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魔眼の使徒  作者: vata
第一章 始まりの詩
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ワカクサノニワ7



……前略お母さん。

私は今何故か正座させられています。

イリュとアイリスも一緒です。

目の前のソファーにはカイルが顎を冷やしています。

その隣でアイリシアさんが笑顔なんだけど……笑顔なんだけど、決して笑ってはいません……怖いです。


「あのね、使い物にならなくなったらどうするの?」


……どうするのでしょうか?


「困る」

「悲しい」

「…わかりません」


イリュ、アイリス、私の意見だ。


「それにこんな夜更けに大騒ぎして……変態変態と連呼して、通報されたらどうするの?」


「困る」

「悲しい」

「…すいません」


「…まぁいいわ…皆怪我も無かった事だし……」

「……俺は?」

「あのね、カイルちゃん、良い思いしたんだからそれくらいは我慢して当然と思うのだけど……ねっ?」


何故かこちらを見るアイリシアさん………見ないで……

制服は洗濯してしまったものだから、代わりに大きなYシャツを着ている。これはアイリスが貸してくれた。


ふとカイルと目が合い何となく気まずい雰囲気になる……とゆうか恥ずかしい。


「…それと、あんた達!直ぐに魔法を使わないの!キレたらポンポン爆破してるから魔族はアホの子だって思われるのよ? 」


立ち上がるとイリュとアイリスの頭をぺしぺしと叩いた。


「…でも…お姉ちゃん…」

「…アイリス…貴女にとって魔力は命そのものなのよ?痴漢退治に半分も魔力を使ったりしたら駄目でしょ?」

「……痴漢じゃねぇよ…」

「……姉妹なの?」

「いや、こちらの世界でって意味で」

「…お前ら、本っ当に人の話聞かないのな」


カイルは弁解は無理と察してそのまま黙りこんだ。


「…さて、えーと紫音だっけ?あんた今日は泊まっていきな」

「えっ…はい…良いんですか?」

「良いもなにも、こんな夜更けに帰らせる訳にもいかないしなぁ…なぁカイル?」

「……何で俺に振るんだよ」

「べっつに~きししし」


アイリシアが意味ありげに笑う 隣のアイリスが カイルが泊めてくれる様にお願いしたんだよ と教えてくれた。

……うん、素直に感謝しておこう。


「…まぁ折角だからね、さて布団の用意でもするかね」

「……私も手伝う」


ソファーから立ち上がったアイリシアを追ってアイリスも廊下に向かった。


「紫音…私の部屋で眠りなよ」


イリュが話しかけて来たが……何かよそよそしいな……気にしてるのかな?


「…うん…イリュは大丈夫?」

「あぁ……その…紫音さっきは…」

「私は気にしてないから。」


らしくないので先に言ってやった。


「あ、でも私の眼の事は皆には内緒にしといてね。」

「…うん…出来れば私の事も内密に頼む」

「…わかった…お互いの秘密を共有するなんて…でも、親友だからいいか」

「…そうだな、紫音なら」


お互い顔を見合せて笑った。


「…ついでに俺の事も内密に頼む」

「……わかったわ……覗きの件は忘れてあげる」

「あぁ助か…ちげーよ!てか覗きじゃねぇし!」


いたずらっぽくいった言葉に見事にボケてきた……こいつ…ノリツッコミ上手いな…


氷を脇に置くと私の正面で膝に肘を付けて両手を組むと真っ直ぐにその澄んだ金の眼でこちらを見つめてきた。

白銀の長髪がはらりと…しなだれる……初めてまともに見たけど… …こいつ…イケメンだっ!


…………?……ふと違和感を感じた。

学園でも彼を間近で見た気がする…時間が緩やかに……その瞳は本物?駄目だ駄目だ!本能が警鐘を鳴らしている。これ以上踏み込むと戻れなくなる―と。


その答えが喉元から出かかっていたその時 彼…カイルが不適に口許を歪めた。


「…わかった、その件については忘れなくて良い……記念に覚えておこう。……お互いにな」

「はっ?何を言っ……あ……あぁぁぁ……ああああああああああっ?!」


お互いに……そう、私としても忘れる事が出来ない位に見ちゃったけど……私だって見られちやってるのよね……


「じゃあ、そうゆう事で」

「ちょっ…待った待った!わかったから………ぁぁぁぁあっ!」


引き留めようと立ち上がると、慣れない正座なんてしてたものだから、足が痺れてそのまま彼の方に倒れこんだ。


「おっと…」


カイルが上手く支えてくれた。

……なんか近いな…さっきの事を思い出して、つい赤面する。そんな私の耳に彼はこう囁いた。


「…危なかったな…イリュにウサギのぱんつが丸見えになる所だったな」


はっ? て、ゆうか、何であんたが知ってるの?!


感謝の言葉を述べる代わりに、右手を振り上げこう言った。


「この…変態っ!」


夜の廊下に小気味良い音が響き渡った。

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