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魔眼の使徒  作者: vata
第二章 暗き森の魔女
87/240

続・女の戦い

 遅くなりました。

誤字修正と共に猫の存在を忘れてました。

「すまん…ラムゼス…失敗した………だからすまんって言っただろ?」


カイル様は服装を着替えながら電話の相手に状況を説明されていました…

ルミナス様を始め皆様は服を着るのも忘れその場に放心されておいででした……おいたわしや……



「お前たちいつまでそんな格好で……いや、こっちの話だ…解った…これから向かう…あぁ?理由?実験失敗しましたとかなんとか言っとけよ」


 カイル様が電話を切るタイミングでルミナス様が身体を起こされました。


「……だって…カイル様…もう少しで…私が手当てをして差し上げれるとこでしたのに……」


 余程悔しかったのか目を赤くされ、まだその瞳は潤んでおいででした。


「あぁ……そうかすまん…何か皆楽しそうだったから…普段も公務で忙しいもんな……取り合えず服を着ような?」

「………」


 恐らくカイル様は彼女達の戦いが自分の『手当て』の順番争いだとは思っておられない様です……

それどころかルミナス様は日頃の多忙な状況から離れ、皆で居ることを楽しんでおられる様に解釈されているような気がします。


「あと…あと一つだったのですよ?解りますか?私の無念さが!」

「わ、わかった…わかったから…服を……」

「いいえ!カイル様は理解しておられません!私が…私がこの日(カイル様に会う事)をどんなに待ち望んでいたことか!」


(………そうか…そんなに人間界に来るのが楽しみだったのか……アイリスにも会いたかっただろうに……アネモネやイリットとも久しぶりに再会したのだし……積もる話もあるだろう……ルミナスの立場を考えれば……)


 等とカイル様はお考えになっておられるのでしょうが…私はこの様なルミナス様の姿を見たことがありません……

普段のルミナス様を知る者は今の少女の様な態度をとる姿は想像すら出来ないでしょう……

いや、むしろあの普段のお姿が仮でこちらが本性…というべきなのでしょうか……

そんなネルの冷静な分析がほぼ正解な中、二人の会話は続く………


「……そうだな…すまん…しかし今は緊急を要する時だ……(話の)続きはまた後日ゆっくりと……だからまず服を……」

「……え?……(手当ての)続きを?……」

「ああ……(話相手ぐらいなら)一晩中でも付き合ってやるよ…」

「つっつつつ…突き合う!?」

「?……ああ…付き合うよ?」


……なにやらお互いに盛大に勘違いが生まれている様なのですが……面白そうなので放置しておきましょう。

ルミナス様は顔を赤く染めてキャーキャーと喜び、他の方はその間違いを正すか否か複雑そうな顔つきで見ていました。

イングリッド様もアネモネ様も声をかけようとしては普段では絶対に見ることの出来ないこの姿にギャップを感じながらも諦めたようです。


「……ところで猫はどうした?」

「あぁ……確かこっちのベッドに……」


 カイルの問いにアネモネが答えた…

見るといつぞやの紫音のように後ろ手に縛られた猫がむうむうと唸っていた。

アネモネが縄を外すと一目散に部屋の隅に移動し彼女を睨み付けた。


「こ…このおんにゃ…何て事をするのにゃ! こんなことしてる場合じゃないのにゃ!」

「まぁ待て」

「紫音の所に行くって言うから……取り合えず捕獲しといたんだけど」


 悪びれる風でもなくアネモネがそう言った……

その隙に部屋を出て行こうとする猫音の襟首をカイルが掴み上げ持ち上げた。


「……にゃふぅ……」


 先程まで荒ぶれていたのが借りてきた猫のようにおとなしくなった。


「……お前紫音の場所が分かるのか?」


 猫音は刻々と頷く……使い魔としての契約を結んだ事により、その魔力の繋がりから互いの位置が把握できるらしい……

時計を見るとあれから約4時間が経過していた……外は既に日が落ちていた。

ラムゼスによると生徒達は全員帰宅し、自宅待機の状態らしい……

今周囲は学園特別機動隊により立ち入りが禁止されている……そしてラムゼスの手配した特別チームを編成し中に突入するらしい。

今からチームと合流し一緒に中に入る事にした。


「よし、お前も付いて来い」

「…あ…当たり前だにゃ!」

「…その姿だと何かと都合悪いから…いつもの様に猫になれ」


 その言葉に猫音の姿は縮みどこにでも居る様な黒猫になった……違うのはその尾が二股に分かれている事だろうか。


『気付いていたのにゃ…』

「当然だ…そんな怪しい猫は居ないからな…」


その言葉に猫音はにゃーにゃーと抗議の声を上げる。


(……さて…あれから4時間か……)


窓の外に視線を向ける…そこにはライトに照らされた巨大な氷塔が聳え立っていた。

マトリーシェの言葉を信じるなら紫音の無事は夜明けまでは保障される……マトリーシェが言葉を守るならば……だが。

再び視線を室内に戻す……


(どんだけじゃんけん盛り上がってたんだよ………まぁ女が集まると話が長いって言うしな……)


 のそのそと衣服を身に着け始めた女達を見て、4時間もよくも飽きもせず出来た物だと感心した……魔法熱で意識の朦朧としていた彼はそれが自身の『手当て』を巡る争いだとは思いもしなかった。

理由を知っているアーガイルだが彼もまたネル同様に何も言わないほうが今後の展開が面白そうだと無言を決め込んだ。

 魔空間から新しい服を取り出し着替えるカイルをルミナスは何処かうっとりとした表情で見つめていた。


「…?…ルミナス…準備はいいのか?」

「……はい…お腹一杯です……!いっいえ…直に……ネル!」

「……どうぞ」


 呼ばれたネルは新たな着替えを準備しルミナスの着替えを手伝った……

その最中もルミナスの視線はカイルに釘付けである…


(……確定ですね…ルシリア様…ルミナス様のこの正体をご存知なのだろうか?)

 

 長く仕えるネルですらルミナスの本性とも呼べる素顔を今日始めて知ったのだ……ご姉妹の二人はどうであろうか?少なくともアネモネ様の衝撃を受けたような様子を見る限りでは私と同様に今日始めて御覧になったのでしょう……


(御館様など……さぞ驚かれるでしょう………)


 普段の『智将』と呼ばれる彼女の面影は最早どこにも見当たらなかった……そこには恋に焦がれる一人の乙女が居るだけであった。








 イングリッドはカイルに近づいた…


「……私はラムゼス様からの別命で共には行けぬ……すまん」

「…いいよ…ありがとう」

「礼などいらん…教師として当然だ…そういえば教師としてこの前田崎の事も放っては置けんな…私の可愛い教え子である前田崎がいかに緊急であったとはいえこの様な極悪非道ともとれる陵辱の果てに清らかな純潔を散らさねばならなかったのか……考えるだけで無念だ…胸が張り裂けそうになるが……出来る事なら代わってやりたいものだ…いやむしろ代わってやりたかった!はっきり言えばヤリたかった!」

「……教師としてその発言はどうなんだよ……まぁ彼女には悪いと思ってるよ……」


 普段彼が暴走寸前で相手をするイリュやイングリッドは魔族である……当然その身体は魔力を吸収し己の力へと変換できるのだ……

しかし律子はハーフとはいえほぼ人間と言って良い……言葉通りに足腰立たなくされたのだった。


「……冗談だ……こちらの事は気にせずに…アイリスの事は頼む」


そう言って彼の肩に加護の紋章を描く。

彼女の本心を言えば最後まで付き従って行きたかった……しかし彼女の立場上学園の命令を無視する事は好ましくなかった……ましてやそうしてまで同行しようとしてもカイルが首を縦に振らないだろう。


「しかし……良いのか?」

「……何がだ?」


その視線の先にはルミナス……


「…いや…その…」

「あぁ…落ち着いたら皆ゆっくりするのも良いだろう?ルミナスも仕事の都合はどうにか出来るだろうし……アリ姉には俺が話をしておくから……勿論イリットも参加してくれ」

「…そうではなくてルミナスは……いや…何でもない」


ルミナスは盛大な勘違いをしていると感じていたが…カイル自身も彼女の想いには気付いていない様子だった。


(ルミナス……可哀想に)






イングリッドと入れ替わりアネモネがやってきた……律子の様子を見ていたのだがその様子では問

題は無いらしい………たぶん。


「今夜はここで休ませるよ……ご家族にも連絡はしておいた………しかし一体何をどうやったら……」


先ほどまで看病していた律子の眠るベッドを見る。


「体内に注がれた魔力の量が尋常ではないし安定もしていない……これはまさに悪魔の仕業としか言い様が無いわね」

「…………」


 先ほども似たようなセリフを聞いた気がした………何故だろう?

アネモネも此処に残る事にした……学園の指示と言うことも有るが、彼女自身同行しても無駄だと判断した。

彼女は自分が腕の立つ戦士だと自覚はあるが自分よりも格上の姉やイリューシャが苦戦する相手に自分はかえって足手まといになる………そう判断したのだった


「律子の事は任せておいて……それに……次も手当てが必要だろうから…今度は私が準備をしておきますね」

「……………」


 頬を赤らめとんでもない事を言い放ったがアネモネにイリットとイリュから鋭い視線が向けられたがそれも含めて全てを無視することにした。


「カイル様……お待たせしました」

「……あぁ…ルミナス…ではすぐに出ぱぁ?!」


 着替えを終えたルミナスとネルがやってきた………その姿にカイルは絶句した。


「……あの……似合いませんか?」

「……ルミナス様…カイル様はあまりのお美しさにお言葉も無いご様子……大丈夫でございます」


 彼と同行するルミナスとネル……ネルは相変わらずのメイド服だがルミナスは………

その場に居たイリュを始めイングリッドや妹であるアネモネすら思考が停止してしまった。


「カイル様の所に行くなら是非持って行けと……お母様が……」


見事な純白のドレスであった……それはもう場違いな位に………もともと容姿の整ったルミナスを更に引き立てるその衣装は普通の生地を使用した物では無いと素人目にも判断できる程の逸品であった。


「……ルミナス…お前それ…」

「はい…母上が一族の女性が勝負を決する時に着用する『勝負服』だと渡してくれました……あの魔女と決着をつけます」


『それ……勝負の意味違うから』


 その場の全員の心の叫びが1つになった瞬間であった。


(奥様……絶対に分かってやっていますね……)


 ネルの心の中の疑問は確信へと変わるのであった……ここで彼女の中に疑問が浮かび上がる。


『…その後はあの娘の手助けをして頂戴』


奥様のあの言葉はルミナス様の恋愛成就に尽力せよとの事であろうか?

そもそも内包魔力からしてルミナス様に及ばない私が戦闘面での手助けなど良く考えれば在り得ない事だった。





 結局説得の末、普段の服装に着替えたルミナス遅れて合流地点急いだ……

本人は納得がいかない様で何かぶつぶつと言っていたがだったがこの際聞こえない事にしよう。

猫音を掴み上げ服の内ポケットに押し込んだ。


『…扱いが雑なのにゃ』

「…うるさい…お前はそこでおとなしく紫音の気配を探れ」

「カイル…」


 イリュが隣に並ぶとそう問いかけてきた……その表情を見る限り真面目な内容らしい。


「何だ…?」

「大丈夫なのか?何か策でも?」


 その視線からは紫音を案ずる事が良く理解できた……イリューシャにしてはなにかと彼女に肩入れする傾向があるな……


(隠れ姫の影響なのか?)


 いままで自分以外に興味を示さなかったイリューシャがここまで関わる事は普通ではないことである。


「ああ一応な…そのためにはまずは紫音を助け出さないと……お前のリミットを外すかもしれん……大丈夫そうか?」

「正直わかんない…しかし耐えてみせる」


会話が終わると同時に校舎から出るとグラウンドには数多くの警官や警備兵の姿が見えた。

カイルが警備兵に何かをつぶやくと無線機を通じて何かをやり取りした後、ロープの中招かれた……案内してくれるようだ。

暫く歩いて行くと昼間に戦闘の行われた練習場後にたどり着いた……しかし元の姿は無く巨大な氷塔の入り口になっているだけであった。


「隊長!お連れしました」


その声に集合場所にいた4人組が反応する。


「待ちわびたぞ私が隊長のマードッ…「おせーよ!テメェらいつまで待たせ…あぁっー!てってめぇは!!」……」


 屈強な男が自己紹介と共に近付くのを遮り飛び出した人物はカイルの姿を見て絶句した。


「…な…なんでお前が……」

「…また会ったね…伊織さん」

「ば…馬鹿野郎!べ…別にこちらは会いたくもなかったぜ……」


 彼に名前を呼ばれ赤面するのを自覚した伊織はそう暴言を吐いて背を向けた………


「……誰です?」

「……誰でしょう?」

「……助兵衛ですねカイル様は」

『……紫音には手をだすにゃよ』


 後ろの女性陣+1匹から感情の感じられないコメントが容赦なくぶつけられる………

誤解の無いように説明をしたがその視線は納得をした者の視線ではなかった。

見れば伊織もむこうでキースと鉄平にからかわれて今まさにホルスターから銃を抜こうとする瞬間であった。


(本来なら……紫音とアイリスを救いに颯爽と向う場面なんだが………)


 内心溜息をつきながら彼にわいわいと言い寄る女性達を見る……


「では……行こうか……相手は伝説の魔女だ……気を引き締めてかかれよ…我々が先行する…カイル…君達は後から付いて来てくれ」


 マードックの言葉にカイルは救われた気がした……彼の号令にキース達は周囲を警戒し、内部に進んで行く……


(もう…あんただけが頼りだよ…マードック)



 心でそう呟き、女性達を宥めて彼らの後に続くのだった。









 サブタイトルに悩みました

カタカナ表記にこだわっていた筈がいつの間にか……(笑)

次回は出来るだけ早めに頑張ります

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