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魔眼の使徒  作者: vata
第一章 始まりの詩
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ハジマリノトキ4

………終わった………


 午後の特別施設においての実技演習が終わった…

いや…色んな意味で終わった……………特別施設は各クラス棟に隣接して建てられている。

魔術 戦闘技術の実技演習に使用される競技施設のような物だ。内部は空間魔法により普通の体育祭サイズから 国一個分のサイズに変更可能だ。

 

授業内容はバスケットから模擬戦闘まで幅広く利用できる。

今回の授業ではイングリッドを中心に半径100メートルの荒野を設定した。

内部の設定も平野 市街地 森林などあらゆる実在する風景を再現できる模倣結界コピーワールドが使用され、更には激しい戦闘にも耐えられる様に最大最強の多重結界「十二使徒マジェスタの魔鏡」がかけられている。

この結界は合わせ鏡の様に結界が結界を写し無限に増え続ける為

破ることは非常に困難と言われている。

当然それは外からの衝撃ではなく内側からの衝撃に対しての話である。


「今からお前達は各属性初級魔法の「防御シールド」を展開し私の攻撃魔法から時間内逃げ続けろ」


……はい?

リングの通信機能からそう言い終わるや否やイングリッドは両手を広げ無詠唱で「魔弾マジックバレット」を無差別に打ち出した。

魔弾マジックバレット』とは魔力の塊を無数に作り出し高速で打ち出す銃弾の様な魔法だ。

この場合授業なので殺傷能力は皆無でゴム球の様な感触……殺傷能力は極めて低いものだと思う。


「うぎゃ!!足が!!」


……だと思う……


「ああ!!私の腕があああああ!」


……だと思う……そう思いたい!!


瞬時に阿鼻叫喚の地獄絵図と化す。


 紫音は咄嗟にリングをはめた手をかざし 防衛機能 「障壁シールド」を展開させた。

魔眼を持つキャリアならばその属性防御魔法が使えるのだが 無属性のホルダーは基本魔法が使えない。

よって内包魔力を魔導リングにより増幅させ リングの内臓基本魔法を行使させている。

何とか初撃を防いだものの 次々と魔弾が降り注ぐ中 既に生徒の半数以上がシールドを破られ魔弾の効果により地面にひれ伏していた。

………今回の魔弾の効果は先生のオリジナルスペル「特殊麻痺パラライズ‐ひれ伏せ愚民共!」の様だ……イングリッドならではのド‐S魔法の一つである。


「貴様達は今まで何を聞いていたのだ?シールドは持続させてこそ意味のある魔法だ。…己の魔力を安定させて供給する事でその強度を維持できるのだぞ?シールドは一度発動すれば魔力を供給し続ける限りは効果が持続する、敵の初撃を防いだ時こそ最大の好機なのだ。貴様達には徹底的にシールドの魔法を強化してもらうぞ!無能な貴様達でもそれくらいなら出来るだろう?ではゆくぞ!あははははは」


再び魔弾の数が増えた 紫音はリングのある手を突きだし、只耐えるしかなかった。ふと 隣を見るとイリュが平然とした顔でこちらに向かってきた。


「……全くやり過ぎだってーの」


イリュの周りには薄い炎の幕が漂っていた…これは彼女が所有する技能スキルの一つ「衣障壁コートシールド」と呼ばれる 上級者が無意識に纏う防御障壁だ。

炎がまるで生き物の様にイリュに迫る魔弾を絡めとり燃やし尽くす。

平常時から術者に害なす存在に対しては自動で発動する。


「……紫音…防ぐってイメージしちゃ駄目だよ、硬い盾をイメージするんだよ…」


暫く私の様子を見ていたイリュがそう言った。

ふむふむ…確かに今の私は防ぐ事を考えていた。……盾か…昔映画で見た中世の騎士の盾をイメージしてみた。

……気持ち防ぐ事に負担を感じなくなった…なるほど流石は魔術上級者だけあって適切な指摘だな…と感心してみる。

そう思ったところで 後ろがにわかに騒がしい事に気付いた。


「わはは 上手いな!カイル!こらセンセもびっくりや!」


 見れば3人の男子生徒が一人の男子生徒にちょっかいをかけているようだ。

関西弁のややガラの悪い茶髪の生徒がボスっぽい。

確か……西園寺龍彦さいおんじ たつひこ有力な名家の三男だと聞く…見れば彼の周りにも風が渦巻いている……

イリュと違うところは彼がリングのついた手をかざしている事……意識的に障壁を展開している点だ。

……それなりに力はあるのに家庭での境遇に我慢できず、ただむやみに力を振りかざすだけの愚か者……

とは イリュの言葉だ。

後の二人は取り巻きの様だ。(トリーとマキー)と呼ばれている……いやいや 適当に言ってるわけじゃないよ? 服部君トリー槙村君マキーらしい……まぁモブっぽいから解説はいいや。

この3人は先生の隙を見ては 後ろの銀髪の生徒……カイル・アルヴァレルに魔弾を放っていた。彼は必死にそれをかわしていた。


「相変わらず逃げるのだけは天才的やな!お前才能あるで!立派なピエロになれるで!」


 西園寺の言葉に取り巻きが笑う……嫌だな……紫音は顔をしかめ露骨に嫌悪感を表した。

イリュも同じような顔をしていた……イリュの性格ならファイヤボールの1発くらいぶち込むかと思っていたが意外にもそれ以上は何もしなかった。

……救えるだけの力が在りながら見ないフリをするというのだろうか?……親友と思っていたがイリュこの行為に紫音の心はざわついた……しかし、今イリュに期待して自分で何もしようとしない自分こそが一番卑怯な人間だと理解してしまった。


「…私に幻滅した?」

「えっ?そんな事は…」


彼女の的確な問いかけに一瞬心臓が止まるかと思った。

本当に心を読まれているのでは無いかと不安になった。

彼女に対する今のこの黒い感情を悟られたくないと必死に願う自分がいる居た、


「いつでも止めたい気持ちは有るんだけどね…でも私にはその権利が無いから」

「…?そうなんだ…あの…なんかごめん」

「?なんで紫音が謝るのさ」


権利とかよく理解出来ない単語が出てきたが、少なくとも彼女にあの行為を見て見ぬ振りをする気が無いとわかっただけでも安堵感に包まれた…と同時に

軽い自己嫌悪に陥りつつも 紫音は勇気を出して彼らに声をかけた。


「ちょっとー!!」

 その瞬間、西園寺達の障壁が土煙と共に消し飛んだ……消えたのでは無い、強制的に何かの力によって毟り取られたのだ!

紫音は咄嗟に顔を背けた……まずい……やってしまった!!

私は瞬時に目を閉じて顔を背ける…今この状態で誰かに見られるのは不味い……


「くおらあああああああ!!!そこの無能共!」


イングリッドがこちらに気付き集中して魔弾を打ち込んできた……それは4人の居た場所に魔弾が殺到する。

その瞬間に妙な感覚に囚われた……

おそるおそる目を開ける……時間がゆっくり流れている?

空中を魔弾がゆっくりと後方に流れてゆく……

【時間停滞】の呪文だろうか?闇属性なので先生の仕業かと思ったが見る限り先生も停滞している。

勿論自分の動きも停滞していた……なのに思考だけは正常に働いていた……私の思考が加速している?…周囲を観察して推測する限りこの演習場全てが停滞している。

恐ろしいほどの高密度な魔法が行使されていた。

次の瞬間土煙の中から凄いスピードで誰かが飛び出し空中の魔弾をかわしながら移動していた。

【加速】だろうか?精霊の働きが見受けられないから光属性の【光速】だろうか?……ん?あれあれ?この組み合わせは何かおかしくないかい?

疑問が湧き上がった所に人の気配がした。左側から覗き込まれた。

 白銀の髪その顔はカイル・アルヴァレルだった。

しかしいつもの彼とは違う箇所が一つだけ…………眼だ。

彼はその白銀の髪に似合う金の目をしていた。しかし今の彼の眼は白目と黒目が逆転した異質な眼をしていた。



「へえ……この状況で動けるんだ……と言っても思考だけみたいだね…でも凄いよ」


そう言い終る前に右側に移動していた。

日頃の彼とは殆ど会話すらした事はないがこんなに饒舌に話す様な印象は無かった…紫音が転校してから彼が誰かと話をしていた姿どころか教室にいる姿を見ることすら希であった。


「……助けてくれてありがとう…さっきのアレ…君がやったんでしょ?…でも僕には関わらない方がいい…5秒後に時間は動き出す、その時君はこの事を覚えていない……」


彼の気配が遠ざかる……同じく今この瞬間の記憶が白く……白く………………


「ぐわあああああ!この格好はあかん!!!!!」


西園寺の悲鳴で紫音は我にかえった。

先生の魔弾を受けた3人はM字開脚の様なポーズになっていた。

くっ!!少し笑えた!隣のイリュも笑いを堪えている様だった。

……あれ?何か大事なことを……?まぁいいか……


時間が来たようで先生はもう構えを解いていた。

……終わった……安堵感からその場にへなへなと座り込んでしまった。

私の後ろでイリュは腰に手をあてて反対側を見ていた……そこには白銀の髪の生徒が居た……カイルだ……ん?その姿に何処か違和感を覚えた……

何故他にも生徒が居るのに彼を見ていたなどど言えるのだろうか?私はそう思い込んでいるだけ。見ているのはイリュではない……私が見ているのだ……なんで?


「……浅かったわね……」

「えっ?何が?」

「……魔弾は防ぐよりもかわす方が遥かに難易度が高いの……まぁ覚えておいて……」

「????」


イリュの言っている内容が良く理解できなかった……とゆうか意味不明? でもそれは重要な事だと感じた。

カイル・アルヴァレル……何故彼がこんなに気になるのだろうか?






紫音は気付いていなかった。 この時 既に大きな運命の歯車に自分が巻き込まれていた事を。





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