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魔眼の使徒  作者: vata
第三章 ドリームウォーカー

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陰陽四神会議 5

ちょっと仕事の方が立て込んでまして。

章全体も改編予定ですので不定期で投稿します。


「……参りましたわ…私の負けです…」


 南条門沙織がその場で項垂れた…


「敗北した私に最早何の価値もありません…私をどうしようと貴方の自由ですわ……」

「旦那様?沙織をどうするおつもりですか?」

「…これ以上増えるのは感心しない…」

「えっ…絢音?アイリス?…どうもしないけど……」


 南条門家の沙織さんに決闘を申し込まれ放課後の体育館で自主練の名目で手合わせをしたのだが……

彼女は西園寺と違い陰陽の呪文は使わない正統派の格闘タイプだった。

とにかく彼女はカイルに接近して物理的な攻撃を決めたかったらしい……なので行動パターンが読めてしまい早々に行楽パターンが見えてしまった。

しかしながら彼女は踏み込みのスピードも技の切れも西園寺に負けずとも劣らない力量の持ち主だった。

 だが、ひたすら攻撃を避けるカイルに擦りもせず、最後はスタミナ切れの所を足払いで敗北してしまった。

いい戦いだった…そう思っていたのだが……なぜか女性陣に詰め寄られていた……解せぬ…


「おいカイル!いかにお前でもそんな鬼畜みたいな事は許さんで!」

「?西園寺?お前まで…」

「たっくん…貴方…」

「んん?南条門さん?」 


 何故か龍彦が沙織を庇う様に立ち塞がった…彼女も彼女でたっくん呼び…これはもしかして……


『旦那様…あの二人は本来なら家同士の取り決めた『許嫁』なのです…私のせいでその話も無くなってしまって…』

『あぁ…成程…二人とも満更でも無かったって事か…』

『気心知れた仲ですからね』


 絢音の『サトリ、サトラレ』の能力でそんな裏事情を共有した…


「西園寺…俺はそんなつもり無いから安心しろ…」

「!そ、そうか…そうやな…すまんな出しゃばった真似を…」


 取り敢えずたっくんを落ち着かせよう…これはこれで……


『旦那様?面白いおもちゃを見つけたとか思ってません?』

『…そんな事ないよ?』


 絢音との間に隠し事など存在しないのだ。


「なんなの?貴女達の業界はすぐ決闘して負けたら従属とか…」

「仕方ありませんわ…力無き者は命を奪われる…力が全ての世界ですもの」

「そんな…」

「紫音ちゃん…貴女達から見れば異常な事だと思うでしょうけど…これが私達の日常であり掟の様なものなの…旦那様に任せておけばいいわ」

「お姉ちゃん…」


 非日常的な内容に紫音が声を上げるが絢音が優しく宥めた。

しかし絢音さん…最後はやはり俺頼みなんですね?

俺使いが激しくないですか?

それにしても紫音のやつ、いつも間にか絢音をお姉ちゃん呼びとは…


『…旦那様なら不可能はありませんでしょ?…旦那様も『お姉ちゃん』って呼んでも良いのですよ?』


いや、まぁ出来なくはないと思うけどね……まぁ機会があれば今呼んでみるよ…


『流石は旦那様♡…だからお姉ちゃんは何の心配もしておりませんわ』


 正直…厄介方はごめんだけど…莉子様もなんだかんだうちのメンバーに馴染んじゃってるから他人事とはもう言えないしな…


『やはり旦那様は優しいですね』


 最近、絢音とアイリスに上手く誘導されてる様な気がするけど…


『うふふ…気のせいですよ旦那様♡』


 まぁ…それもいいか…と思いつつ、南條門さんに話を聞くために近づいた。


「南条門さんは呪術を使用しない流派なのかな?」

「いいえ…呪術も併用する事もありますが……実力を見るには小細工は必要ないでしょう?」

「…脳筋の思考…」


 沙織の答えに絢音も莉子様も頷いている。


「そもそも何故決闘など?」

「貴方…莉子様を利用しようとしているのではなくて?」

「なんか勘違いしてるんじゃねぇ?」


 沙織の言葉に全員が首をかしげた…イリュの言葉には同意しかない…こちらとしては早く家に帰らなくて大丈夫かなーと心配しているくらいなのだが。


「話し合いとくれば…あそこしかないわね!」


 紫音が目を輝かせながらそう言った。








「いらっしゃ…良いところに来た!」

「珍しく混んでるな…」

「アルテさん私は今は客なので接客してください!」


 店に入るなり、いつも暇そうにしているアルテが忙しそうに動き回っていた。


「いらっしゃいませなのだ」

「セポネーちゃん!」

「むっ紫音…離すのだ!私は今お仕事ちゅ…」


 店に入るなり接客をしていたアルテをスルーしてセポネーを捕まえた紫音と律子は定位置のボックス席に消えて行った。


「紫音!!…仕方ない!カイル!これ4番のテーブルだ」

「俺達は客なんだけど…」

「そんなこと言わずに助けてよぉー」


 セポネーの為に働く事を決意したアルテはいつも通り店を開店させたのだが、手伝いをすると言うセポネーに接客をやらせたところ、その可愛さに常連たちが骨抜きにされてしまったらしい。


「商売繁盛でよかったじゃないか…早速土産の効果が…?!」

「?!本物だっただと?!」

「…お店が繁盛してなにより…イリュの土産も役に立った…」

「ちげーよ!私の娘が可愛いからだよ!でもこんなに忙しいのは望んでいない!私はこの店は趣味でまったりやりたいの!」


 最早本気で泣き出しそうなアルテに仕方なくカイルは手伝うことにした。









「それで何が起こってるの?」

「あぁ〜このケーキ美味しぃ〜!!……!!コホン…ご説明いたしますわ」


 さっきまでケーキを食べて蕩けた様な表情の沙織が咳払いをすると姿勢を正した。


「先日、南条門家の方に日ノ本家より書状が届きました……内容は……『莉子を廃嫡し、次代の巫女を選抜する』…と」

「?!」

「馬鹿な!『巫女姫』は莉子様以外にありえない!!」

「あぁっ!私のケーキ!」


 沙織の話を聞いた立夏が勢い良く立ち上がった…とりあえず全員が自分のケーキを持ち上げて避難した。

立夏に慣れていない沙織のケーキが宙を舞った…が西園寺がキャッチした。


「立夏…はしたないわよ」

「!すみません莉子様!しかしこの様な…」

「私は気にしてません…父がこうする事は私が呪いを受けた時から想定してました」

「…何か根拠があるの?」

「父は…義妹に巫女の座を継がせたいのだと思います」

「莉子さまっ!」

「…莉子…その辺りをkwsk」


 日ノ本家当主である『日ノ本暁月(ひのもと あかつき)』は愛妻家で有名だった。


「しかしお母様を亡くされて…お父様は変わってしまいました……」


 愛しい妻の喪失により、暁月は塞ぎ込み、日に日に衰弱していった…


「しかし…お義母様と出会うことでお父様は生きる活力を取り戻しました……が…」


 今度は義母に傾倒し依存する様になった。

仕事も徐々に莉子達に任され、私生活は義母中心の生活へと変貌した…


「…その際に私は呪いを受けてしまい…義妹がその後を引き継いでくれたのですが…」


義母には連れ子がおり、莉子の一つ下の義妹が出来た…最初は、仲の良い姉妹の関係が築けていたのだが莉子が呪いを受けてからは、徐々にその態度が急変した。

呪が伝播してはいけないと、莉子は隔離され、義妹を擁する派閥が一気に勢力を増し、義母が今の日ノ本家を取り仕切っている……莉子の派閥は日に日にその権力を失い今では、使用人にまで蔑むような目を向けられる関係である。


「……絵に描いたような令嬢物の小説の様な展開だな……」

「あの二人は最初から日ノ本家の乗っ取りが目的なのだ!」

「立夏…」

「…暁月様が神事にお姿を出されないのはそういう理由でしたのね…」


 西園寺や南條門ですら知らされていない事実の様だ。


「それで…南条門さんはどうするの?」

「私?私は莉子様を支持しておりますので…貴方を倒し莉子様を解放して再び日ノ本家の巫女に……私の勘違いでしたけど……」

「つまり沙織は莉子様派なのね?」

「勿論です!絢音様!」

「…ありがとう…沙織…」

「莉子様!?頭を上げてください!」


 沙織の言葉に目尻に涙を浮かべた莉子が頭を下げると沙織は慌てて莉子を制止した。


「…西園寺は莉子様派だとして……残りの家はどうなのかしら?」

「そうですね……北神堂は沈黙をしかし当主は野心ですからね……東條宮には娘は居ないから…分家筋から候補を養女に迎えて参加する気配があります…」

「…割れるのね…厄介だわ」

「……莉子はどうしたい?呪いも解けたし…巫女姫の座に戻りたいかい?」

「…カイル様…私は巫女の座には未練はございません」

「「莉子様!?」」


 莉子の宣言に立夏と沙織が声を上げた。


「別に義妹に譲ってもいいと思います…あの子も優秀ですもの」

「しかし…」

「…別にそれでもいいけど…問題はその義母親子が…『使徒』に連なる者っぽい事だよな……」


 莉子がやりたくないなら別にどうでもいいのだが……このままこの国の裏側を使徒に把握されるのもまずい気がする…というかマズい。


「ご主人様がお望みなら…再び巫女の座に戻ることも厭いませんが?」

「「「ご主人様!?」」」


 再び莉子の発言に立夏と沙織と西園寺が別な意味合いを含む声を上げた。


「カイル…お前莉子様になんちゅう…」

「貴様やはり莉子様に対して……!!」

「……うわあ……」


 それぞれが講義の声を上げるが文句を言いたいのはこちらも一緒だ…なぜこのタイミングでご主人様呼びをした!


『……………』

「…ふう…いい香りだわ」


 絢音さん…外面も内面も無言で太ももをつねるのは止めてください。

アイリスもさも当然のように紅茶を飲んでないで助けてほしい。


横のボックス席に目を向ければ紫音と律子が良い笑顔でセポネーにお菓子を食べさせていた…

羨ましい…俺もあんな平和な空間に身を置きたい………


「いや、ほんと、誰か手伝ってくれないかな?というか……助けて!!」


 アルテの悲痛な叫びが店内に響いた。






インフルエンザ流行ってますので皆さん気をつけてくださいね

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