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魔眼の使徒  作者: vata
第二章 暗き森の魔女
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−3℃

「…へぇ…あの娘がねぇ…」


 アネモネは感心した様に呟くと、目の前のお茶を飲み干した。

その目の前には渋い顔をしたカイルが居た。


「…お茶渋かった?」

「…違うよ…話を誤魔化すな」

「やれやれ…私にも原因は判らないよ…モネリスが原因とも考えにくいし……寧ろ今までこうならなかった方がおかしいのだけど…」


アネモネは椅子にもたれ掛かると腕組みをして思案する……そこでひとつの仮説に行き着いた。


「…判らないけど…もしも…もしもよ?私の魔力から生まれたのがモネリスならばお母様やお姉様は?…それらが覚醒した……可能性としてはあるでしょ?」

「…母親は可能性としては薄いが……お前らの姉ちゃんか……」


 ルミナス・H・ギゼルヴァルト


頭脳明晰、容姿端麗のギゼルヴァルト家の長女……外交の職に就いており、魔界屈指の知将と言われている……あのイングリッドも認める程の有名人だ。


「…厄介そうだ……」


新たな悩みにカイルは溜め息を漏らすのだった。



************



「…次、アイリスと前田崎…相手は……西園寺とえぇっと……マキー」

「……牧村っす」


名前を呼ばれゆっくりと立ち上がった……律子は隣で落ち着き無くそわそわしていた。


「頑張ってね」

「……うん」


 紫音の応援に素っ気なく応える……

相手は西園寺とかいったあの男……

先日からカイルにちょっかいを出している奴だった……教育するにはいい機会だ。


「…結果次第で対抗戦のメンバーを決定する、手加減は無用だ、しかし殺すなよ…は半殺しまでは許す」

「…先生その発言はどうかと思うのだが…」


イングリッドの言葉に律子が思わず困惑した様子で返事をする……何故だ?魔族にとっては当たり前の事だろうに……


「……と、いうことは、選ばれればカイルと一緒に出場か……」


あのイングリッドの事だ、カイルの実力などお見通しだろう。

……しかしああは言っているが実際に殺してしまっては問題になるだろう……案外難しいな。


「…アイリス…アイリス…大丈夫かい?」


律子の声に我にかえった…思案している間に始まってしまった様だ。


見れば、マキー君が呪文の詠唱を終えようとしていた……見覚えのない術式だ。


「…オン・キリキリソワカ・ハマ・キリク・カーン!」


マキーの声と共にアイリスの周囲に術式の刻印された呪符の形をした結界が6枚現れ、それぞれを結び六芒星の中央にアイリスを封じる型となった。


「六芒結界・零式」

「よっしゃ!でかしたでマキー!そのまま逃がすなよ!」


 その言葉に従い、マキーはその場で詠唱を続ける……魔力を供給し続ける『詠唱継続型』の様だ。

その分強力な効果を発動出来るが……

術者はその間無防備になるデメリットがある。


「せやから俺がおるんじゃ!」


西園寺が隣で印を結び術式を完成させる


「電光法衣・駿雷」


西園寺の周囲に雷の衣が現れ、その身体を覆う……こいつらは独自の陰陽の使い手であり、魔眼の力と融合させた『オンミョースペル』の使い手だ。


「まずは一人!!」


西園寺がその場から姿を消し一瞬で律子の傍に移動していた。


「!!」


律子は直ぐに防御姿勢をとったが、その速度には対応出来ないでいた……雷を纏った拳が襲いかかった……が

それは空を切り、律子の姿はノイズが掻き消される様に消えていった。


「!…なんやこれ!」


振り替えると背後には無数の律子の姿が……

電脳幻視亡霊ゴーストプロトコル

電脳の魔学士である律子の使う魔力による立体映像ホログラムだ。


「…ちぃっ!マキー防御や!」


その言葉にマキーは呪符を取り出し足元に置く……そこを中心に円形の壁が光を放ち立ち上る。


「!!…呪符なんて反則ではないのかい?」


無数の律子達が一斉に抗議の声をあげる…しかしイングリッドは首をふる、個人の会得しているスキルも道具も実力のうちだ………と言うことらしい。


「悪りぃがケリをつけさせて貰うで!…『マハ・カーン・ソワカ・悪鬼召喚・阿修羅蜘蛛』」


西園寺の背後から煙が立ち昇るとそれは巨大な蜘蛛となった。


「……ほう」


アイリスは素直に感心した。魔界においても阿修羅蜘蛛は脅威的な存在で単体でも危険度Bランクに指定されている。それを使役するこの男の評価を僅かに上方修正した。


「蜘蛛の糸・縛」


阿修羅蜘蛛はその巨体を回転させると放射状に糸を撒き散らし、その姿を再び煙に変えて消えた……しかしその糸は律子の幻影を絡めとっていた。


「?!何これ!」

「無駄やで、その糸は魔力を持つものを感知して絡めとる…そんでこいつで王手や!『電撃感染ボルテックウイルス』!」


西園寺は近くの幻影に近付くと人差し指に呪文をかけると鋭い一撃を打ち込んだ……この呪文は対人呪文ではない。魔眼戦争時に開発されたネットワーク破壊用の呪文だ。


西園寺は先程の律子の抗議を見て気が付いたのだろう……全ての幻影(端末)が律子本体サーバとリンクしている事に……だから一つの端末が感染すればネットワーク全てが感染してしまうのだ。


「!!しまっ……ボクとした事が!!」


身体に電流が流れた様に力がなくなった……気が付けば既に半数以上の幻影が消え去っていた……残りも感電状態で動く事が出来ない……律子本人も同様だった。


うかつだった……西園寺は馬鹿だから電脳の部類には弱いと踏んでいたのだが………

甘いのは自分の方だった。


「センセもう相手さんはギブアップやからワイらの勝ちやろ?」

「……?勝ち?貴方は何を言っているの?」


アイリスが不思議そうにして西園寺に尋ねた。


「……って!お前は動かれへんやろ?!」

「……動いていいの?……そうだよね、じゃないと勝てないものね」

「はぁ?勝つやと?ハッ!しょうもない事言うなや!……もしも勝てたらお前の言うこと何でも聞いてやるわ!」


西園寺はアイリスの眼前に歩み来ると指を突き付けそう宣言した……


「…おもしろそうね……なら貴方が勝ったら……私の事、好きにして良いわよ……あなたが負けたら……そうね、下着一枚でグランド10週なんてどお?」

「よっしゃ!下着と言わず全裸で走ったるわい!」

「……うふふ」


何故かこの時、西園寺は冷静さを欠いていた……

それは条件に浮かれていたからだろうか?

それとも知らぬ間に『誘惑の瞳』の虜にされていたのだろうか?


どちらにしても、この後彼は有言実行する事になるのだから。




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