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10/4 今後の展開に必要な部分をチョイ足し
遅くなりました。
フリック入力はなかなか時間がかかりますね。
頬を鋭い氷が掠めた…先ほどよりも速度も強度も桁外れに上昇している。
基本氷雪系魔法なので対抗する為に火炎系魔法で応戦するが………
「追尾火炎球!」
右手から放たれた火球は7発……それぞれが違う軌道で軌跡を描きながらアイリスに肉薄する……
もちろん攻撃する為のものではなく隙を作り出す為の物である為、威力はさほど無いがそれでも直撃すれば直ぐには行動はできないだろう。
しかしそんな考えも虚しく、マトリーシェの周囲に炎の壁が巻き起こり火球は吸収されてしまう……
その壁が蠢き炎の竜に姿を変えてカイルに向けて咆哮する……そのまま牙をむき襲い掛かった。
「!!…『超水圧剣!』」
その手に超圧力により圧縮された水の剣が現れる…竜の口が閉じられ、その脇をすり抜けるようにその剣を振るった。
その巨体から水蒸気が立ちこめ細切れとなって霧散した……その霧の中を風の手裏剣が突如現れカイルの目前に迫った。
その手のブレードで真っ二つに切り裂いたが……同時に剣も水飛沫となって消え去った……
(『風魔手裏剣』…同じように高圧圧縮された風が周囲を高速回転していたが、中は逆方向に回転していた……こんなもの食らったらと思うとゾッとするな……)
アーガイルの呟きに激しく同意した……この女本気で俺を殺りに来てるな……
火 氷 風 この3種の『三属性魔法』の力が絶妙に作用し、カイルは近付く事さえも出来ないでいた。
近付き、無力化させることは簡単だが、その際のアイリスの生命の保証は出来ない。
あくまでも『無傷』で無力化させないと意味が無いのだ。
勿論マトリーシェもその事は十分承知している……承知しているからこそ大胆に攻めてくるのだ……どんなに攻撃されようと致命傷にはならない……と。
「……参ったな…」
イングリッドが目の前に立ちはだかる氷の壁を忌々しげに見上げた……
先程からイリューシャが火炎系の魔法をぶつけているが直ぐに再生してしまう……十二使徒の魔鏡に似た性質を持つ多重防御結界
『零温魔氷の氷壁』である。
「………クソがっ!アイリス如きの癖にこんな頑丈な結界を張りやがって……」
イリューシャのストレスもかなりのものだった……確かにこの結界の向こうからはカイルとアイリス(マトリーシェ)の魔力波動がひしひしと伝わってくる………それも戦闘中だ。
一刻も早く辿り着きたい一心でイリューシャは先ほどから強力な魔法を十数発繰り出していた………
「……ふ……ふふふ……ここまで頑丈ならアレだね……禁呪級のやつを見舞ってもいいのかな?『核爆発』とか『彗星直撃召喚』辺りが妥当かな?………ふふふ……待っててね…カイル!」
禁呪の単語を聞いてイングリッドは慌ててイリューシャを背後から取り押さえた。
「ば…馬鹿者!貴様!都市ごと破壊する気かっ!?」
「離せ!早くしないとカイルがっ!」
「………何をじゃれあって居るのだ……」
そんな二人の前にルミナス一行が姿を見せた…予想していない遭遇に一瞬二人はフリーズするがなんとかイングリッドはその人物に気付き応対する。
「…ルミナス様……アネモネ……前田崎?…宮薗まで…!!」
ルミナスがこちらに来ている事は聞いていたが……何故避難させた筈の生徒が此処に?
無意識に表情が厳しいものに変わった……それに気付いた二人は非常にばつの悪そうな顔をしていた……
「…許せ…私が連れて来たのだ」
それに気付いたルミナスが助け舟を出す……どうせこの二人が抜け出した所に出会ったのだろうと憶測する……
しかしこう言われてはこれ以上は追求することも出来ない………しかしながらこの二人の能力も侮れない……
二人とも魔道対抗戦のメンバーにと考えていたのだから……
「……それよりも…厄介だな…『零温魔氷の氷壁』か………」
ルミナスがそっとその氷壁に手をかざす……それを見たアネモネが皆に離れるように指示する…
「重力砲撃」
ルミナスの手に魔方陣が浮かび、その場に超重力の衝撃が襲い掛かった……氷壁は削り取られもうじき貫通してしまいそうな状態になったが
氷壁はそれを上回る速度で再凍結し再び元の姿に復元され様としていた………それを見てルミナスは眉をひそめる……
「再詠唱」
再び魔方陣が浮かび上がり「重力砲撃」が放たれた……同一魔法の重ねがけである。
その効果は相乗され復元した氷壁を再び簡単に削り取っってゆく……やがて一枚の巨大な障壁に辿り着いた……
その向こうには満身創痍で片膝を突いたカイルとその彼を値踏みするように優雅に歩くアイリスの姿だった。
彼女はこちらに気付くと不適な笑みを浮かべた……その凶悪な笑顔がアイリスで無い事を表していた。
「!!」
一同に衝撃が走った、イリュはその場を飛び出しその両腕に炎の爪を顕現させた。
「灼熱の双剣」
障壁に向かい速攻とも言うべき一撃を次々に放つ……ルミナスの魔法とイリューシャの攻撃に障壁が悲鳴にも近い衝撃を放った……
障壁に亀裂が走り粉砕するかと思えたその瞬間律子の頭部の髪がぴょこんと跳ね上がった……彼女の魔眼『黒の教典』の
特殊能力……『第六感』が危険を告げていた。
そして律子が叫んだ。
「ルミ姉さん!イリュ!!逃げて!」
障壁の亀裂から急激に噴出した冷気の渦はその形を変え巨大な腕となって二人に迫った……
結界が破壊されると同時に発動する「罠呪文」である。
その声に二人は勿論皆、反応できなかった……唯一、ネルを除いては。
「業火の鳥篭」
二人の周囲に火柱が立ち昇り迫りくる氷の腕を蒸発させた……しかしその勢いは止まらず、轟々と蒸気を周囲に撒き散らした。
その蒸気は高温を保ったまま紫音達にも襲い掛かった。
「水泡の守護布」
イングリッドの魔法が寸前の所で全員を包み込んだ………見れば結界は再び凍結し元の氷壁に姿を戻していた……
それを見たイリュが唇をかみ締めた……
「ちくしょう!」
イリュがその拳で氷壁を殴りつけた……何度も…何度も…やがてその拳に鮮血が混じった。
慌てて紫音はその手を止める……『無理は駄目よ』と諭しながらその手の傷を癒した……
「…しかしホント厄介だなぁ……」
「…なにを呑気に言っているのです…先ほどのアレを見たでしょう?!一刻も早く突入しなければ……」
「……落ち着きましょう」
普段冷静なルミナスが思いのほか取り乱していることにネル、アネモネ、イングリッドは驚いた……
確かにカイルの状況は良いとは言えないが……そう簡単にやられる様な男では無い事も事実だ。
(……しかしこの慌て様………)
(これではまるで………)
(え?そうなの?この女性も彼を?)
同じ女同士の勘と言うか……その場の全員が何となくルミナスの心中を察してしまった。
余裕が無いのは今まで彼との接点が少なかった為だろうか?
(これって……よく聞くモテキとかって奴なのかな?)
紫音はそんな事を考えながら氷壁に手を触れて………そのまま前のめりに氷壁に吸い込まれた。
突然の出来事にその場の全員が動けなかった……というか今の出来事が何なのか理解すら出来なかった。
「「…………!!『結界破り』!!!」」
律子とイリュが同時に声を上げた……
………前略、お母さん……まずいです…ピンチです。
壁に寄りかかったと思ったら、そのまますり抜けて地面に盛大に転げてしまいました………いや、それはいいのです。
「……おやおや…そういえばお前のその能力を忘れていたよ……」
恐る恐る顔を起こすとアイリス?がこちらを見ていた……髪の色は違っていたけど……間違いなくアイリスだった。
普段では見ることの出来ない笑顔でこちらを見ていたけど……いつもの優しい雰囲気は無く、何処までも冷たい感情の目だった。
「あ…あはは……お邪魔みたいだね……すぐに失礼するから……」
直ぐに起き上がり背後の壁に後ずさりした……がやはりそれをすり抜ける事は無く、追い詰められた。
ゆっくりと彼女がこちらを向き直り歩いてくる……その身が纏う雰囲気に足が、手が、体が震えていた……
「…やめろ……」
カイルがふらふらと立ち上がった……アイリスは歩みを止め再びカイルに向き直る……
「まだ立ち上がれるなんて…素敵ね…でも私を殺す気で来ないと無駄なのは解ってるでしょう?それが出来ないのなら大人しくそこで見ていなさい」
再びこちらに向き直ると近づいてくる……来ないで!
怯えた視線をカイルに向ける……その眼はまだあきらめていなかった。
次の瞬間彼の姿は掻き消え、気づいた時にはアイリスの放った魔法を切り裂き彼女の襟首を掴みその拳を…………振り切れなかった。
「ふふ…ほらね?貴女にこの私を…(アイリス)を傷付ける事は出来ない……」
カイルの拳に自分の拳を重ねると天使の様な微笑でそう問いかけた……そして強烈な魔力の一撃を見舞った……
カイルの体はゆっくりと宙を舞い、地面に叩きつけられた……その表情が苦悶に歪む……
あんた…一体何度痛めつけられたの?……本当なら簡単に終わっている戦いの筈がアイリスを傷つけない様にする為にこんなに自分が傷ついて……
短い付き合いではあるが紫音はカイルの性格を理解していた…口は悪いし女癖も悪いし、自分勝手で周囲に心配ばかりかけて……
でもその心配をかけない様に影で努力もしてるし、その癖以外に思いやる気持が強くて…他人を守る為に自分が傷付く事なんか省みない…
カイル……貴方は一体……不意にカイルと目が合った……彼の口はこう告げていた……『逃げろ』…と。
「…さっきからこれの繰り返し…いい加減本当の力を見せて御覧なさいよ?それともこの娘の前では見せられない?」
再び紫音の元に近づいてくる……そこでマトリーシェは違和感に気付いた。
「……貴女はアイリスなんかじゃない」
「!?」
先ほどまで怯えて震えていたはずの紫音はもう居なかった。
「逃げろですって?はぁ?どちらかと言うとあんたが逃げなさいよね!」
何故か無性に腹がたって仕方がなかった……カイルが負けるなんて考えたくなかった……あいつは…あいつは…馬鹿でスケベで自分勝手なきのこ男だけど…
強くて、眩しくて…負けるとこなんか見せてはいけないのだ!
「魔眼発動!」
その声と同時に紫音の眼が変化する……マトリーシェはこの展開を予想していなかった……カイル以外は取るに足らないと……ましてや紫音がこの戦場に存在することすら予想していなかったのだ。
「ええぃ!『氷縛…『荊の呪縛』…!?」
マトリーシェが紫音を捕縛しようと呪文を発動するよりも早く紫音の呪文が彼女を襲った……
(無詠唱だと!?)
マトリーシェは自身の呪文を中断し影より遅い来る荊をかわし反撃に転じようとして紫音が居ない事に気付いた。
「水泡の球界」
その声は背後からした、次の瞬間には強い衝撃に弾かれ、それを受け止める柔らかい存在に包まれた。
そこは球体の結界の中だった…ゴムの様な障壁はあらゆる魔法衝撃、攻撃を吸収してしまう……
(この娘の攻撃は読めぬ!)
『隠れ姫』の特殊能力『属性限定解除』により紫音は属性の枠に囚われない……
発動時のランクににもよるが今回のように無詠唱が出来るなど上級レベルの発動はカイルやマトリーシェに匹敵すると言っても過言ではない。
ふとその球体の中央に黒い物体が現れた……『極小暗黒球』である……このタイミング……時限式かっ!?
気付いた時には『極小暗黒球』は消滅しそれに吸い込まれていた魔法が吐き出された……その魔法の名は…
『暴風球』
「!!!!!!!!」
球体の中で吹き荒れる嵐はマトリーシェを木の葉同然に振り回した……その体に傷を負わせることは無いが今の状態は『行動異常』の状態と同様の効果が現れていた。
「なめるなぁ!」
しかしマトリーシェもこのままやられてばかりではいない…この状態で「真空波」で球界を切り裂いた……
視界が回りまともには立てないが追尾の魔法で紫音の足を止めて……
そこに側面から『強風波』が襲い掛かった…地面に倒れこみこれをかわす……起き上がりそちらを睨みつけるとカイルであった……
「貴様……」
「…さっさと決めちまえ」
その言葉にはっとする…罠だ!
回避しようとしたが…少し遅かった……足元から魔方陣が花の開花のようにマトリーシェを包み込んだ……
『魔食花の抱擁』
この魔力で出来た花は魔力を食す……魔力を持つ物は捕らえられ動きを封じられてしまう……
「この…!?」
目の前に現れた紫音を見て心臓が止まりそうになった……彼女の右手には輝く十字架のエンブレム……
輝ける究極の封印術『聖十時結界』があった……
それは数千年前にあの男の手にあった物と同じ光を放っていた……
「ま…まて!いまそれを使うとアイリスも二度と出て来れなくなるぞ!」
「?何を馬鹿な……」
紫音はマトリーシェの動揺が理解できなかった…そもそもこの『聖十時結界』は一時的に相手の動きを封じるものが目的であって封印などの効果は無いのである……しかしそんな事を言われては使用することに躊躇してしまった………それが命取りとなった。
「紫音!」
カイルの声で我に返った…慌てて右手の魔法を放つが……遅かった…時間切れだ。
十字架は光となって消えマトリーシェを捕まえていた『魔食花の抱擁』も空間に溶けるように消え去った………
もはや彼女を縛るものは何も無い。
「!?ああああああああああ!」
瞬間雷撃が紫音の体を打ち据えた…魔道リングのお陰でレジストできたが堪らずその場に崩れる……
「……ふ…ふはははは……やってくれたな…紫音!肝が冷えたぞ!」
マトリーシェは横たわる紫音を踏みつけ首を掴むと高く吊り上げた……一瞬値踏みするような目で紫音を見ると口元を歪めた。
「…この娘の魔眼は面白いな……取り込んで我が力とするもの面白い……」
「やめろ…マトリーシェ!」
カイルが駆け寄るが炎の直撃を食らい再び倒れこむ……
紫音の首筋にかけられた手から『マトリーシェ』が内部に侵入する……血管が黒く浮かび上がり紫音は苦悶の表情を浮かべた……
『ほう…二人もいるとは優秀だな』
チャットルーム内に響く声に紫音達は驚愕した……そこにはマトリーシェが居た。
ゆっくりとドアを開け室内に歩いてくる…
「な…なんで…」
『アイリスに会いたいのだろう?会わせてやろう……私の中でな!』
室内に激しい暴風が起こりシロンもクロンも動くことは出来なかった。
やがて水晶に写る紫音の姿と同じように首を掴まれ高く吊り上げられた……
『なぁに…苦しいのはほんの一瞬だ…』
『…紫音…しっかり…』
床に倒れ伏せる格好でシロンが声を出す……魔力により形成された彼女達はマトリーシェの強力な魔力の前では成す術も無い。
必死で紫音の意識を繋ぎ止めようとする……この意識下のチャットルームで意識を失う事はほぼ死に直結する。
現状ではマトリーシェに意識を奪われ、言葉通りに『吸収』されてしまいかねない。
(もう…駄目……)
意識を失いかけたその瞬間室内が大きく揺れて紫音は床に投げ出された……
意識が一気に覚醒し、現実に回帰する。
カイルが捨て身の体当たりで二人の体を揺さぶった……しかしそれは直ぐに魔法により弾かれ紫音は釣り上げられたままだったが……
意識下では救出に成功していた……シロンとクロンが内部から『精神障壁』を展開した為マトリーシェの侵入は不可能となった。
「そんなにこの女が大事なのか?この女に本当の姿を見られるのが嫌か?私と同じ『化け物』の癖に!」
未だに抵抗を見せるカイルに苛立ちを感じた…私よりもこの娘を選ぶと言うのか?……ならば……
紫音の首に力が込められる………
「やめ…!」
カイルは最後の力を振り絞り立ち上がり………信じられないものを見た。
紫音はイリュにより抱きかかえられ、それをネルとイングリッド、アネモネが守る様に構えていた。
(一体どうやって結界を?)
混乱するカイルを脇から抱える者が居た……律子とルミナスだった。
「律子……ルミナス?」
「…お久しぶりです…カイル様」
「どうやって…此処に?」
「…あの子のお陰だよ」
律子の視線の先…右手を押さえたマトリーシェ…その視線の先には黒く小さな物体が紫音の前に立ちはだかっていた。
「ご主人様を傷つける奴は許さないのニャ」
いつかの闇の降る夜に紫音によりその命を救われたワイルドキャットであった。
今月中には更新したいのですが~
来月になる可能性も……
がんばります