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魔眼の使徒  作者: vata
第三章 ドリームウォーカー
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夢の少女 6

「たっくーん」


 アーガイルとなったカイルが道場の扉を開けた。

自分の家の様に平然と入って行くのでついて行くのが不安になるくらいだ。


「!!兄貴お疲れ様ッス」

「カイルさん!」

「おう…やってるか?」


 門下生達がそれに気づき、挨拶をしてくる。

後ろにいる私達を見て更に挨拶してくるので恐縮してしまう……


「どんだけ懐かれてんのよ…」


 それを見た紫音がやや呆れた声をこぼした。

買い物終えた後、西園寺の道場に行くと言うアーガイルにアイリスが同行すると言うので詩音と律子も一緒に行くことにした…荷物はラプちゃんの空間転移で既に寮に届けてある…かわええ上に有能とか…しゅき!


「兄貴!!今日は兄貴の彼女が沢山ですね!いつもワイルドなイリュさんだけかと思えば、深窓の令嬢やメガネの似合う委員長やミステリアスな美少女まで…流石ですね!そこにしびれて憧れますね!」

「はははは…せっちゃんも参加していいぞ?」

「せっちゃんは今日も元気ね……」

「…ところでこちらの方々は?」

「あぁ…一応クラスメイトだ」


 イリュの紹介で簡単に三人を紹介する…私は別に彼女ではないのでそこはちゃんと説明して欲しいのだけど……


「たっくんはどうした?」

「あ、はい…たっくんさんは裏で修行中です」

「そうか…これは差し入れだ皆で食べるといい」


 アーガイルは紙袋を雪に手渡すと裏手に消えていった…


「!!パティシエルの焼き菓子じゃないですかっ!!」

「「?!」」


 稽古をしてた人達が集まりワイワイと騒ぎ立てた。


「…こんなに喜ぶのなら……こんにゃくの方が良かったのではないかしら?

「いや〜それはどうかな……」

「…ところで…あの娘も狙っているのかしら?」

「いや…どうだろう……大丈夫とは思う…けど……たぶん」


 アイリスとイリュが雪達を観察していた。

カイルの事だから無自覚で差し入れを提案したのだろうが、アーガイルは絶対に下心満載だ。

そのアーガイルが彼女達に見向きもせず、西園寺のいる裏手に向かった。

 覗いてみると、そこには、座禅を組み、魔力を練り上げている西園寺の姿があった。

カイルの姿に気がつくと、何やらのアドバイスを受けているようだ。


「意外ね…真面目に指導しているように見える…」

「…そうね……何を考えているのかしら?」


 その姿を見た紫音とアイリスが疑問を口にした。


「…理由はいろいろあるようだが……そのうちの一つはアレだな」


 イリューシャの声に視線向けるといつの間にか現れた絢音が雪達と一緒にお菓子を見てはしゃいでいた。








「へぇー旅行に行くんだーいいなぁ」


 気がつけば道場の片隅で女性達がお菓子を食べながらすっかり打ち解けていた。

みんなとやや離れた場所に、自分のスカートをふわりと広げ、一緒に会話をしているが、何やら独特のオーラをまとっていた。

絢音さんは目の部分を覆い隠す独特のスタイルだが、その人柄についてはどこにでもいるような年頃の女性だった。


「なぁに?紫音ちゃん…さてはこのバイザーがいい年して似合わないコスプレをしている痛い娘だと思っているのね?」

「いえっ…そんな事は…」


 気づかないうちに見てしまっていたのだろうか?


「うふふ冗談よ…これはね私は目の病気なの…視力が弱くて、あまり光に当たるのが良くないから、これをつけているのよ」

「それは…大変ですね」

「そうなのよ…だから旅行とかずいぶん行ってないわね…確か最後に行ったのは……」


 小さな頃は、普通に過ごせていたらしい…西園寺が旅先で迷子になった話とか別にどうでもいいのですけど……


「…一緒に…行く?」

「えっ?いいの?でも…私学園の生徒じゃ無いし…」

「…問題ない…カイルが何とかする…」


 それ以前に王女様の一声で何とかなりそうな気もしますけど…


「…私の家は関係ない…」

「あ、はい…」


 顔に出てしまっていたのかアイリスに釘を刺されてしまった。

アイリスは自身の立場が知られた後でも以前と変わらぬ付き合いを希望した…それこそギゼルヴァルト家は関係がないと言わんばかりである。

本人は既にアルヴァレルの家に嫁入りしているのだと……冗談だよね?


「面白そうな話をしているな…… 一人ぐらいはどうにかなるだろう」

「…カイル……」


 既にアーガイルの抜けた状態のカイルがそこにいた……その後ろでは西園寺が床に突っ伏していた……本日の指導は終了のようだ。


「でも……」

「家族の説得が難しいかな?じゃあこうしよう…彼女達とゲームで勝負して、誰か一人でも勝つことができれば家の人も納得するのじゃないかな?」












「……まいりました…」

「はい、ありがとうございました」


 律子が負けを宣言した…

彼女の前には盤面が、ほぼ黒に塗りつぶされたオセロがあった。


「途中まではよかったんだけどなぁ…」

「そうね…結構自信があったんだけどなぁ…」


 彼女の前にはイリューシャが格闘ゲームで負けていた……たまに遊ぶ事があるがイリュは結構強い、

帰りに立ち寄ったゲームセンターで乱入して勝ち抜く程度の腕前だ。

ちなみに私は真っ先にトランプで負けております。


「じゃあ次は…アイリスね…」

「…ん……私はチェスで……」


 









(この娘は…その雰囲気とか…存在感とか…多分この中では一番の強敵だと思う)


 絢音はアイリスをそう評価した…あながち間違ってはいない…

勝負はすごく拮抗していた…どちらが勝ってもおかしくはないと思える戦いだったが、後半僅かな一手の狂いで絢音が優勢となってしまった。


「…むむむ」

「なかなかだったわよ…」


 既に絢音は勝った様な口ぶりだ…だがその表情はあまり嬉しそうなものではない。


「アイリス」

「……?…………わかった」


 カイルが何か小さな紙をアイリスに見せるとアリスは目を閉じた。


「…いきます」

「?!…へぇ…そうくるか……じゃぁ…これで…」

「……」

「!!…やるじゃない……」

「……」

「んんっ?!…」


 アイリスが打った手を見て絢音は動揺した…既に彼女は先程の余裕がない様に見えた。


「…チェックメイト」

「…………っ!」


 遂に絢音の手が止まった…そのバイザーで視線はわからないが…アイリスを見つめている様に見えた。

そのアイリスも正面から視線を受けていた。


「…ま…まいりました…」

「ええっ!…あ、絢音さんが……負けた…」


 雪の言葉に門下生達に動揺が走った。

今まで『勝負』と名の付く対戦には無敗を続けて来た絢音が敗北したのだ。


「……では…」

「!!」


 アイリスの言葉に絢音がびくりと肩を震わせた……


「…対戦は私の勝ちですね」

「……それで…」

「…?」

「貴女の望みは何?」


 さっき迄の自信に満ちた態度と違い今の絢音は酷く怯えて頼りない存在に見えた。

『敗北した自分には価値などない…』

大方そんな事を考えているのだろう……くだらない……

カイルはそう感じていた。


(まぁ…勝者がアイリスなら問題は無いだろう…何故なら…)


「…私の望みは……」

「…望みは?」

「…私の…お友達になってください」


(友人に飢えているからな…)



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