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魔眼の使徒  作者: vata
第二章 暗き森の魔女

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「このまま痺れてお終いやぁ!」


振り上げた西園寺の掌に雷球が現れる……『豪雷球ライトニング・ブリッツ』……威力としては申し分ない中級魔法だ。


「……助平の成せる業だな……」

「……あぁ…羨ましいぜ」

「…西園寺サイテー」


 クラスの男子からは羨望の称賛を受け

女子からは 女の敵の称号を貰った。


「巨乳は……男の……ロマンなんやー!」


更にクラスの女子の半数から『アイツマジ最悪』の称号を獲得した決め台詞で雷球をアイリスに放った。



********


「……ふむ、これは流石に不味いかな?」

『何やってんだよ!こんな結界さっさと破っちゃえよ!』

『……あの~やはり争いは辞めた方が……』

「『お前は黙っていろ!」』

『……くすん』


 緑の草原にある大理石のテラスでテーブルを囲んだ三人の女性が言い争っていた。

三人は顔立ちはよく似ていたが、髪の色と性格は全くの別人だった。


 蒼白金髪のおっとりしたご存知アイリス……

紫色の跳ねた髪を気にする事なく喚いているのはモネリス……

そして 中央で 優雅にお茶を飲んでいるの黒髪の令嬢風が長女、ルミナスの魔力から生まれた『ルミナリス』……

彼女達が通常のチャットルームの存在と違う所はアイリスの身体を介してその姿・力を具現化出来る特異性にあった。

そして此処はアイルスの精神世界……『若草の庭』である。

彼女が紫音に以前話した庭がそのまま再現されている。

三人はここで優雅にお茶会を開くのが日課だった。

 ルミナリスはカップを置くと立ち上がりテラスを降りて行った。


「……二人とも…ここは私に任せてくれない?」


ルミナリスはそう言って目を閉じると光の粒子となり姿を消した。


********


「……では始めましょう」


 ルミナリスは唯一動かせる指先を使い

空中に文字を描き精霊を呼び出した。

それは小さな羽のついた少女の姿をした6体の火の精霊……『アグニ』だった。


『燃やせ(パイロン)』


ルミナリスの指示に従い、彼女を縛る結界を司る呪符を燃やした。


「馬鹿な!魔力で作った呪符だぞ?!」


それを燃やすにはその魔力を上回る魔力で燃やさねばならない。

この小さな精霊にそれだけの力があるとは思えない……


「…これはささやかなお返しだ」


ルミナリスが指を鳴らすと、マキーの周囲にアグニが現れ彼の結界そっくりの火の結界を作り出した。


「…動くなよ?どうなるか自分で良く解るだろう?」


 マキーはただコクコクと頷くだけだった……そうする事しか出来なかったのだ 。

形こそマキーの六芒結界だが、その威力が桁違いだとマキーは身をもって感じていた。


「マキー!おのれ!」


西園寺は激高し最大速度でルミナリスに肉薄した---その拳にいかずちを纏って。


「!?」


 しかしその拳は彼女に届くことは無かった…彼女の周囲には硬度の固い氷の結界があり

雷もその伝導性質により全て地面に流されていた。

…それよりも問題はそこではない。

その結界を展開しているのは彼女ではなくその眼前にいる氷の精霊『フロスト』によるものだ。


…と、同時に彼女の頭上には風の精霊『エアロス』が次の魔法を発動させていた。



『吹き飛ばせ(バルスト)』


 ルミナリスの声に恐ろしいほどの暴風が西園寺を襲った。

彼は堪らずそのまま後ろに吹き飛ばされすぐさま体制を整えると迎撃姿勢をとった……が、

ルミナリスはその場に佇むだけだった。


三属性魔術師クアッド・ソーサーラか!」


 イングリッドが驚きの声を上げた…通常一人が属する魔法属性は一種類とされている。

稀に二つの属性を操る者が現れる……『異属性魔術師デュアル・ソーサーラ』と呼ばれ

天性的な者と熟練による者、魔眼により与えられる者がある。

それは天界・魔界においても希少な存在であり、魔道を目指す者の究極の目標とも言える。


三種の精霊を使役するということは、それらの属性魔法が使えるということだ。

しかも氷=水…相反する火と水を同時に使える者になると、その実力は想像もつかない。


「…まだやるつもり?……もう手加減はしてあげないけど?」

「……なんやと?……ふっざけろっ!」


明らかな挑発の言葉にもかかわらず、西園寺は再びルミナリスに挑む……


「電光法衣・雷神槍!」


西園寺の身体を覆う雷がその伸ばした両手の先に集まり、まさしく全てを貫く神槍の容貌を見せた。


「…これは大変ね……身を守る為だもの、何が起こっても仕方ないわよね?」


 それは誰に向けた言葉だろうか? 西園寺?それとも自分 ?

ルミナリスの前に巨大な3つの魔方陣が浮かび上がる……


『滅ぼせ…三重魔法殺クアドラ・ギメルデ


やがて、視界全てが白く埋め尽くされた……



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