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魔眼の使徒  作者: vata
第一章 始まりの詩
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カノジョノジジョウ7



「…こんなものかしらね」

「はい、ありがとうございます」


片付け終わった室内を見てアイリシアが立ち上がった。イリュやアイリスもそれぞれ体を伸ばしている……


結論から言おう!………


引っ越した!


いや…


引っ越しさせられた!!












      *******







「…よし、イリュこれ持って今から紫音の部屋に


一緒に行ってこい」


そう言ってテニスボールみたいな物をイリュに投げて渡した。


「…あぁ…魔球ね」

「魔球?」

「ふふっ…見てのお楽しみだよ…行こう」


イリュに手を引かれ外に出る…朝は気にしなかったがこの辺りは『山の手』と呼ばれる高台のややセレブレティな家が建ち並ぶ地域である。

もう一度言おう!セレブレティな地域だ!


周囲を見渡しても、豪邸と呼ぶに相応しいものばかりだ。

しかしその豪邸よりも一際目を引く立派な建物……このアイリシアの寮だ。

……………最後のケーキを譲るんじゃなかった。


やや緩やかな坂道を下った所に警備員の詰所があった。


「イリュちゃんおはよう…今日はお友達と一緒かい?」


詰所の前に立っていたダンディなおじさんが笑顔で声をかけてきた。


「おはようございますガストンさん…彼女が紫音だよ…今から紫音の家でお楽しみなんだ」

「!!…そうか…君が噂の…そうか…二人でお楽しみ…羨ま…ゲフンゲフン…はっはっはっ」


………噂のってなんだよ!お楽しみってなんだよ!……ちょっとガストンさん……そんなに頬を赤らめないで……そんなに潤んだ瞳でこっち見ないで!

…………あと何で前屈みになってんだよ!


「…ゲート使うね」

「…行き先は?」

「…駅前が近いかな?」

「…ふむ…急ぎの様だしわかった、許可しよう」

「ありがと」


イリュはそう言って詰所の隣の建物に入る。

入口でセンサーに魔導リングをかざす。

イリュに促され、同じ様にリングをかざした。これでゲートの使用許可を取るらしい。

扉が開いたので中に入ると、ポツンと大きな姿見の様な鏡があり、暗く何も映らない…

学園を中心に市内主要箇所に配置されている『転移門ゲート』である。

使い方は簡単で行き先を念じながら潜るだけだ。

これは異世界を繋げた技術を小型化した物で非常に便利である。

それ故に、学園長及びユグドラシル都市国家市長は利用を控える様に呼び掛けている。

これはあくまでも緊急の移動手段であり、人は本来の生活をするべきと提唱している。

実際はゲート通過には体力、魔力を消費してしまうのでよほどの事がない限り使用する事はない。

そもそも警備員詰所と併設なのは、犯罪行為に利用をさせない為と管理が目的だからだ。


「いくよ?」


イリュが私の手を掴み、ゲートを潜る。

水の中に身を投じる様な感覚、一瞬の浮遊感、次の瞬間には駅前の詰所横のゲート施設内にいた。

壁のセンサーにリングをかざすと、正規の手続きを行った事が確認され、出口専用の扉が開いた。


「……初めてゲートを使ったから…少し感動」

「えっ?マジで?」

「だって、転入の説明の時に使用は控える様にって……」

「……真面目だねぇ」


そう言って私の頬を指で軽く突いた。

少しだけからかわれている様な気がしたが不思議と嫌な気持ちでは無かった。

イリュの存在が特別なのか……私が少しずつ変化しているのか…




「あぁ…やっぱり紫音の部屋は落ち着くなぁ」

イリュは部屋に着くなり、ベッドにダイブした……何だか魔族に対してのイメージを改める必要がありそうだ…


「…おっ」


イリュは突然身を起こし魔導リングを指でなぞった


「もしもし」

『着いたか?』


リング越しにカイルの声が聞こえた………んっ?……んん~っ?

そんな機能あったかな?


『こちらは何時でもいいぞ』

「了解!直ぐに始めます」


会話を終了すると、魔球を取り出し部屋の中心に配置した。


探索サーチ対象固定ロックオン


イリュの声に反応して球体が開き中からレーザー光線の様な光が幾重にも室内を照らしてゆく……

やがて光が収まると 赤い光の照準が部屋の私物に表示される……


安心タンセ・安全シコッヒ・の引っトモツマし」


イリュによる詠唱? が終るとロックォンされていた荷物が全て球体の中に吸い込まれてゆく………

やがて室内は何もない状態になった。


「……今の何?」

「引っ越し専門の転移魔法…大丈夫だよ!いい仕事するから」


何だか私の中の魔法に対する常識がなんと言うか……まぁいいや

イリュは魔球を回収するとドアにくっ付けた。


転移門開門ゲートオープン


そのままドアノブを捻ると……部屋に繋がった。


「さぁ、さっさと片付けるか」


向こうの部屋には カイル達と私の部屋を再現した荷物の山があった。


こうして荷物は私の意思とは関係なく片付けられた。





「…こんなものかしらね」

「はい、ありがとうございます」


片付け終わった室内を見てアイリシアが立ち上がった。

イリュやアイリスもそれぞれ体を伸ばしている……


もう一度結論から言おう!………


引っ越した!


いや…


引っ越しさせられた!!









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