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魔眼の使徒  作者: vata
第三章 ドリームウォーカー

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姫巫女48殺人事件


 一人の女性が床に倒れていた……その純白のドレスは、夥しい量の赤い液体で染められていた…手元にはコップとテーブルクロスを引っ張ったのかナイフやフォーク…ピッチャーなどが散乱していた。

床一面に広がる血の海…その中央に横たわる人物……伊集院麗華であった…

彼女の友人達が周囲で取り乱していた……


「麗華さん?!なんで?!」

「雪っちゃん落ち着いて…よく見て…これは血では無いわ…」

「えっ?」


 慌てた雪を宥める絢音の指摘通り…床一面に広がるのは血ではなく…


「…トマトジュース?」

「そう言われたら…この匂い…」

「おそらくテーブルの上のピッチャーに注いであったのはトマトジュース…倒れた拍子に……という事であろう…」


 突然現れた翡翠さんがどこぞの名探偵の様に分析を始めた…いつの間にかフレームの太い黒いメガネと蝶ネクタイをつけている。


「ねぇ!貴女達!麗華さんは一体…」

「わ、わかりません…食事をしようとしたら突然…」


 雪っちゃんが麗華さんの取り巻きグループの三人…モブ子とモブ美とモブ代に詰め寄った。


「一体何があったの?」

「私達は……」










「ふぅ…今日の修練も無事に終わりましたわね…」


 麗華達は食堂にやってくると手頃な席に着席した。


「でも麗華さん今日はカラオケで歌ってばかりでしたよね?」

「モブ美!あれは…詠唱の為の発声練習ですわ!」

「そうよモブ美…麗華さんが遊び呆ける訳ないでしょ!」

「モブ代の言う通りよ…全くモブ美ったら…」

「そ、そうですわ…勘違いしないでくださいまし」

「そうかーすいません麗華さん」

「「「「あはははははは」」」」


 麗華さんも真面目でツンデレで分家でも更に下の方の家の私達にも気遣いの出来る優しいお嬢様だった。

幼馴染な事もあり私達四人は気がついた頃にはずっと一緒にいた。

 私達はそれぞれ家柄も取り柄も才能もない娘だったが、人並みの魔力と陰陽の才能だけはあった。

そんな私達をいつも叱咤激励し励ましてくれたのが麗華さんだった…


「ところで…雪さんは良いのですか?」

「…良い訳ないでしょ…しかし…莉子様と絢音様の所に居るのだから安全でしょ…私達と一緒に居ても息が詰まるでしょうし…」

「…麗華さん…」


 麗華さんだって理解しているのだ…本家の決定だから麗華さんも雪さんも逆らえない事に…しかしこれまでの麗華さんの努力を考えると…


「…私も…大人気無かったわ…雪さんには何の悪気も無いんだもの…八つ当たりなんて恥ずかしいわ……明日にでも話をして…出来たら仲良くしてもらえたら嬉しいのだけど…」

「「「麗華さんっ!!!」」」


 やはり私達の麗華さんは優しくて不器用でチョロインの才能を秘めたお嬢様だった。


「?!何っ?」

「?麗華さん?」


 突然麗華さんが席を立ち上がり視線を目の前に向けたままそう言った。


「あなた…何を?…何を言ってるの?!」

「麗華さん?!」

「はうっ!!」


 麗華さんは突然雷に打たれた様に体を硬直させるとテーブルクロスを掴んで倒れてしまった…テーブルの上のコップや皿が大きな音を立てて散乱した…


「麗華さん!!」

「だ、誰かっ!!」


 慌てて駆け寄ると溢したトマトジュースが麗華さんのドレスを血の様に赤く染めた…











「ふむ…彼女は突然倒れたのだね…魔法を使用された痕跡もないな…」


 翡翠さんが麗華さんの周囲をウロウロと探っている…

床にこぼれたジュースを指につけて匂いを嗅いだ…


「…毒物でも無さそうだ…」

「ど、毒物?!…そんな…」


 モブ子さん達は動揺している。

彼女達からしてみれば麗華さんは人から恨みを買うような人物ではない…


「莉子様!絢音様!何事ですか?」

「沙織!」


 そこに南條門沙織が合流した。

同じ南條門の派閥の娘達も一緒だ…この騒ぎを聞きつけてきたらしい。


「何かあったのですか…?…麗華さん?!」

「私達も今来たばかりで…」

「えーとですね…」

「先生!こちらです」


 莉子が簡単に説明を始めると同時に

ホテルスタッフが白衣の女性を連れてきた…



「…姉様?」

「おや?アイリスじゃないか…」

「え?アネモネさん」


 現れた医者はユグドラシルの学園校医でもありアイリスの姉でもあるアネモネだった。

何故こんな所に?ご飯でも食べに来た?いやいや…


「何故こちらに?」

「いや、知り合いの方から紹介されてね…ちょっとしたアルバイトだよ…」

「…職員の副業は禁止…」

「いや、無償だよ!本当だよ!決して食事に目が眩んで引き受けた訳じゃ…」

「本当にご飯食べに来てた……」

「先生!早く患者を!」

「おっと…話は後だ…」


 アネモネは倒れている麗華を診察する…

周囲の者達は固唾を飲んでそれを見守った。


「まさかこんな事になるとは…」


 翡翠が立ち上がり周囲を見回した…何か始まったぞ。


「栄光ある巫女姫のセンターの座を巡ってこんな凄惨な事件が起きてしまうなんて!!容疑者は参加者48名!これより捜査本部を設置して『巫女姫48殺人事件』の真犯人を「…ふむ…命に別状は無いな…」…えっ?」

「「!!本当ですか?!麗華さんっ!!」」


 翡翠さんが全員に指を突きつけようとして…行き場をなくした指を下げると両手の人差し指をついついと合わせ始めた……麗華の取り巻きの女子達は安堵の表情を見せた。


「今は意識を失っているが…その他に外傷は見当たらないな…とりあえず安静に寝かせよう」

「そうですか…疲れが出たのかもしれませんね…」

「麗華さん…よかった…」

「今夜は様子を見て…明日もう一度診察しよう」


 モブな友人達にも笑顔が戻った……

 ホテルスタッフの女性達により麗華さんは運ばれて行った…アネモネも付き添いの為一緒にその後を追った…

一瞬振り返ったその視線は何か不安を押し殺している様にも見えた……


「あ、お掃除手伝いまぁ〜す」

「こ、困ります!翡翠様!!」


 あんなにはしゃいでいた翡翠さんはすっかり小さくなって床を雑巾掛けしてスタッフを慌てさせていた。


「思ったよりも面白い人だね」

「翡翠さんは聡明で博識…北神堂の頭脳と呼ばれる方です……でも面白い人ですね」

「…頭脳…?」


 やはりミカイル臭がするわね……


「……?そういえば今日はミカイルさんが大人しいわね…こんな場面絶対に好物のはずなのに…」

『昨晩騒いでいたので押し入れに押し込んだままですが…確認しますか?』

「…いや…今はいいかな?」


 何だかウチの賢者が強いんですけど…ベースがカイルだからミカイルさんも逆らえないのかな?


「さて…大丈夫かしらね……絢音さん?」

「…え?何かしら?ごめんね驚いてしまって…」

「んー……何か聞こえました?」

「な…ナンノコトカシラ……」


 「サトリ」の能力で犯人探しをしているのかなーと思ったが……どうやらその通りだった様だ…

カイルから禁止されているから一応、罪悪感を感じているらしい…


「言いませんよ…それでないか手がかりが?」

「うーん…それがよくわからないの…凄く混濁してて…混乱してて…この場の皆んなが動揺していたからかも…でも…うーん」


 絢音は何か考え込むように唸った…

犯人につながる物があるかもと周囲に対して『サトリ』の力を使用したが……

鮮明に聞こえるはずの声がノイズ混じりでハッキリと聞こえないのだった……こんな事は初めてだった。

隣にいるはずの紫音からですら心の声が鮮明に聞こえない…


「…紫音ちゃん旦那様の事好きよね?」

「な、何言ってるんですか?!」

(…わ…の事……な………の?)

「口ではそんな事言ってるけど結構好きよね?」

「揶揄うのはやめてくださいね…」

(@$…な……!!…よ……ら!!)


 能力はちゃんと発動している…なのに何故だろう?


(ふふ…まだ宴は始まったばかりよ)

「?!」


  突然鮮明に聞こえた心の声に絢音は周囲を見回した…

この出来事を楽しむようなそれでいて我々を嘲笑っているような…


「一体誰が?…」

「絢音さん?」

「皆さん…食事をとって今夜はゆっくりお休み下さい…麗華さんは日ノ本家が責任を持って手当いたします」


 莉子がその場で宣言すると集まっていた娘達がそれぞれ思い思いに行動を始めた…


「麗華さん大丈夫でしょうか…」

「雪ちゃんは優しいわね…莉子に任せましょう」

「…雪はしっかりご飯を食べる…」

「絢音さんも…行こう…」

「ええ…」

「私もこのまま皆さんと一緒に行動してもいいですかね?情報の共有もしておきたいですし……」

「…沙織も一緒に今夜はパジャマパーティー…」

「ぬ…仕方ない…沙織殿にも莉子様のパジャマ姿を閲覧する権利を認めよう…」


 立夏の謎のマウントに周囲から苦笑いが起こる……

沙織は同じ派閥の子達に別行動を告げる…


「…私達も食事にしましょ…」

「はいお姉様」


 アイリスの言葉に莉子が力強く頷いた…


「あの〜私もご一緒してもいいでしょうかぁ…」

「…翡翠さん?」


 何故が我々の背後には北神堂翡翠が一緒に居た。

先程まで見せていた凛とした姿とは違い自信無さげにチラチラとコチラを伺っていた。


「お連れの方々は…」

「…残念だが…そんな人達は居なくて…」

「…翡翠も一緒に来たら良い…」

「!!感謝するよ!」


 何かを察したアイリスが声をかけると急に元気を取り戻し一緒にテーブルへと座った。


「いやーまさかこんな事になるなんて…莉子様も大変だと思うが此処はみんなで協力して…」

「ええ…そうですね…」

「ちなみにこのテーブルにある食事は北神堂家の系列から……」


 着席と同時に、食事の説明やいろんな話題を振る翡翠の独壇場であった…

黙々と食事を進める全員との温度差が異常さを感じさせた。


「アイリス様は所作も洗練されて素晴らしいですね」

「…翡翠…五月蝿い…」

「莉子様!この料理美味しいですよ!」

「ええ…先ほど聞きましたけど?」

「!翡翠様!それは私の役目だ!!」


 なんというか…話を聞いていない…舞い上がってる?


「…何かイメージとだいぶ違いますね…」

「そうね…もっと物静かなイメージだったのだけど…」

「うーん焦っている?少しテンションが異常ね…」

「事件について何か知っているのかしら?」


 一番離れている席の紫音と絢音は翡翠の行動に疑問を抱く…

まさか莉子やアイリスを狙って?!二人は翡翠の挙動に目を光らせた…









「何事も無かったわね…」

「そうですね…」


 紫音と絢音の警戒は無駄に終わった…

常に喋り続ける翡翠を警戒し手いた二人は食事も満足に出来なかった……

狙っていた最後のスイーツも立夏に掻っ攫われてしまうほどだった……


「それでは皆様ゆっくりお休みください…」

「あ…」


 莉子の挨拶でそれぞれが部屋へと戻ってゆく…

我々も部屋へ帰ろうと行動する……と

翡翠が一瞬躊躇う様な表情を見せた…


(!?何か仕掛ける気?!)


 紫音と絢音が反応しようとした瞬間…


「…翡翠も一緒に来る…」

「「!?」」

「!良いのですか?!」


 別れ際に寂しそうにしている翡翠に対し、アイリスは同行を促した。

紫音はアイリスに近づくと耳元でそっと囁いた。


(アイリス!何を考えてるの?!もしかしたらこの人は…)

(…大丈夫…)


 その後は全員で宿泊しているフロアに戻ってきた……アイリスの立場を考えれば最上階のVIPルームをワンフロア貸切であった。

初日は『最上階かあ……』とアイリスと二人で学園のマトリーシェの氷塔での出来事を思い出したが、そこから見える景色は別物であった。


「おお…流石は日ノ本家…アイリス様には良い部屋を用意できた様だね」

「翡翠様のご忠告のおかげです」

「…翡翠も堪能したら良い」


 部屋に入るアイリスと莉子と翡翠…その後ろを紫音と絢音が警戒しながら追従する……最後尾には雪と沙織…殿は立夏であった。


「今日は色々ありましたから…入浴を済ませて早めに就寝しましょう…」

「流石は莉子様…本日もお背中をお流しします」

「…じゃあ…私は翡翠に洗ってもらう…」

「!?…いいのでしゅか?」


 アイリスの宣言に翡翠の語彙力が低下した。


「ちょっとアイリス…今日は私の番ですよ?」

「…絢音…代わりに私が洗ってあげる…」

「え?でも…アイリスは私の胸ばっかり……」


 絢音が思わず顔を赤て両腕で胸を隠した…


「「「「ぐはっ!!!」」」」


 翡翠と紫音と雪と絢音が胸を抑えた…


 こうかはばつぐんだ!


「!!絢音さん…羨まけしからんですね…私も洗って差し上げます」

「え…それはちょっと…私は旦那様専用ですから」

「ぐはっ!」


 ひすいにかいしんのいちげき!


「遊んでないで行きましょう…」

「そうね…私はどの部屋を使えば?」

「私の部屋別途余ってるから…いいよね雪ちゃん」

「はい紫音さん…」


 急遽参加した沙織は紫音と雪の相部屋に…

翡翠は絢音とアイリスと莉子と同室になった…立夏はなぜか莉子の部屋の前で寝ずの番をすると言い出した…

もう好きにさせたらいい……


「…絢音さん大丈夫?」

「え?ええ…大丈夫よ…翡翠さんは…大丈夫そうね」

「そうね…なんか隠してそうだけど…害意が感じられないもの…」


 今も凄く楽しそうにアイリス達と会話をしている…孤高の存在の猫が急に尻尾振って擦り寄ってきたみたいな…

自分にも思い当たるフシがある…これ友達がいないな…自分で言ってて少し悲しくなった…

今はみんながいるから大丈夫だもん!

……猫といえば…ニャオンは大丈夫だろうか?念話も通じないし…この近くに存在を感じられない…『大丈夫』な事だけは感じられるのだが…まあ…カイルが一緒だし……


『…紫音ちゃん旦那様の事好きよね?』


「!!」


 先ほどの絢音の言葉を思い出し、なぜか顔が熱を帯びた…

絢音さんが変なこと言うから……


「紫音さんどうしました?顔赤いですよ?」

「!?雪ちゃん…そ、そのお風呂楽しみだなーって」

「そうですよね!ここのお風呂凄く大きくていいですよね!」

「ほう…それ程か…」

「はい!沙織さんもびっくりしますよ!」

「それは楽しみだ…」


 その後、お風呂に入りわいわいと堪能した……

アイリスの宣言通りに洗ったり洗われたり…

翡翠さんが飛び込んだり泳いだり…

ここ最近では凄く楽しかった……

しかし最後まで絢音の表情が晴れる事はなかった。





















『呑気なものね…』

 

 だってこんな経験なかなかできないでしょ?


『…呆れた…少しは危機感を持ちなさいよ…』


いや…だってこんな高級ホテルなんて一生縁がないと思わない?


『そ…それは…まあ…確かにそうかもしれないけど…』


 ほら…貴女だって興味津々じゃない。


『う…それよりももっと警戒しなさいよね!』


何に警戒しろと…


『呆れた…此処がどこかわかってるの?』


 ここは……えっと…?あれ…ここは一体………


視界全てを真っ白な光が埋め尽くした。











「…様…紫音姉様!」

「?!…莉子…?」


 どうやら夢を見ていたようだ…莉子に揺さぶられて目が覚めた…


「どうしたの…え?まだこんな時間じゃ…」

「絢音お姉様が!!」

「?!絢音さんがどうしたの!」

「何事ですか?」


 同室で寝ていた雪と沙織も起きた様だ…

 涙目の莉子に只事では無いとベッドから抜け出し三人は莉子と共に絢音の部屋に向かった。




「絢音様!絢音様!」

「翡翠さん…アイリス…」

「…絢音が起きない…」


 聞けば絢音と一緒に住み始めて毎朝絢音がアイリスを起こしていたらしい…

今日は絢音が起こしに来なかったので不審に思ったアイリスが絢音の様子を見て気がついたらしい…


「どうしたアイリス…」

「…姉様…絢音が…」


 そこにアネモネがやってきた…立夏が読んできた様だ。

ベッドの綾音に近寄るとテキパキと診察を始める…


「ふむ…異常は無いな…心拍も脳波も問題ない…言ってしまえば『眠っている』状態だ…」

「…昨日の麗華はどうなったの?」

「うむ…今も目覚めない…絢音と一緒だよ…『眠っている』状態だ…」

「麗華さん…」


 雪が心配そうに声を漏らした…


「ふむ…これで四人目か…」

「?!え…四人?」


 アネモネの言葉に全員が反応した。

一体何が起きているの?

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