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魔眼の使徒  作者: vata
第二章 暗き森の魔女
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ユキノシラベ 2


「?何か聞こえた気がしたけど……気のせい か」


 全く空気が読めていないとは露知らず、イリュの部屋で眠るイリュのほっぺを弄んでいた。

さて、気を取り直して……ふと、イリュと目が合った。瞬間、イリュに抱きしめられベッドの中に引き込まれる。


「ああっ!ついに私の思いに応えてくれたのね! 紫音!」

「ちっ!……違っ!ぎゃー」


 瞬時にマウントポジションを奪われイリュの両手の指がわきわきといやらしく動いた……これは……ヤバいっ!


「ちょっと待って!」

「…大丈夫……優しくしてあげるから」


 あ…目が本気だ……イリュの目が血走っていた……本気で貞操の危機を感じた!!


「あっ…あのねっカイルが起こして来いって…アイリスの魔力が少ないからってー!!」

「最初はそうね胸を…………何ですって?!」


イリュの顔から笑みが消えた…イリュが素早く手を振りぬくと同時にベットの横にゲートが開かれた…

向こうはリビングでソファーの上では同じようにアイリスがマウントポジションでカイルと熱い接吻をしている様に…………見えた。


衝撃インパクト!」


 イリュの行動は素早かった。

左手をアイリスに向け、瞬時に衝撃の呪文でアイリス弾き飛ばした……が、彼女は即座に障壁でその衝撃を相殺した。

 と、同時にイリュはゲートからリビングに跳躍しアイリスの上に馬乗りになり制圧した。

そこでゲートは閉じてしまった。


「………………取り合えず私の貞操の危機は去ったみたいね……」


 事態についていけない紫音は我に返ると慌ててリビングに向かった。





    **********


 突然ゲートが開かれたのには驚いた。

恐らく(ラプラス)がカイルの危険を察知してイリュを呼び寄せたのでしょう。

不意を突かれカイルと引き離されてしまい、イリュに馬乗りにされてますが、今の私なら問題なく排除出来るでしょう。


右手にゆっくりと魔力を集めイリュに向けて……


「アイリス…負けるな…」


イリュの言葉に動きを止めてしまいました……一体私が何に負けると……


「…このままではカイルが危険だ!」


 その言葉に私は意識を取り戻しました。

彼から流れ込む生命力は余りにも甘美で心地好いモノなのです……

それは私の中に魔力の発生を促すと共に、眠っていた私のなかの眠っている魔性を呼び覚ましてしまいます。

それは貪欲に周りの全てを滅ぼすまで止まる事は無いでしょう ……

しかし、彼は特別です、この命と引き換えにしても失ってはいけない存在なのです……


直ぐに私はイリュの下から這い出すと彼の元に駆けつけました…


「…やり過ぎだってーの……」


 彼は力なく笑いました……

その唇に再び唇を押しあて彼から奪った生命力を必要な分だけを残し送り返しました。

生命力返還リバースフォース

サキュバスの血筋の者だけが使える、蘇生術です。

やがて彼はゆっくりと起き上がりました。


「…危なかったな…」

「…ごめん…なさい…」

「だから、自分を責めるなって…」


 私が暴走した時はいつもそう言って頭を撫でてくれる…あぁ…良かった……この人の命を奪わなくて……

良かった……イリュが止めてくれて……

私は悪魔だけど神に感謝した。



     私の病気


(先天性魔素生成器官疾患)

こちらの世界で言えばこんな病名だろうか?

魔族は体内に魔素を生成する器官を持っている。

それは本人のみに適正した魔素でこれがないとどんな強い魔族でも生きてはいけない。

アイリスは生まれつきこの生成器官に異常があった。

魔素を生成していなかったのだ。

彼女の両親は生命の危機に瀕した我が子を救う為に二つの選択を迫られた。

……肉親の魔素を移植するか……

……適合者の生成器官を生体移植するか………


 そして自らの魔素を移植する事を選んだ。

移植と言っても手術をするわけではない。

相手の体に触れて、自分の魔素を相手に送るだけ良い。

しかしそれが大変に困難な作業なのだ。

適性検査の結果、異性である彼女の父と兄は不適合とされ、母と二人の姉が候補に選ばれた。

まだ幼い二人の姉の事を考え、母が一人で彼女の看病を行った。

一日数時間で順調にアイリスは 生命の危機から救われる。

周囲が安堵 したのも束の間 彼女の母が疲労の為に倒れてしまった。

親子とはいえ 魔素の成分誤差を5%未満に抑えなければ激しい拒絶反応を起こしてしまう。

二人の姉は母と妹の為に交代で魔素の移植を続けた。


母から伝わる暖かな波動は母の魔素である。

それは腕を伝わり胸の奥へと集まる……やがてそこに僅かな疼きを感じた……本来アイリスの魔素を作り出すはずの器官が反応しているのだ。

やがてそれは力強く、自分の力で動き出すのだった……僅かだが…魔素を生成し始めたのだった。

その現象はほんの数秒で収まってしまうが、迎え水のように魔素を送り込む事で治療への希望が見い出せたのだった。


 しかし二人の姉と母からの移植はアイリスを再び死の縁から助け出すと同時に……

本来は眠り続ける筈だった力までも目覚めさせてしまった……

それは伝説に名を残す恐るべき存在…その力は全ての生命を奪い去り動く物一つ無い世界を作り出す存在………

しかし、誰一人として気が付かなかった……ただ、アイリス一人を除いて。



 それからの彼女は頑なに移植を嫌った。

自分の命が危ういとしても、母と姉達を自分の手により殺してしまう事を恐れたからだ。

確立されていなかった、投薬治療薬や新しい術式の治癒魔法 等の被験者に進んで名乗りを挙げた……

副作用で髪の色が変色したり、激痛に耐える日々が続いた……


ある時、人間界に新しい治療法があると聞き、父親と二番目の姉と一緒に人間界にやってきたのだった。

治療出来ると期待に胸を膨らませてー。





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