高校教師・後編
チョイエロ三部作完結編です。不快に感じる方はご注意下さい。
誰かか額に手を当てていた……
私は微睡みの中から覚醒する……
「…先生っ…ごめん……また…俺…」
「……カイル?」
そこにいるのは紛れもない、本物のカイルだった……先程、アーガイルと交代したらしい……
時計を見ると既に下校時間を過ぎていた……
万が一を考えて、アネモネにHRを頼んでおいて良かった……
彼女もまさか私が生徒とこんな事をしているなんて……思いもよらないでしょうけど……
「…俺…いつもアーグの魔力を使うと別人みたいになるから……本当にごめん……」
「……んっ」
彼は私の隣に座ると、泣きそうな顔をしながら私の頭をそっと撫でた……年下の癖にまるで父親のような包容力は何なの?
その癖時折見せる少年のような純粋さは思いっきり私の胸をキュンと締め付ける……
堪らない……堪らないわっ!カイルっ!
さっきまでの彼はアーガイルの魔力により、ドS魔神と化して、私の本質的な被虐的な部分を責めまくったけど……
今度は母性を擽りに来るとは!
思わず抱きしめてしまった……
「…?!先生「…いいのよ…」……」
何かを言おうとする彼の唇を塞ぎそのまま押し倒した。
「後は私に任せてその身を私に預けなさい」
あぁ…ダメだ…きっと私はこの先彼なしでは生きていけないだろう。
**********
突然、私の隣のベアが起き上がった……
カイルに気をとられていた私は対応が遅れ焦ったが、意外にもそれは襲ってくる事はなかった。
(……おい、女聞こえているか)
…熊が喋った…
(聞こえているかと聞いている!)
「はっ…はいっ!聞こえています!」
私の返事に満足げに頷くと熊は姿勢を正し、話を続けた……
(時間がないから手短に話す。俺はあいつの肩にあった魔眼だ、今は一時的にこの熊公に寄生している…これからあいつの暴走を止めるから協力しろ)
「…何をしたらいいのだ?」
(…目つきが変わったな…いいかこれから俺が………)
…………
「…………やです」
(えー!協力するって言ったじゃん!)
「…私にはそんな事出来る訳無いだろう!?…他を当たってくれ…では!」
(他に誰が居るってんだよ!!……おまえそれでも教師か!!)
「!?」
(教え子の危機に自分を優先させるのか?それがお前の教育魂なのか!)
「!!」
そうだ……私の目指す教師はこんな事では挫けない…たとえこの身がどうなろうと教え子の事を第一に考える筈だ!
私は日々の仕事の中でそんな根本的な事も忘れてしまっていたのか………
「……いいだう…それでカイルは助かるのだな?」
(…少なくともこの暴走状態からは開放される筈だ)
「……わかった……教師として…全力で挑ませて貰おう」
アーガイルの指示に従いそれぞれの配置に向かって行動を起こした。
体中を凄まじい魔力が駆け巡っていた……最早誰も俺を止める事は出来ないだろう……
アーガイルの魔力により魔族の本能がこの体の中に構築されていく……
それは破壊であり暴力であり力こそが全て!目に見えるもの全てを焼き尽くしてしまうのだ!
頭の中は破壊衝動に染まり周囲のものは区別することなく薙ぎ払って行く…
この周囲に蠢く生き物を蹂躙した後は結界を破壊し、外の世界もこの力で地獄と化すだろう!
そのとき一匹の熊が俺の前に姿を現した……明らかに他の熊共とは異質な存在だ…
俺の放つ魔力に対し耐久しており、正面からこちらに向かってくる…
その腕に、ただ魔力を乗せただけの一撃を繰り出し、それでおしまい……の筈だったが、
そいつはその一撃を食らっても腕をがっちりと抱え込み、動きを封じ込めようとしてきた。
「…おもしろい、貴様のような獣にこんな芸当が出来るとはな…」
もう片方の手に先ほどより多めに魔力をのせ上から抉る様に打ち込んだ……が
これも上手く急所をかわし、こちらの腕を固めてしまった。
(女!今だ!)
「その声は!?アーガイルかっ!」
アーガイルの声に反応して、俺の背後から何かが跳び出した……イングリッドか!
先ほどから何かを喚いていたアーガイルが静かになったと思ったら、こんなところに寄生していようとは……
何を企んでいるのか知らないが、最早この状態の俺を止める事など(ふにゅん)…止める事など………
何か柔らかい物に包まれた……見上げると顔を真っ赤にしたイングリッドと目が合った……
「……こっ…こうすれば…元に戻るのだろう?」
視線を落とす……そこには一糸纏わぬ彼女の上半身があった……
「…お…おっぱ…!!!!!」
(奴の顔にお前の胸を押し当てろ……あいつああ見えて初な奴だから目を回すぜ)
半信半疑だったが恥を忍んでその通りに実行した……結論から言うと本当に目を回した
彼の体重が一気に圧し掛かってきたので慌ててそれを支えた……これで大丈夫なのだろうか?
突然彼が目を開けた、そのまま起き上がり、その反動で私は尻餅をついた…
『………ふ、ふはははは!俺様の魔力を奪おうなど千年早いわ!』
そう言うと両腕を掴むハンギングベアを頭上に持ち上げ引き裂いた……
降り注ぐ鮮血の雨が彼と私を赤く染めてゆく……その光景は残忍でおぞましいものでありながら、幻想的でもあり、私の心を惹きつけた。
それは私の知っているカイル・アルヴァレルであり、私の知らないカイル・アルヴァレルであった。
「?!ひゃ!」
『大人しくしてろ…直ぐに終わる』
彼は私を小脇に抱えると「浮遊」により上空に舞い上がる。
『…限定空間次元破壊』
彼がその手のひらを握り締めると空間が湾曲し数体のベアと模倣空間により作られた周囲の建物を巻き込み中心に圧縮されてゆく…
やがてそれは小さな球体になり、さらに圧縮を続けやがて何も無かったかのように消滅した……
それは古の魔王の一人が世界を滅ぼす為に作り出したと言われる魔法……「失われた魔法」でありながら
「伝説の魔法」と言われる、レア中のレア魔法だ………今日一日で、一生分のレア魔法を堪能した気分だ……
周囲は何事も無かった様に静寂に包まれていた………地面にゆっくりと降り立つと、カイルがそのまま片膝をついた
「?!大丈夫…?」
その肩に手をかけ、私は気付いた…彼の体から立ち上る蒸気……まだ体内で魔力の暴走が続いている証拠だ。
あの魔法の使い方を見ればそれも頷ける……自殺行為だ
「全く…貴様という……『抱かせろ』…はい?」
何か聞きなれない単語が耳に飛び込んだ…抱かせろ?……つまり……その……
「@#&%?*‘*+!!!!!!!!あっ…貴様は一体何を!!」
『限界なんだ……カイルの意識はまだ戻らない…このままでは魔法熱で『魔核』が融解して周囲を巻き込み爆散するか…
体内の魔法が尽きるまで上級魔法を放ち続けるか…お前がその体で魔力の発散に手を貸すか…だな』
……何と言う事だろう…全てが終わったと思ったのに…彼を救えたと思ったのに………いや……まだだ………
私には彼を救うことが出来る……本来なら此処で尽きていたかもしれない命だ……
「………判ったわ……来なさい」
私は魔導リングの緊急ゲートを開放し彼を伴い先程まで居た、教員用個室に戻ってきた。
直ぐにシャワーの用意をして……のつもりがそのまま彼にシャワールームに押し込まれた。
「ちょっと…なにを『限界だ、頂くぜ』…んむっ…」
そのままシャワーの下で乱暴に唇を奪われた……
ああ……これは全て教育者として教え子の為に……
『それは嘘』
私の本心が否定する。
『私は本当は判っている筈』
………そう……本当は判っている……言い訳をつけて自分を正当化したいだけ。
『…私の本性が彼に惹かれている』
あの獰猛な獣の群れにたった一人で挑む姿…思えばあの時からすでに心奪われていたのだ。
気がつくと朝日が差し込んでいた……いや、夕日だった。
カイルの胸に抱かれたまま眠っていた様だ………初めて彼に抱かれた時と同じ光景に思わず笑みが零れた。
「…?どうしたの」
「いや…貴方に抱かれた日のことを思い出していた」
浴槽から始まりそのまま一晩中……本当に一晩中…初めての私の事などお構い無しに何度も何度も………
気がついたのは翌日の夕方だった。更には腰をやられ2日間ベッドで過ごしたのだった……冬休みでよかった。
その後も彼の行っている謎の魔方陣探しの協力をしつつ こうして体を重ねていた……
いいかげん自分の気持ちに正直になれば良いものの、未だに『教師として教え子を放っておけません』が彼女の口癖だった。
勿論自分が彼を独り占めするつもりは無いし、出来るとも思っていなかった…だから今日ぐらいはたまには素直になるのもいいかな……?
自分を偽る眼鏡を外し、愛する男に抱かれているこの自分こそが本当の私なのであろうか?
ならば日頃言えぬ本心を伝えるのも良いのかも知れない……
「…カイル…今日はうちに泊まっていかない?」
7/31誤字、脱字を修正しました。




