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魔眼の使徒  作者: vata
第二章 暗き森の魔女
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高校教師・前編

今回と次回はチョイエロ表現があります。

不快に感じる方は回避してください。

「…カイル!……貴様!聞いてるのか?カイル!」


私の声に彼は顔に載せたままの本を持ち上げこちらを見た。


「…聞いてるよ…リット」

「…先生と呼べと言っているだろうっ!」


私はその本を取り上げると両手を腰に当てて彼に一喝した………本人は全く堪えてないけど……


 此処は校舎の別棟にある教員専用の個人部屋だ…水道、ガス、電気、さらにシャワーも完備した快適空間だ………と、言っても一般生徒を入れるのは隣の教員待機室までだ……

ここは課題の取り組みで宿泊する場合や仮眠を取る為の部屋であり住んでいる訳ではない。


「…貴様の行動には担任として厳重に注意しなくてはならん…」

「……怒ってる?」

「……あぁ……少しだけ」


だからこの部屋に招かれている彼は特別な存在だと言える。


「…確かに貴様の行為でアイリス……の暴走は未然に防ぐ事が出来たが……中央聖堂への攻撃・破壊行為は言語道断だぞ」

「……ほんの遊び心なんだけどなぁ」

「私がどれだけ頭を下げたと思ってるんだ!一歩間違えれば大惨事になっていたかもしれないんだぞ!貴様が退学するくらいで済まなくなる可能性もあったんだ!少しは反省しろっ!」


その態度に思わず声を荒げて彼の胸を指で小突いてしまった……

こちらも終始頭を下げてたんだからこれくらいは当然の権利だ……


「……そっか……リットには凄い迷惑かけたんだね……ごめん……俺はイケない生徒だね……」


ソファーから体を起こし頭を抱えてやたら心情に訴える言葉を呟く彼に私は思わず狼狽し、その頭を優しく抱き締めた……


「えと…その…わかってくれたらいいんだ……もうあんな無茶は……」

「…とでも俺が言うと思ったのかぁー!!」


そのまま体を反転して私がソファーに押し倒される形になった……


「!…ちょっ……貴様っ!アーガイルかっ?!」

「正解」


彼の白銀の髪が根元から黒く変色してゆく…もう一人の彼[アーガイル]の人格に変異した証だった。

爽やかな笑顔とは裏腹にその手が私の体をまさぐる……


「…やめなさいっ!…カイルはどうしたのっ?」

「あんな大技使うから……今は眠ってる………あ、もしかして暴走を心配したのか?」


私は頷き肯定した…


「…なるほど…俺が憑いているのにそう簡単に暴走なんかさせるかよ……しかし…リットもそんな口実で『手当て』しようとしたのか?……イケない教師だな」

「違っ!……私は純粋に……ふわぁ!」


いつの間にか彼の手が服の中に侵入していた……


「…なんだよ…もうこんなになってるじゃねぇか……なに想像してたんだよこの淫乱教師め」

「私は…カイルの事が心ぱ……ああっ!」

「…口ではそう言いながら本心は喰う気満々じゃねえかよ…認めろよ…身体が疼いてんだろ?」

「……」


いつもこうだ……アーガイルに罵られ否定しながらも、心の何処かで悦びを感じている自分が居る……

 カイルとこんな関係に成ってしまったのはもう半年位前からだ……



   **********



 その日は課題の締め切りが近く遅くまで此処で作業をしていた…… 気が付けば外の雪は止み、辺りを白く染め上げていた。

日付けが変わった辺りで帰宅するために学園を出た辺りで不思議な感覚に捕らわれ、怪しげな魔方陣を見つけた。

既に周囲は結界により断絶されており 、魔方陣からは得体の知れない魔物が姿を現した……

魔界では見た事の無い腕の4本ある巨大な熊だった。


『ハンギングベア』


そう解析アナライズされた 。


 私は冷静に右手を魔剣化し対処しようとしたのだが……たかが熊だと甘く見たのがいけなかった……

ハンギングベアは思いのほか素早くあっと言う間に距離を詰められた。

こちらの攻撃よりも早くその巨体の薙ぎ払いを受けてしまいフレームが壊れ、眼鏡が吹き飛ばされた。

そのまま右手を捕まれ肩から生えた二本の腕により宙高く吊り上げられた。

……なるほどハンギングベアとはこういう事か……


その強力な力に意識を失いかけた時……それは起こった。



 突然結界がガラスを割る様に砕け散り一人の男が飛び込んできた……

瞬時に私を吊り上げていた腕を切り落とした。

私は地面に投げ出され、肺の中一杯に空気を吸い込んだ。


ハンギングベアは怒りとも苦しみともとれる咆哮をあげて男に挑んで行った………が、

その巨体が左右別々の方向に駆け出して倒れやがて動かなくなった。

先程の一瞬で既に両断されていた事にすら気付いていなかった様だ。


「大丈…ぶ」

「……はっ!助けて頂いてありが……カイル?」


声を掛けてきた男に礼をのべようと顔を上げるとそれは私のクラスの教え子…カイル・アルヴァレルだった。


「…先生眼鏡無いのによくわかったね」

「…貴方…一体何を……」

「……先生話は後で」


そう言ってすがり付く私を振り払うと私の周囲が泡の様な柔らかい結界に包まれた。


「?!『聖愛女神アフロディーティア』!」


私は自分の目を疑った…これは神族の使う上級護身結界魔法だぞ?!学生が習うものでもなければいくら魔眼の保持者でも人間に扱える魔力構成ではない……

しかし、この結界は完璧だ!私にもこの結界を破れるかどうか自信が無い


「貴様!?一体何のつもり……」


抗議の声をあげようとして……見てしまった……あの魔方陣から這い出てくる無数のハンギングベアを……ざっと見て20、30……いやそれ以上かも…


「…じゃあ、先生はそこでじっとしててね」


新たに結界を張り直したカイルがそう言って呪文の詠唱状態に入った……


射手座流星弓サジタリアス・ダスト


金色の矢が高速で降り注ぎ、十数体 のハンギングベアを地面に縫い付けた後、爆散した。……風魔法


ハンギングベアはその俊敏さで回避すると、そのままカイル目掛けて駆けてきた……眼前に地面から壁が現れ、その勢いが殺された。


聖戦ウォール守護壁オブ・ジェリコ


ハンギングベアの倍近くある壁を前によじ登るのもいれば、力任せに破壊しようとするものも居た……土魔法


 一匹のベアが壁を登りきり標的の位置を確認しようと顔を覗かせた……

その頭部を正確に何かが貫き爆発した……

頭部を失った巨体は力なく下のベア達に容赦なく降り注いだ。


天駆アーキュリーける火食いフレイムバード


カイルの周囲に規律よく並んだ火球が彼の指示する方向に飛び出し次々とベア達を貫いた。……火魔法


その怪力で壁を粉砕し数匹のベアがなだれこんだ……カイルの姿を見ると牙を剥き出しにして敵意を表した。


ベア達が一斉に目の前の水溜まりを踏み散らし襲い掛かってきた………筈がそのまま地面に頭から転げ落ちた……


「アシッド・スライム?!」


 水溜まりに触れた手足が溶解し原型を留めていなかった……

その水溜まりが大きく盛り上がりベア達を体内に取り込んでゆく……憐れなベア達は強力な硫酸により一瞬で骨も残らない程に分解されてしまった……

水魔法の召喚だ。


紫音がカイルの戦いを見て常に感じていた違和感をイングリッドは見抜いた

……

属性の効果常識が全く当てはまらないのだ。

 火の属性は風に強く、水に弱い…

 水の属性は火に強く、土に弱い…

 土の属性は水に強く、木に弱い…

 木の属性は土に強く、風に弱い…

 風の属性は木に強く、火に弱い…

それ以外にも火と木や風と水等の組み合わせもあり、それらを結ぶと魔導の基礎、五芒星ペンタグラムになる…

…魔界では子供でも知っている基本中の基本だ。


だからこそ目の前の出来事が信じられないのだ。


 私自身、暗黒寄りではあるが風の属性だ……故に火の属性魔法は殆んど使えない。

火の属性のイリューシャは水の属性魔法は使えないと言っていた……

だからこそ4つの強力な属性の魔法を使いこなすカイルが信じられないのだ。


「……カイル…貴様は一体……」



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