カノジョノジジョウ5
「紫音……直ぐに此処に引っ越せ」
「………はっ?イキナリそんな事言われ…」
「理由は2つある」
突然の言葉に反論したが遮られた…
彼の目が真剣だったので大人しく話を聞くことにした。
「一つはその魔眼…何故隻眼なのかは解らないが……隠れ姫についてだ」
「「「?!」」」
私だけでなくイリュとアイリスも驚いた様だ……
「…隠れ姫……それが…この魔眼の名前?」
「ハッキリとは言い切れないが……恐らく間違いないだろう…前回の戦いといい、属性も魔法レベルも法則を無視している…基本の六大魔眼(火、水、風、土、光、闇)に当てはまらない…多属持ちは他にも居るが、相反する属性を効果に持たせる何て事は普通の保持者では不可能な芸当だ…水効果を持つ『大地の鎖』(ガイアチェーン)とかの時点で明らかにその存在次元が違う」
「「?」」
ばれていたか…何も知らないイリュ達は頭に?が浮かんでいるが…
「あの大地の鎖は…効果をより得る為に本来土属性の効果を落としてしまう水属性の効果を付与していたんだよ」
再びイリュ達は驚きの表情をみせる……本来、水は土に染み込みその強固さを奪ってしまう。
「…凄いね……隠れ姫……」
アイリスの言葉に『えへへ』と
照れた笑いを向けた。
隠れ姫…隠れ姫…何度もその名を繰り返す…幼い日より特異な物として扱われてきた私の目……私の魔眼……
突然変異だとか…実験対象だとか…専門施設に訪れても研究対象としか見られる事しかなくてやがて私はこの眼を人前に晒す事をしなくなった。
名前があるという事は、ちゃんとした魔眼であり、恥ずべき事ではないという事だ。
「……隠れ姫であるならば…非常に問題だな…」
「………はい?」
なんでなんで?これで私普通の生活を送る事が出来るのに……
「…今までその魔眼のお陰で並みならぬ苦労と絶望を味わって来ただろう……その正体が判って今は喜びたいだろうが…問題はこの隠れ姫がレア中のレアだという事だ」
「…そうね…変わった魔眼の保持者だとは思っていたけど…まさか…隠れ姫だなんて…」
イリュもアイリスもやたらと深刻そうな雰囲気だ…何だか心配になってきた。
「ヤバい魔眼なの?」
「…魔眼の頂点である『魔導王の秘宝』その覚醒の鍵を握る二つの魔眼のうちの一つが『隠れ姫』だと言われている」
「…魔導王……」
確か、シロンとクロンもそんな話をしていた様な……
「…その様子だとチャットルーム辺りでナビゲーターに話を聞かされたか?」
「?!知ってるの?チャットルーム」
「…上位魔眼や上級悪魔(天使)の中に希にその能力を保有する者がいる……ならば魔導クラウドの話も理解しているな?」
「……魔導王の本棚の事でしょ?」
「…本棚?…まぁそうとも言えるかもな」
イマイチ話についてこれていないアイリシアはテーブルの上のケーキを完食してしまった……イチゴショート欲しかったのにな……
「世界各国が魔導王を手に入れようとしている……つまり魔導クラウド全ての掌握が狙いだ」
「…何でそんな事……」
「…禁呪や古代魔法……他国を出し抜いて、優位に立ちたいのさ…つまり今まで以上にその魔眼の存在を秘密にする必要性は高い…」
………つまり…私は世界から狙われているって事でおK?
「そうだ」
「そうね」
「…そう」
「このクッキー美味しいわね……」
『肯定』
『違いない』
脳内の二人も含めて全員(約一名は除く)が答えてくれた。
「その問題は取り合えず今の所は大丈夫だが……一番厄介なのは二つ目の理由の方だ……」
二つ目って……まだ何かあるの?
「…紫音の『結界破り(ブレイクスルー)』についてだ」
…………はぃ?