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魔眼の使徒  作者: vata
第二章 暗き森の魔女
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ユキノシラベ 3

9/6今更サブタイトルを修正(笑)

「…それで…治療出来たの?」


 今はアイリシアとカイルを除いた女性陣が朝食を摂っていた…今朝の食事もそれはそれは大変に美味でしたとも………


 あの後、駆け付けた紫音によって、カイルは予想どうりにアイリスと抱き合う姿を白い目で見られ

、「変態」と言われた後、少し休むと言い残し部屋に戻っていった……心なしか落ち込んでいるようにも見えた。

アイリシアは一升瓶を抱えて寝ていたのでそのまま放置する事にした。


「…治療は出来なかったの……でも……」


 律子の問いにアイリスは静かに答えた……

今のアイリスはカイルから供給された魔力により、問題なく会話が出来るだけに回復はしていた…

強力な魔法を連発しなければ、2日、3日は大丈夫だと本人は言う。


「でも……私はそこで、カイルと出会ったの」


     ************



 初めての人間界にアイリスは心踊っていた。


「アイリスー見てごらん!」


 5つ上の姉アネモネも普段から活発だったが、この状況に一層テンションが上がっていた。

今二人が居るのは人間界の巨大な病院施設内だった…魔界とは違うもの全てに感動し、心躍らせていた。


「…姉さま……どこ?」


 結果、一人興奮したアネモネはさっさと何処かに行ってしまい、ここに立派な迷子が誕生した。


 一人、とぼとぼと歩いた先には緑の中庭が広がっていた……そこは天窓に覆われており、その中央に一人の少年が座り込んでいた。

彼は目を閉じて天を仰いでいた……

彼もこの病院に入院しているのかアイリスと同じ院内服を身につけていた……それと同じ位の白い銀の髪が風に揺れていた。

彼の場所にだけ日の光が差し込み、まるで祝福を受ける聖人の様だった……

その姿にアイリスは時が経つのも忘れ、見入っていた。


「…こっちにおいでよ…」


彼は目を開けるとアイリスの方を見てそう声をかけた……

 感情を表さない彼女はその存在感……気配すらも希薄でよく家族を驚かせていた……

『…あぁっ!…アイリス…驚いた、そこにいたのね』

……と


彼はいつ、その存在に気が付いたのだろう?……少しその少年に興味が湧いた。

いそいそと彼の元に来ると、その隣に腰を下ろした。


「僕はカイル…君は?」

「…アイリス…」

「うん…いい名前だね……その髪の色も素敵だ」

「…私は…この髪は…嫌い……」


母親と同じ翠色だったのに……投薬治療の副作用だと、私の病気は特殊なのだと、今日此処に来た理由も、彼に話した。

彼はただ、静かに黙ってそれは聞いてくれた…ただ、黙々と何の感情も無い私の話をずっと聞いていてくれた

。家族以外の人とこんなに永く話すのは初めてだった。

不意に彼の手が頭に乗せられた……そして母のように優しく撫でられた。


「アイリスは優しいね……治療を受けているのも、全て家族を守る為だろ?」


思わず彼を見た……何故判ったのだろう?そんな話は一言も話していなかったのだが……

これを言い当てたのは、母に続いて二人目だ。


「君は色々な物を犠牲にしてでも家族を守ろうとしている……それがその髪の色なのだから……やはり君の髪は素敵だよ」

「………ありがとう」


今 私はどんな顔をしているのだろう?この胸の奥が温かいのは何故だろう?

それが『喜び』だと知るのはもう少し先の話だった。



「……あぁ…魔力が低下してるね……ごめんね 無理をさせちゃったね」


そういって自分の手のひらに私の手を重ねた……

その手から、温かな波動を感じた…………魔素だ。

それは母や姉達が提供してくれる物よりも遥かに純度が高く、本来アイリス自身が自身で生成するはずの魔素と酷似していた。

それはカイル自身の体内魔力を、アイリスの持つ魔力に『変換コンバート』してからこちらに送り込んできていた。

通常、血縁者ならまだしも、赤の他人の魔素にコンバートすることなど天文学的数値に等しい確率であった。


「……あなた……何者」

「カイル:アルヴァレル…………お節介者さ」



   *******


「さて…盛り上がっている所で悪いが、そろそろ時間だぞ」


カイルの言葉に全員ハッとする……不味いっ!!

相変わらず、一升瓶を抱えたまま、寝ぼけ眼のアイリシアに見送られ慌てて学園に向かうのだった。




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