-18℃
出来立てのホヤホヤです なので誤字、脱字が大漁の予感です 汗
「…おかえりなさい」
「ただいま……先生…早速で悪いのだけど……」
朝日が登る頃に彼が出ていった時と同じ様に窓から戻ってきた……彼が無事である事を確認して安堵の息をついた…
そして彼は恥ずかしそうにそう言った……きっと魔法を使った影響で身体中を魔法熱が駆け巡っているのだろう……
私はベットから立ち上がり、この身を包んでいたバスローブを脱ぎ去った……
「ふふっ…カイル…さぁこの体は貴方の物……好きに使って良いのよ? 」
その甘美な囁きは彼の理性を吹き飛ばすには充分だった。
そのままベッドに押し倒される……
教師としては決して許される事ではないが、互いに求め合う関係は実に良いものだな……と思うイングリッドだった。
目覚めたときはすっかり日が登っていた……隣で眠るイングリッドを見て軽く自己嫌悪になった。
(全く…俺は盛りのついた猿かよ)
窓を開け換気を行う……動けないイングリッドと二人でシャワーを浴び、沸き上がる情欲を理性を総動員して押さえ付け、何とか着替えさせるとソファーに休ませた。
その隙にシーツや服を洗濯、乾燥し
更には昼食の準備をする……
(……すっかり忘れていたがイリュ達はちゃんと……まぁ紫音が居るから何とかしてくれるだろう……)
巻き込まない……などと言いながら
戦う以外の事では随分と紫音に頼っている事に気が付いた……
(お前も人の子だと言う事だな…)
「…関わり過ぎると危険が及ぶ可能性があるからな…」
珍しくアーガイルがこちらの思考に口を挟んだ…基本的に無関心何だが……
(…その危険を寄せ付けない位に守ってやれよ)
「そう簡単に言うが…」
(毎回いい思いをしてるんだからそれくらいの甲斐性を見せろよ……)
「て、言うか全部アーグか手を出したんじゃないか」
(切っ掛けはそうかも知れないがお前も自分の意思でそうした事はあるだろう?無いとは言わせないぞ?さっきだってそうだろう?暴走を阻止する為と言いながらその手段としてイリットの身体を求めたのは貴様の意思だろう?それが嫌だと言うなら他にも手段は在った筈だが?その手段の為だけに彼女達を抱くと言うのならこれ程失礼なものは無いな…もしも僅かにでも情があると言うなら全身全霊を懸けて彼女達に愛情を注ぐのが筋だろうが?)
「…正論だけに返す言葉もねぇよ………女の話になると良く喋るな……」
勿論アーガイルの本意はそれだけではない……言うならばカイルを繋ぎ止める鎖の様な物だ。
カイルは自覚していないだろうが、危なっかしい所がある。
この青年は自分の信じる道の為にその命を投げ出す事も惜しまないだろう。
しかしそれでは彼の身を任されたアーガイルは困るのだ…少なくとも護るべき人と場所があればそんな無茶はしないだろうと考えていた……無論、彼女達の為に命を投げ出す可能性も捨て切れないがそこはアーガイルがフォローするしかないと考えていた。
「…そうですね…女性に優しい男性は好まれます」
突然の声にカイルは振り返った。
そこにはメイド服に身を包んだ褐色の肌の見知らぬ女性が居た……長い髪と黒い瞳…この国の人間かと思ったが、長い耳がそうで無い事を証明していた。
(…ダークエルフ…)
魔法と戦闘に長けた種族だ、余りこちらの世界ではお目にかかる事は少ない。
カイルは距離を置き身構えた……
テーブルを挟んで牽制し合う……と言っても彼女は敵意を見せた訳ではないが、その気配の消し方は普通では無かった為に一方的にカイルが警戒しているだけだった。
「…何者だ…何時の間に此処に?」
「はい、先程玄関から…ルシリア様の使いでカイル様にお渡ししたい物がありましたので…」
「…ルシリア…様?」
自信無げにその名を繰り返す……どっかで聞いたような……
(アイリスの母君だな)
「…女性関係の情報は詳しいのな…」
得意気に誇るアーガイルの姿が容易に想像できた。
「失礼とは思いましたが、先の戦闘終了からあなた様の後をつけて居たのですが……イングリッド様とナニを始められたご様子でしたので、空気を読んでそこの公園で3時間程時間を潰してからやって参りました…イングリッド様はまだおやすみの様ですね?朝からどんだけ盛っておられるのですか?猿ですか?猿ですね?わかります、エロ猿ですね……あ、これがルシリア様よりお預かりした手紙です」
「……おい、アーグ…俺の気のせいでなければこの人失礼な事を一杯言いやがった」
(…そうだな…)
「お誉めに預かり光栄です」
「(誉めてねぇよ!)」
思わず二人の声がハモった……
アレだ……気配とか消すとかってレベルじゃないけど……
人格が少し残念な気配がする……
「…おはよ…カイル、いい香いがするー」
そこにイングリッドが目を擦りながらよたよたと起きてきた……勿論このメイドさんを認識していない。
「…おはようございますイングリッド様…無断でお邪魔した事をお許しください……体調は大丈夫ですか?獣のごときカイル様の情欲をその身一つで受け止められ、さぞ疲労困憊とお見受けします…でも女性は何時の世も殿方に虐げられる運命…私はいつでもあなた様の味方でございます」
「…えっ?あ…うん…ありがとう…」
あたまの回っていないイングリッドは取り合えず礼を述べる………そして此方を向いて「誰?」と告げる。
「えーと彼女はアイリ…「カイル様が普通のプレイでは満足できないと言われまして…ご指名頂きました」の…はぁ?!」
「!!……そっ…そうだったの……ごめんね…カイル…今私メイド服は持っていないから次までには用意しておきますね」
「しなくていいっ!」
このメイド…いきなり何を言い出すかと思えば……
「……勿論冗談です……メイドはお嫌いですか?」
「当たり前だ!……今嫌いになった!」
「それは残念です…ちゅーん」
そうは言ったものの少しも残念そうではない……はっきりと判ったことがある……俺、この人苦手だ。
(……俺は…興味ある)
「……黙れ……アーグ」
「…で、ホントは誰?」
「申し遅れました、私はルシリア様付の特別メイド、ネルフェリアス・コーネリールと申します、ネルとお呼びください」
ネルは姿勢を正すとイングリッドに自己紹介し、一礼した……俺には無しかよ
「取り合えず…食事にしよう…ネルも良かったら…」
気分を変える為にイングリッドに食事を促した……ネルに向き直ると既に食べていた。
「お前ホントにメイドかよ?!」
「…いい味付けです、貴方は立派なメイドになれますよ、あっお代わりください」
「ぐっ…やっぱりこいつ嫌いだ…」
そう言いながらもご飯を用意するカイルを見て、あのアイリシアの寮での生活が染み付いているのだな…
そんなカイルを見てイングリッドは目頭が熱くなった。
食事の後、改めて手紙を受け取った。
「イングリッド様もご確認ください」
「いいの?」
「はい…お力を借りねばならないと思いますので……」
二人はギゼルヴァルト家の家紋の刻印の蝋を開封しその内容に目を通す……
「……これは……」
余りの内容にイングリッドが声を失う
「…厄介な事になったな……」
ソファーに頭を預けると深く溜め息を吐くのだった。