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魔眼の使徒  作者: vata
第二章 暗き森の魔女
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-11℃

5/18 ルビ位置修正

 既に現場には特殊警護部隊が展開していた……今夜は警戒を依頼していたからその対応は素早かった様だ………が 、


既に魔方陣は何者かに破壊され、召喚された魔物だけが徘徊している状況だった……その不自然さに違和感を覚えた。

 混乱を狙うなら魔方陣による召喚かが効果的だ……しかし其を破壊しておきながら魔物は排除しない……

そこから幾つかの可能性をピックアップして一番この状況に当てはまる答えを絞り込む……


「……第三者の介入……そしてこちらの戦力を計っている?」


少し眉を潜めると周囲を警戒した……今は『完全パーフェクトなる不可視化インビジブル』により、

周囲から彼の存在を確認出来る者はいない……筈だ。

相手が『絶対世界アイズ・オブ・ワールド』や『サーチ魔法感知オブ・ゴッド』でも使用していなければの話だが……

今のこの学園都市で使える者は皆無の筈だ。






しかしそれは昨日までの事で彼は気が付かなかったのだ……

 彼の直ぐ隣に『完全パーフェクトなる不可視化インビジブル』で気配を隠し

絶対世界アイズ・オブワールド』で彼を見つめる彼女の存在を………






眼下では隊長らしき人物の率いるチームが先行していた。

恐らく状況確認をする為に魔方陣に向かう筈だ……彼は周囲を警戒しつつそのチームを追って移動を始めた……

 下の屋根に飛び降りたが、物音一つしない………

重力操作グラヴィティ・コントロール』により、普段道りに行動出来るが、体重が0に設定されていた。

彼等と一定の距離を保ち、この探索の作業を任せる以上 彼らの実力を知っておきたい気持もあった為 出来るだけ今回の現場には介入しないように心がけた……


「………」 


後ろを振り返る……先ほどから妙に気になって仕方が無いのだが……今は目の前に居る彼等に集中することにした。


 構成は『魔銃士』『魔闘士』『魔剣士』『治癒士』のオーソドックスだが確実なメンバーの様だ。

治癒士が後方支援、魔銃士が注意を引き付け魔闘士と魔剣士が止めを刺す……どうやら他のチームのお手本となる連中のようだ。

彼らとしてもシャドウマンティスは今までで最大の獲物だったらしく、皆興奮を隠せない様子だった………


「……いい加減警戒しろよ……まだまだ居るぞ……」


彼らに接近する他の魔物の存在に気付いているカイルは内心穏やかではない……

 もしも今一番近くに居る魔物の存在に気付いたとして、全ての数を相手に出来るだろうか?

ここから探索サーチしただけでも 最低あと10体以上は存在するだろう……どうやらこの魔物は影の中を移動する特徴を持つらしい……普通の移動物体を索敵する『探索サーチ』では発見できないかもしれない


「……やれやれ、折角楽できると思ったのにな」


そう言いながらも,何処か嬉しそうな表情で彼等の元に向かうのだった。






***************





「鉄平-------!!」


伊織さんが叫んだ……背後を振り返ると巨大な影がそこに居た。この魔物はその名前の通り、影の中に身を潜めるのだ…1体しか居ないと油断した自分の甘い考えに後悔した……

しかし目の前に迫る巨大な鎌は振り下ろされた………


「?!」


一瞬の浮遊感…そして地面に転がる痛みを感じた……何が起こったのかわからず体を慌てて起こした。

目の前の魔物は動きを止めている……いや 何かがその鎌を受け止めているのだ。

やがて景色が歪み、一人の少年が姿を現した…どうやら彼に放り投げられたらしい


「……お前は一体…?」

「俺のことは後で、警戒して!まだ周囲にいるよ」


その言葉に全員が我に返り戦闘態勢に入る。

それを確認した少年は魔物を力まかせに押し切りとどめの一撃を放った。

彼の拳から見えない蒸気のようなものが周囲の景色をも湾曲させ、螺旋の渦のようになって魔物の胸に届いたと同時に、魔物の背中を突き破り臓器が散乱した……


「グ…重力砲拳グラビティバースト!?」


珍しくキースが声を荒げた……


「俺の『重激拳』の最上級格闘呪文だよっ!!」


伊織さん達の『何それ?』的な視線に気付いて解説してくれた様だ……それだけじゃない…この状況下でこの余裕は何なんだ?俺だって何回目かになる今夜の出動にも吐きたくなる位の緊張感がいまだに拭えないのに……まるで散歩に来たような気軽な印象をもつこの少年の態度が異常なまで気になって仕方が無かった。

少年は振り返ると手を差し伸べた……一瞬躊躇したが、それを掴み立ち上がる。


「…ありが…とう」

「大丈夫みたいだね…直ぐに仲間に防御系魔法でサポートを」

「ああ…」

「…貴方がチームリーダー?」

「…」


マードックは無言で頷き肯定した……この素性の知れない少年を警戒している様だった。


「まだ10体近くいる…直ぐに撤退の準備を、周辺結界はどうなっている?」

「何だと?……ラーズ…聞こえるか?」

『はい隊長、聞こえます』


マードックは肩の無線から周辺結界の任務についている部下に連絡をとった。


「結界の状況は?」

『あと30秒で『聖天使エンジェル箱庭ガーデン』が展開します』

「わかった……と、言う状況だ」

「………んー効果範囲は1Kmだね……このまま東に撤退しよう」

「いや…しかし撤退は…」

「…死にたいの?」


任務である以上撤退は最後の選択肢なのだが……食い下がるマードックに少年は冷静に告げる。


「君達の戦力は有能だが、相手が悪い打撃耐性、炎属性耐性、夜は奴等の攻撃力が10%上昇する…影に逃げ込まれたら簡単に包囲されるのがオチだよ」

「………わかった……全員周囲を警戒し撤退する」


少年の言い分は的確であった…自分達に不利な状況であることは 誰もが感じていたことだ

それ以上に少年の言葉に説得力と重みが全員の発言を許さない状況を作り出していた……不本意ではあるが全員後退を始めた………


「おい…何をしている?早く後退しろ」


伊織さんの声に振り返ると少年は我々とは反対の方向に向かっていた。


「何って……奴等始末しないと、『聖天使の箱庭』なんて5分と持たないでしょ?」

「だからってお前に何が…!」


伊織さんが少年に駆け寄ろうとして右から現れた存在に気がついた。

直ぐに魔銃を構え無差別に打ち込む……全弾命中だが致命傷に至っていない……黒い巨体が真紅の目を輝かせて襲い掛かって来た…


「くっ!!」


伊織さんの魔弾の装填には若干のタイムラグが生じる……この現状では致命的だ。

近距離戦闘タイプのキースさんも体長ももこの距離からは間に合わない……勿論この僕も……

なのに次の瞬間にはシャドウマンティスの頭部が吹き飛んでいた………


「だから早く撤退しろって言ったのに」


見ると少年が伊織さんの手ごと魔銃を構えていた……え?あいつが撃ったの?伊織さん本人も信じられないような顔をしていた……


「…?…厄介だなぁ…」


少年の言葉に先ほど倒した魔物を見た……どういう事だろうか?その影から新たなシャドウマンティスが這い出てきたのだ。

しかも3匹も!!!


「…影増殖シャドウブリードか…皆こっちに来て」

「…い…いまの発砲は…お前がやったのか?」

「?…そうだけど…?」


伊織さんの問いかけに少年はそっけなく答え、そのまま伊織さんの手を引いてこちらにやって来た。伊織さん以外に魔銃を扱える者の存在に全員が言葉を失った…伊織さんの『穿つスティンガー』は個人魔力認証が施されており、伊織さん以外の人間には魔力装填が出来ない仕組みの筈だったのに……


「今からあいつ等を集めてもう一つ結界に閉じ込めてから始末するから…動かないでね?出来れば光を見ないでね?」


そう言うと少年が両手を広げその掌から光球が6つ飛び出し円周上に配置した…それは小さな白く淡く光る球体で一定の間隔で規律良く浮遊していた。


惑星演舞プラネットワルツ光星ソル


その声と同時に眩いばかりの光を発光した…全員が頭部のヘッドギアからバイザーを作動させた。

その光は周囲を昼間以上に明るく照らし周囲の影に潜む シャドウマンティス達を追い出し中央地点に集めていた……

その性質上 光は苦手らしい…逃げ込もうにも周囲の影は光星に照らされ自らの影に逃げ込もうともがき苦しんでいた……


「全部集まったみたいだから……『聖天使の箱庭』は一応維持しておいてね」


そう言うと少年が新たな結界を形成する……鏡が折り重なるような幻想的な結界だ…


十二使徒マジェスタの魔鏡…!」


マードックが呟く…ああ…あの演習場にあるやつか……凄い魔力が必要だとか言ってなかったっけ?

 そのまま少年が結界の中に消えてゆく……誰もがそれをただ見ているだけだった………が


「ふざけんなよ!くそガキがあ!」


何を思ったのか伊織さんはそう叫びながら走り出すと。完成する結界の隙間に身を躍らせ中に消えてしまった……

何も出来ず動けなかった3人の時が動き始める……


「……ああっ!?伊織さんっ!!」

「…全くあの馬鹿…」

「仕方ない…ラーズ達と合流しよう」


三人は立ち上がると外周の仲間の下に向かう……鉄平は一瞬だけ足を止め「十二使徒の魔鏡』を見ると再び走り始めた

そして中に残った少年と伊織の無事を願うのだった。







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