も反論しなかった……
「でも結局やっていたことが悪いから……殺されたんだろう?その魔女は」
伊織の言葉にネルは苦い顔をする……そのまま皆沈黙する。
先程から沈黙を守っていたルミナスが口を開いた。
「……今までの話の流れからするとそれは間違いではない……人間界の常識でもってしても彼女のしていた事は『悪』だ……勿論魔界においてもいくら生きる為とは言え限度がある……
お前達にも先程聞かせた御伽噺を聞いて魔女が『悪』と判断しただろう?『強い魔女』が『弱い者達』を虐げ、やがて団結した者達に敗れる……確かにそうだ…そんな話だからな……でも根本的なことが間違っていたとしたら?話は全く別の内容になってくる…」
「……根本的って…あの御伽噺のか?」
伊織の言葉にルミナスが頷く…
「あの物語が嘘だとしたら……何者かによって捻じ曲げられた事実だとしたら……それを信じる事は出来るか?」
「……難しいだろうな…」
「でも…誰がそれを証明するんだよ?大昔の話なんだろ?」
「ここより北のドラゴンニアンの国にある村がある…そこに住む1人の老婆は長寿な古代竜神族で1300年生きている……マトリーシェと交友があった」
「……話を聞いたのか」
カイルの問いにルミナスは頷いた…
「教えてくれ……いったい何があったんだ…」
しばらく沈黙の後にルミナスの語り始めた
「これは本来歴史の間に埋もれるべき真実……語る事を許されない魔界の黒い歴史…
でもこれは1人の魔女の悲しい悲しい真実の物語」
ルミナスが手のひらを上に向けると眩い光を放つ球体が現われた。
「これは彼女の『記憶の球体』……これより我らは彼女になり記憶の追体験を行うのだ!」
ルミナスの宣誓にも似た言葉と共に周囲が光に包まれた……
次回は年明けの予定です
皆様 メリークリスマス
そして良いお年を………