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魔眼の使徒  作者: vata
第二章 暗き森の魔女
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ユキノシラベ 7 



「………………」


 気がつくとベッドに寝かされていた……どうやら保健室らしい。あいまいな記憶を辿る…………

紫音とイリュの戦闘訓練の観戦している最中に 朝から我慢していた魔力不足がピークに達していた。

昨夜はイリュの『手当て』の為 カイルに頼むことが出来なかった…………

今朝は今朝で何故かあの場でカイルに頼む事に気が引けた。

アイリスにとって理解できない複雑な心理状態になったらしい。

…………それ以前に私は『手当て』が嫌いだ…………

しかし、私自身『手当て』を受けている存在…………

私にイリュをどうこう言う資格は無い。


「気がついた?」


普段聞きなれぬ声……しかしアイリスにとっては忘れる筈の無い声……

ゆっくりと体を起こしその名を呼んだ。



「アネモネお姉様…」


アイリスの居るベッドの足元のカーテンの向こうに立つ女性はアイリスに良く似た顔立ちで透き通る様な蒼の色の銀髪は彼女の着ている白衣にとても似合っていた……

彼女はアイリスの姉の一人、アネモネ・H・ギゼルヴァルトであった。


「アイリス……久しぶりっ」


傍に歩み寄ると、優しくアイリスの頭を撫でた……

こうされると彼女の心はほわっと暖かいものを感じる……これが『喜び』なのだろうか?

……微かながらに感情を感じ取れるという事は、少なからず魔力が移植され、私の中で魔力が精製されているという事だ。


「……姉様が移植を?」

「いや…カイルだ…呼びつけて搾り取ってやったよアハハハハ」


豪快に笑う姉の姿は彼女が代わり無いことを表している……少しカイルが心配になった。


「冗談だよ…隣のベッドで寝てるよ……」


私の僅かな表情の変化を感じ取ってくれるのは流石に姉だという所でしょうか?

…特にアネモネお姉様には一番お世話になっている気がします……


「……ところで……お姉様は何故此処に?」

「………えっ?……聞いてない?」


アネモネは少し悲しそうな顔をして髪の毛を掻きむしった。


「…イリットの仕業か……覚えとけよ~昨日からここの保健医になりました~」


イリットとはイングリッドの愛称でアネモネとは魔界の学院でクラスメイトだった……

しかしアネモネは将来、魔界軍事本部ので働きたいという希望を叶える為、今も異世界との交流…

特に天界との交流に反対する古い思想の国々との争いの最前線に赴いていたはずだが……


「……姉様……軍隊は……それに保健……闇医者?」

「…ちゃんと勉強してたよ?……ほんとだよっ?」


急に焦りの色を見せる……昔から勉強と名の付くものが嫌いだったと改めて思う。

そんな姉が戦いに身を投じたのは、やはり7年前の『あの事件』がきっかけなのだろう……


「もちろん部隊に参加して反乱部隊の鎮圧とか殲滅とか惨殺とか色々と経験したよ……でもね最後に所属した部隊が凄く良かったの……」


……物騒な話が飛び出したけど……聞かなかった事にした方が良いのかな?


「そこは医療部隊でね、毎日沢山の兵士や一般人が負傷して担ぎ込まれてたの……そこに凄腕の『癒手ヒーラー』が居てね……その人の思想に感化されちゃったの……」


………飽きっぽい所も昔のままだなぁ……姉が身近にいる事を改めて認識した。

 でもそれらが全て私の為なのだと知っている……知っているからこそ、無理をする姉を止めることが出来ないでいた。

戦いに身を投じたのは私を護る為……医療を学んだのも私の病を治す為……兄からはそう聞かされた。


「……?」


ふと、カイルが寝ているベッドとは反対のベッドから呻き声が聞こえた気がした……


「あっ……忘れてた、いやいやこの娘ったら結界で万全の『手当て』の最中に入って来ちゃってさぁ……反対勢力の刺客かもしんないから捕まえちやったのよ」


そう言いながらカーテンを引き開ける……

そこには憐れにも後ろ手に縛られタオルで口を塞がれ、ベッドの上でただ身をよじる事しか出来ない紫音の姿があった。













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