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魔眼の使徒  作者: vata
第一章 始まりの詩
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カノジョノジジョウ1


食後、紫音とイリューシャは二人で片付けをしていた……恩返し…とは大袈裟だが、紫音なりの感謝として何かせずにはいられなかった。

なので普段もやっている皿洗いをすることにした。ちなみにイリュは隣で皿を拭いている。


「えっ?ご飯ってカイルが作ってたの?」


イリュから聞いた事実に危うく皿を落としそうになる……意外だ。


「アーガイルは無理だけど…カイルの腕前は確かだよ…駅前のレストランでコックのバイトしてるもん」

「……じゃあ毎朝の食事も…」

「うん…大方カイルが作ってるよ」


 こんなに美味しいのに…それよりも自分のところに来てくれていたイリュに対して嬉しさがこみ上げてきた。


「そっか…以前言ってた『彼』ってカイルの事なんだ…でもこれって……同棲?」

「え?…いや…別に彼って言ったってその特別な存在と言うか…特別な存在なんだけど……」


イリュにしては何か歯切れの悪い返事を返してきた。

彼氏彼女の関係ではないのか……多分……


「…ふふふっそれはね…御主人様と肉奴隷の関係なのよっ!

毎晩毎晩あんな事やこんな事をっ!!!」

「教育的指導っ!」


突然現れたアイリシアの爆弾発言に これまた廊下から現れたカイルが手にしていた新聞紙でその頭を叩いた意外に良い音が室内に響いた。


「もう…思いきり叩く事ないじゃない!癖になったらどうすんのよ!責任とってよねっ!」

「はいはい…」


二人のやり取りを見ながら隣のイリュに視線を向けると耳まで真っ赤にして俯いていた。

……何だろな~二人供アイリシアさんの発言を肯定も否定もしてなかったなぁ……


「どちらにしても、巻き込んじゃったんだから事情の説明くらいしてあげたら?」

「……これ以上は巻き込むつもりは無い、全て忘れて元の生活に戻るのが一番だ」


ソファーに座ると話は終わりと言わんばかりに新聞を広げた……『その話題はするな』と、言わんばかりの不機嫌なオーラが漂っている。


……全て忘れる?…昨日の夜の出来事を?

魔眼を使い、あの妖魔達の命を奪い去り…イリュの為に戦い、私自身がこの魔眼と共に歩む決意をした事も?

そこには私の意志があり、私にしか理解できない苦悩があった……それを乗り越えた昨日の夜の出来事を忘れる事など……


「…嫌…嫌だよ!忘れるなんて出来ない!」


 普段の紫音からは想像が出来ない様な声でテーブルを叩いた。

そんな彼女をカイルは新聞を下げると刺す様な視線で見つめた。

意思の強さを表す様にそれを真っ向から見つめ返した……今までの私ならば目をそらし昨夜の事は忘れ、再び日常に戻っていただろう……

しかし今の私は何の為にこの学園都市に来たのか思い出していた…

『もう、過去の自分から逃げるのは辞める』

今がその時では無いのだろうか?

全てを魔眼のせいにしてこの魔眼とは距離を置いて来たつもりだったが ……これまでの人生に後悔をしていたのも事実だった。

それならば……いっそこの魔眼と向き合ってみよう。

それが 夕べ一晩彼女なりに考え抜いた答えだった。


「……ついてこい」


 やれやれといった様子で新聞をたたむと廊下に出た。

紫音は慌ててついてゆく。イリュとアイリシアも続いた。

廊下を渡りきりその先に長い廊下があった。

突き当たりの扉を開くと、そこは道場の様な場所だった。

先に歩いていたカイルは中程で振り返り紫音が来るのを待っていた。


「…先ずはお前の力が見たい」


 その言葉に一瞬躊躇ったが、先ほどの決意を思い出し 室内に足を踏み入れた。

イリュ達は室外から見物する様だ。

私が此処に来た理由―

―此処は私のような保持者が前を向いて進める……魔眼の楽園なのか?ー

それを確かめる為ならば……私は自ら封印したこの魔眼すら受け入れよう!

…昨夜、自分の意思で魔眼を発動させた時から、彼女の意思は強く、成長していた。


「…貴方に手加減は必要ないわね……」

「そうだな…全力で来い」


以前の様な躊躇いは無かった……私を試すと言うなら試すが良い。

私は貴方を利用させて貰う、私と私の魔眼の力を確かめる為の実験をさせて貰うっ!


「…しっかりと痺れさせてあげるんだからっ!魔眼発動!」



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