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魔眼の使徒  作者: vata
第二章 暗き森の魔女
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−1℃

「…泣かないで…紫音…」

「…だって…私は縛られてただけなのに…」


そう言って2個目のパイにかじりついた……放課後に駅前の『パティシエル』で、イリュと律子と三人で帰宅前の寄り道をしていた…イチゴショートは売り切れていた事もあり、傷心の紫音はパイを頼んだ……3個も。


「…で、モネリスだっけ?」

「…ん?」

「…その…彼女はカイルと…もにょもにょ…」


律子の声が小さくなる…顔赤いよ…うん、でもわかるよその気持ち……私も今思い出してもこっちが恥ずかしくなるくらい激しいの行為だったから……

実際は接吻による『吸精ドレイン』だけであったが、相手が顔見知りなだけにその衝撃も想像以上だった……暫くは二人に会うたびに思い出してしまい気まずい思いをするかもしれない。


「…魔族ではよくある話だよ……魔素の生成は死活問題だからね」


涼しい顔でコーヒーを飲み干した……


「!?……じゃあ…イリュも…毎晩カイルと?!」


律子の言葉にイリュが盛大にコーヒーを噴いた。

……私はパイを丸呑みする所だった。


「…ばっ…馬鹿っ!私は正常に魔素を作り出しているし、アレはアイリスの話だっ!」


以外にも顔を真っ赤にして反論する……イリュは以外にも恥じらい深い性格だったりする…………………男女の話題については。


「…実際問題、私達にはアイリスとモネリスの見分けがつかない所なのよね」


イリュが言うには魔素の供給が一定の数値に来ると、人格が入れ替わるらしい……髪の変色が一番分かりやすいが、変化させない事も出来るらしいので、あまり宛にならない……饒舌に喋るとか、活発に動き回るのも判断材料らしい。


「…で、その本人はどうしたのさ」

「一応、急激にカイルから魔力をの摂取したから検査するって……」




**********



「…特に異常はみられませんね」


医師がカルテを見てそう言った……あまり食べ過ぎないでね……とも 。


それはモネリスに言ってほしい事なのです、いつもカイルから魔力を貰っている途中に割り込んで来て折角の二人きりの時間を滅茶苦茶にしてしまうのには私も困っています……

だから今は反省の意味も込めて、チャットルームのモネリスの自室に閉じ込めています……時折泣き声が聞こえるのですが、嘘泣きだとわかるので放置しています……

流石に今回は私もこのままにするつもりはなかったので……暫く反省して貰います。


「……大丈夫?」

「…うん」


一緒に来たアネモネ姉様の声で我はっとしました……少し疲れているみたいです……

早く寮に帰りぬるめのお風呂でゆっくりしたい衝動に駆られ、その旨を姉様に告げた。


「…そうね、私もカイルとあの娘……ほら何だっけ?そう!紫音!悪い事しちゃったから少し謝りたくて……ホントよ?別に夕食の時間だからあわよくば戴いちゃおうとから考えてないからね?……うっ……ごめん少し考えた……でも謝罪したい気持ちはホントよ?ねっねっ?良いでしょ?」


医者が苦笑いをしていた。

姉様の名誉の為にも そこは快諾しておいた。

そのまま帰宅した二人は見計らったかの様に、夕食の準備をしている最中に辿り着いた……アネモネの本音の隠しきれない言い分けを聞いて、カイルがおかずを一品追加したとかしないとか……





「…こほん……えーでは、紫音ちゃん今日はご免なさい!」


夕食の後、半ばこれも計画的だと思ってしまう様な成り行きで今夜は宿泊する事になった所でアネモネが謝罪した。


「……ア……アネモネが……謝った?!」


イリュが驚愕の表情を浮かべた……カイルも同様の表情だった。


「……失礼な……これでも私は保健医だからな……仮にも生徒に対して個人的にやり過ぎたのは事実だからな……カイルも悪かったな、モネリスが迷惑をかけた……私の管理不足だ…一応彼女は私の魔力が元になっていることだしな…」


 カイルが箸を取り落とした……気のせいか手が震えているような……

何故かアイリシアさんもグラスを落した……


「…アネモネ…あんた…本物?」

「……!?俺にも謝罪を……何処か具合が悪いのか?!」

「……人が素直に謝罪したと言うのに……お前達は……!!バーカ!バーカ!もう謝ってやるもんかっ!」


 アネモネは立ち上がりカイルとイリュを指差し喚いた……


「……良かった……いつものアネモネだ」

「ぐっ………ちくしょー覚えてろよー!」


アネモネはフォークをアイリシアの皿に突き立てると彼女の好物であるジャンボフランクを奪い去り一口で噛り付いた。


「あぁっ!!私のマグナムがっ!!アネモネあんたっ!!」


突然はじまる追いかけっこ……なんだろう……この既視感は……つい先日もこの光景を見たような気がする……

ここにはまともな大人は居ないのだろうか?


それでも食事は楽しく続けられ、一連の騒動をカイルと紫音に謝罪(?)し、この件は終ったかに見えた………

この楽しい日々がこのまま続いて行くのだと思っていた………




あの声を聞くまでは。


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