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魔眼の使徒  作者: vata
第二章 暗き森の魔女
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ユキノシラベ 4

9/6  おまけを装備

 


 イリュから聞いていた通りにアイリスは同じクラスになった 。

クラスの男子は異常に大騒ぎして、女子は人形の様なアイリスを取り囲んで質問責めにした……


『無愛想に見えるから……』


学園に入る前に彼女が懸念している事を口にした。

その姿が転校初日の私の姿を思い出させた。


「大丈夫だよっアイリスはいい子だもん!友達沢山出来るからっ!」


 私は彼女の手を握りしめてそう激励した。

アイリスは小さく頷いてそのまま校舎に入っていった。

事情を知るイングリッドの計らいで、アイリスは私の隣の席だ。

近くにはイリュや律子も居るし 肝心のカイルは余りにも地味で気が付かなかったがイリュの前の席だった……

カイルの存在感の無さはそれはもう半端無いモノだ……認識している私達ですらその存在を忘れそうになる。


沢山の人だかりも徐々にまばらになり、昼休みにはいつもの平静を取り戻した。

休み時間に購買に行こうとするイリュをアイリスが呼び止めた。


「……これ……」


彼女の魔空間バッグから重箱が出てきた……ふたを開けると朝の残りが綺麗に盛り付けられていた。


「カイルに渡された」

「いつの間に……」


 振り返ったがその本人の姿は無かった。 

教室内にもその姿は無かった……

廊下から西園寺達の馬鹿な笑いが聞こえて来る…… 少しだけ心配になりイリュを見た。

彼女も同じ事を考えて居たようで怪訝な顔をしていた……

二人して廊下を覗いて見ると、案の定、西園寺ともう名前すら思い出せない取り巻き二人がカイルに因縁をつけていた……

しかしながらカイルは全く動じる事無く、めんどくさそうにしていた……


この件も昨日、気になったので一応言ってみたのだが

『えっ?俺いじめられてたの?』

との返答が返ってきたのでそれ以上は何も言わなかったのだが……

あんたは良くても見ているこっちが気分悪いのよっ!


身を乗り出すとイリュに止められた。


「私が行く」


そう言い残して颯爽とカイルの元に歩いて行く。


「西園寺!」

「…!イリューシャ」


んっ? 西園寺の態度が少し気になったが行く末を見守る。


「ぎゃーぎゃー騒いでんじゃないよ!五月蝿くてメシ所じゃないよっ!」

「…わっ悪りぃ…」


今までの態度からは想像出来ない位に西園寺が従順だ……

先ほどまでの威勢は無く、なんかもじもじしている……なんか…アイツ顔赤いよ?……まさか……


「…あのっ…この間の返事を…」

「何度も言ってるけど、私はあんたと付き合う気なんかこれっぽっちも無いから、あんたと付き合うくらいなら……そうね、まだこのカイルの方が全然マシだわっ!」


そう言って隣にいたカイルの頭を抱き締めた……胸に顔が埋まってんぞ…オイ!


「…うっ…ううっ……カイル!覚えてろよっ!うわぁぁぁぁぁぁん!」


さっきよりも更に真っ赤な顔をすると、カイルを凄い形相で睨み付け、泣きながら走り去っていった……意外にピュアな人だったみたいだ……


「……オイ……」

「…あはは………ごめん」


この展開にイリュは笑うしかなかった……彼を颯爽と救い出す筈が、何故か余計に恨みを買う羽目になるなんて……


「…イリュの奴いいな…」

「…えっ?」

「…あっ?…ちっ…違うの…!」


律子の呟きに思わず反応してしまったが、彼女の反応もバレバレなものだった……


「…私もカイルを抱っこしたい…」

「……」


アイリスに関してはもう何も言わないでおこう……うん、わかります、私は空気の読める娘だから……


前略、お母さん、この物語は冒険と戦いのアクション活劇だと思ってましたが、どうやら今はラブコメ要素が高いみたいです……






















「……もういい加減に泣き止んだらどうよ?」

「…うるさい……俺は泣いたりしてへんからな!!」


 トリーは面倒臭そうに良いながら漫画のページをめくった……

なんかこの人意外と打たれ弱いとこあるんだよな……見た目もいかにもな感じだから勘違いされやすいけど……

そういえば、龍ちゃんが髪を染めたのはあの件からだよな……反抗心のつもりかもしれないけど……純なんだよな……

服部と槇村は西園寺の幼馴染だ……子分の様に扱われているからそんな関係なのかと思われがちだが三人の関係は対等である。


「……おまち~ってまだ泣いてたのかよ?」

「泣いてねえって言って……マキー!俺はブラックしか飲まへんって言ったやろ!」

「……それさっきから言い始めたよね?止めときなって、ブラックなんて龍っちゃん飲めないから」


やって来たマキーに缶コーヒーを手渡され渋々プルタブを空けようとして銘柄を見やる。


『甘い男の失恋ビター味』



「………やめた」


 どうせこの二人の事だ……怒らせて気を紛らわせようとしてくれているのだ……ありがたいとは思いつつそんな気にはなれなかった。


「どしたの?アレ?ちょーウケるじゃん」

「だろ?自販機で当たりが出てさ適当に押したらアレが出ちゃったのさ!ミラクルじゃね?」


二人でハイタッチとかしてやがった……一層西園寺の心が落ち込んだ。


「あれ?マキーさっきより落ち込んでね?」

「ホントだ…おーい龍っちゃ~ん……元気出せって……」


今頃慰めにきやがって……遅い…遅いよ!


「馬鹿だな……龍っちゃん……あれは試されたんだよ」

「………な…んだと?」

「そうそう…あれ絶対照れ隠しだぜ?」

「………マジか……だよな?俺もそうじゃないかと思ってたんや」


何気に復活してきた西園寺に二人は眩しいものを見るような仕草で応えた。


(……馬鹿だな……)

(あぁ……馬鹿だな)


「俺もっかい行って来るわ!」








  数時間後……玄関先に火の手が上がり、男性の焼死体が発見されたとかしないとか………



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